表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

3

 所変わりまして、(しん)(ぶつ)とは(えん)()(かり)も程遠い、(いろ)(ぢゃ)()とは気楽なもの。若い男に仕事を放り投げては、()(まえ)は若い娘としっぽりと、というものですから、(おお)(だな)(あるじ)とは大層恵まれた(きょう)(ぐう)でございまして。まあ、(にん)(そく)(よせ)()などというものが大々的にございましたから、今と違って日雇い労働者も多い訳で、「(よい)()しの金は持たない」なんて(やから)が持て(はや)される時代でございました。そういった調子でしたから、仕事もしないで昼間から酒を()()らっている奴なんて、そこらじゅうに転がっている始末。(だん)()(しゅう)というものは客としては上の上。特上を超えて、まさに神様仏様でございました。


 そんなこんなで、相手が(おお)(だな)の主人とあっては、全くと言って良い程に(たい)(ぐう)が違います。()(かみ)になれれば(たま)輿(こし)(めかけ)()まりも大繁盛。と、まあ、こういう(ところ)の男女の仲というのは実に現金なものでございまして、小娘達も我先にと寄って来るはで、()()()()りの選び放題なのでございます。


 「おだてられれば木に上る」というのは本当の事でございまして、(あか)()()(しゅ)(じん)もその一人。気になる娘を手当たり次第に呼びつけて選びに選んでは、何とも(いや)らしい(はなし)ではございますが、じっくりねっとりと見定めて、一人に絞り込んでは、(こと)(ほか)()()げておりました。


色茶屋の小娘:「(だん)()、私を()()けしてくれはございませんでしょうか。他の男の物になるのは、(つら)くて仕方がございません」


 (いく)()(いく)()(かよ)って来るものですから、(もち)(ろん)、店の娘も期待は(ふく)らむものでございまして、(しょう)(ばい)(がら)、嫌でも食べる為には仕事を選ぶ事が出来ない訳でございます。誰かと(しゅう)(げん)でも()げまして、(せま)(なが)()()らしでも、今より(いく)らかばかりは幸せであると、何とも()(わい)(そう)な身分でございますよ。そんな気持ちを知ってか知らずか、しこたま飲んで飲まされ気分の良くなった御主人は、小娘の胸元にすっと手を回すと、


赤城屋主人:「()()、当然ですとも。この(あか)()()(そう)()()、金の事なら()(ぞう)()(ぞう)、任せておいておくんなましって」


 と、まあ、こんな感じで、事はどんどん複雑な方向へ複雑な方向へと流れていってしまいました。


 最終的には、


色茶屋の小娘:「(おお)(だん)()様、私を()(かみ)さんにしてくださるの?」


 なんて、言い始める始末。すると、主人も調子に乗って、


赤城屋主人:「この世の皆様のご要望を叶えるのが(あき)(んど)でございますよ。女の一人や二人を幸せに出来ずに、何が(あき)(んど)ですか」


 と、鼻の下を伸ばしきって、自信満々のしたり顔。


 しかし、大丈夫なのでしょうかね、この様な事を言ってしまって。まあ、(おく)(がた)は居ないは、酒は手伝うはで、(いろ)(ぢゃ)()の小娘に手を出してしまったのだから仕方がない。言わずと知れた(ぜに)()()ですから、金の方は何とか()(めん)出来るとして、問題は()(かみ)さん。いつも尻に()かれているものですから、こう、ついつい思い詰めた方向に考えてしまう。


 けれども、意外と()()()に商売に(はげ)んできた性分が邪魔をして、人を(あや)める覚悟は持ち合わせていない。それならば、自分だけ()(てい)であるのが悪いという事で、店の若いのを二三人程()(つくろ)っては()(かみ)(あて)がって、逢い引きの証拠を(つか)んでしまえば(こち)()の物と、何とまあ、()(そく)で汚い算段を立てた次第でございます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ