三十四話 限界社畜にロリババア狐と天才妹が病んでいく話
脳が理解を拒む感覚を、その実、俺は何度か経験したことがある。
それは、頭の中が純白に塗りつぶされるような。あるいは、視界から入る情報が、そのまま写真の如く固まってしまったような。
確かに今、世界は動いているのに。
俺だけが取り残されている。否、残ろうとしている。
目の前にある現実を受け入れたくないがために。
「……」
呆然と、視線を移動させる。
笑顔の彼女の顔、首、舌。あまりに緩慢な作業。失礼を通り越した不躾。
半ば独り言のように呟いた。
「……その、傷は……」
「ええ、はい。つい先ほど頂きまして。ふふ、ほらここ、歯形がついているでしょう? ふふ、ふふふ」
「……」
紬さんは笑っている。その光景が、どうも現実とは思えない。
夢でも見ている気分だ。
ああ、こういうとき、どうやって覚めるのだったか。
未だ鈍重な思考のまま、己の舌を硬口蓋に当てた。そこに痛みはない。
確かに傷を付けたはずの舌に、痛みはなかった。
「……」
沈黙。背筋が凍る感覚。
なにか恐ろしいことが起きている気がする。考えたくない。その真実に、到達したくない。
されど己の口は動いていた。
よせばいいのに。ただ目を背けてはならないと。残り滓のような使命感が己を動かした。
「……俺の、傷ですか」
「あは」
妄言だ。唾棄すべき妄想だ。あり得るはずがない。
だのに目を細めて、太陽の下で咲く向日葵の如く、頬を染めて彼女は笑う。
それが何よりの答えだった。
心が、軋む音が聞こえた。
人間のやってはいけないことを犯した、罪の音が聞こえた。
あの時と同じ。
俺はまた、人を傷つけたのだ。
そこまで考えて漸く気が付く。
あまりに遅い疑問。今更な確認だった。
「……紬さんは、どうしてここに?」
「へ?」
「……」
初めて、紬さんはきょとんとした顔を見せる。
何か変なことを聞いただろうか。だって紬さんは今、会社にいるはずで。どうしてかここにいて。それで、それで。
俺の傷を、負っている……?
「ぁ……?」
目を見開く。言葉を吐こうとした。
それよりも先に、彼女が笑った。
「どうしてって……私が兄さんを愛しているからですよ?」
「――」
「ああ、どうか勘違いしないでください。ライクではありません。がっつりラブの方です。私、兄さんを異性として愛しているんです」
彼女が近づいてくる。長い脚が揺れ、恐ろしく整った美貌が囁く。
気付けばすぐそこに、彼女がいた。
「初めて会ったころからお慕いしています。兄さん、あぁ、そんな顔しないでください。堪らなくなります」
「……貴女は、そんな。そんな、ことは」
「すぅう、ふぅ。……うん、やはり兄さんは直吸いが一番効きますね。五臓六腑に染み渡ります」
「俺たちは、兄弟で……」
「義理ですよ義理。法律じゃあ何の問題もありません」
するり、と細い指が首筋を撫でる。吐息が耳元を擽る。
全身から伝わる柔らかい感触が、どこまでも彼女を一人の女性だと認識させた。
「……っ」
だが彼女は妹である。少なくとも、俺にとってはそうだ。俺は家族として彼女を愛している。それは間違いない。
そこに異性愛はない。
そも、俺のような人間が彼女を穢してはならない。それは元宮夫妻に対して恩を仇で返す行為だ。
断らなければ。その一心で、彼女から離れようとし。
「紬さん、一度俺の話を」
「お兄ちゃん」
より一層、体が。薄桃色の唇が耳元に触れるまで近づいて。
「貴方のお母さんが死んだのは、私のせいなんです」
「……は?」
思考は数瞬。彼女の両肩を引き剥がし、顔を見つめる。
彼女は笑顔だった。けれど先程と違う。
酷く粘着質で、蠱惑的な笑み。
その笑みのまま彼女は続ける。
「私が彼女をあそこに誘導させました。私が彼女に、新たな伴侶を与えました」
「……ま、待って、くださ」
「あの日の運転手に仕事を与えました。与えて与えて、睡眠不足にさせました」
「頼む、待って、待ってくれ」
「私が動画を拡散させました。より貴方の姿が広まるよう、スマホで……」
「待ってくれ!」
……!
……。
……頭が、割れそうだ。
「はぁ、はぁ……」
「悪いことをしたとは思っているんです。貴方を傷つけて、胸が引き裂かれるような気持ちになりました。それは、本当です」
「信じ、られない……」
「嘘ではありませんよ。そんなメリット、私にはありませんから」
「なら」
誰かに、脅されているだとか。
もしくは、そう。俺は知っている。人ならざる超常的な存在を。
その者が何か介入をして。
「んー、違いますね。これは徹頭徹尾、私の意思で、紛れもない真実です」
「……」
「……ふふ、まぁ信じられませんよね。それでもいいんです。ただ、言っておきたかっただけですから」
……分からない。
彼女が、もし、仮に。真実を話しているとして。それを俺に言う必要性が感じられない。
何故、話した。何故、こんな話をする。
彼女は一体何を考えて。
「説得力が欲しいんです」
「っ」
「貴方を、本気で愛しているという説得力が」
よほど顔に出ていたのか。紬さんはまるで心の声を聴いたかのように答えた。
「あぁそうそう。折角なのでこれも言っておきますね。兄さん、私が四年前にあげたお守りを覚えていますか」
「……はい」
「ふふ、よかったです。まぁ、知っているのですが」
ごそり、とポケットから何かを取り出す。
そしてそれを、彼女は俺に見せるように差し出した。
これは。
「……!」
「すみません。あげたものを勝手に拝借して。でも、見てほしいんです。この、中身を」
「中身……?」
「はい。兄さんったら、本当に一度も開けないのですから、律儀ですよね」
「……」
まただ。彼女はどうしてか、今までの俺を見てきたかのような口ぶりで話す。
そのことに訝しみながらも、視線を向ける。
指が袋を開けた。開いた口に人差し指と親指が沈んでいく。
やがて引き上げられた黒色の物体に、少し眉を顰める。
「盗聴器です。ご存知ありませんか?」
「盗聴器……」
これが、盗聴器。ということは、なんだ、己は今の今まで盗聴されていたのか。
盗聴。紛れもなく犯罪。
だがこのように出されても実感はなかった。
未だ俺は夢の中にいる。
「あ、ちなみに兄さんのお家は何度かお邪魔しています。盗聴器もですけど……監視カメラとか、GPS発信機の調整をする必要があるので」
「……鍵は、かけて」
「ふふ、そんなのあってないようなものですよ。ただでさえ安いマンションなのに、ふふ、おかしい」
「……」
「兄さんは、お風呂ではまず左手から洗いますよね。去年の三月には皿を割って悲しんでましたっけ。あ、そうそう、何度か下着を無くしましたよね。それ、私です」
「……」
「あはは、知ってます。兄さんのことなら何でも知ってます。食事の仕方も、呼吸の数も、寝顔も、仕草も、全部」
段々と理解してきた。
彼女は、紬さんは。俺を夢から引きずり出そうとしているのだ。
思考停止した俺の頭に、ゆっくりと油をさし、障害を取り除いて。正常に働くように修理しているのだ。
何のために?
決まっている。もう俺は知っている。さっき彼女が言っただろうに。
「……そうか」
「はい、兄さん」
「貴方が好きです。何よりも、誰よりも、愛しています」
……紬さんの顔が近づいてくる。
潤んだ瞳、上気した頬、薄桃色の唇。
彼女の吐息が顔を撫でる。両頬に、柔らかな手の感触を覚えた。
俺は茫然と見る。
何となく、彼女が何をしようとしているかを察する。察したところで、もう、避ける気力は湧かなかった。
ただ諦めたわけではない。
この行為は失敗に終わる。確信があった。
「兄さん……」
「……紬さん」
なぜなら、今、ここにはもう一人。
「いい加減にしろ、この売女が」
「……ちっ」
ぐん、と体が後ろに引っ張られる。何かモフモフとしたものに胴体が包まれている。
見れば、そこには銀色の毛並みがあった。そして聞こえる、底冷えするような声色。
「そこまでしてよいとは契約にないが」
「……はて? 私はただ、兄とちょっとしたスキンシップを」
「あぁ、貴様の中ではそうであろうよ。じゃが決めるのは儂じゃ。貴様ではない」
「あら怖い。そんなに醜い顔をしなくても、これのせいで出来ませんよ」
紬さんが指で首を撫でる。まるで刺青のような紋章である。書かれているのは文字だろうか。それが彼女の首に巻かれている。
「はっ、白々しい。人間の癖に狸の真似事か。一層気持ち悪いのぅ」
「ふふ、でも、狐よりはマシでしょう? 卑しくて雌臭い……えぇもちろん、貴女のことではありませんが」
「よく回る舌じゃな。引っこ抜いて捨てれば少しは静かになるか」
「それよりも毛皮でスリッパを作ってみては? ほら丁度、無駄に生えている獣がいるようですし」
「……ほう?」
更なる言葉の応酬を感じ取り、俺は身勝手ながら口を挟んだ。
「天音さん、少し、よろしいでしょうか」
「……む、なんじゃ、孝仁」
天音さんの意識がこちらに向くのを確認し、口を動かす。
険悪な雰囲気を取り除くという魂胆もあるが、それより聞きたいことがあったのだ。
「紬さんに起こっていること……そして、俺に起こっていることを、説明していただけませんか」
「あぁ、そうじゃな。うむ……そうじゃなぁ」
悩むように、天音さんは呟く。どこか言葉を選んでいるようにも思えた。
ちらりと紬さんを見る。
目が合った彼女は嬉しそうに微笑み、軽く手を振った。
少なくとも、彼女は理解している。俺だけが分かっていない。何もかも、分かっていない。
与えられた情報を咀嚼できるように、俺は目を閉じ、言葉を待った。
「まず……まぁ何となく分かるじゃろうが、今お前さんとあれは繋がっておる。魂……というべきか。比喩ではなく、確かな契約によって」
「魂、ですか」
「ああ。といっても、お前さんは感じないじゃろうが」
「私はビンビンに兄さんを感じていますよー」
目を瞑った暗闇の中、魂というものを必死に探そうとするも、成果は振るわない。
紬さんは何を感じているのだろうか。
「……続けるぞ。本来ならば、この術は心中……気が触れた男女が共に死ぬために結ぶ、古来よりの契約じゃ。その繋がりは強固で、複雑。普通ならば解けることはない」
「……」
「じゃがそれは、お互いの同意があっての場合のみ。つまりお前さんの同意なく術は行使できん」
「であれば」
「ああ。故に捻じ曲げた。その因果をな」
こともなげに、天音さんは言う。
その意味を図りかねた俺は愚昧に尋ねた。
「それはどういう……」
「いやなに、簡単なことよ。本来ならば、この契約はお互いの意思によって成り立つものじゃ。男が右腕を傷付ければ女も傷付き、女が泣けば男も悲しむ」
「……」
「そこを、変えた。片方だけ、そこの頭の狂った女の方だけで、成立するようにした。それだけのことよ」
「うーん、酷い言い草ですねぇ」
……そんなこと、可能なのだろうか。
俺はただの人間だ。その契約とやらに詳しいわけではない。だがそんな俺でも、彼女が言っていることの異常性は理解できる。
そも、俺は確かに舌を噛んで……。
「あぁそうとも。条件を変えたのであれば、契約の内容が変わるのもまた通理。願いが歪めば……結果も歪む」
「……」
「聞きたいか? 今、あれがどういった状態なのか」
「……は、い」
口が恐ろしく乾いている。
それでも首を縦に振った。震えそうになる体を無理やり抑えながら、首肯した。
「あれはな、賭けをしたのじゃ。あれが勝ったら契約は成立し、儂が勝てば……」
「私が死ぬ、でしたよね」
「は?」
目を見開いた。知らぬうちに、近づいて来ていたらしい。
いやそれよりも何と言った。
死ぬ……? 何故。そんな、馬鹿なことを。
「命を賭けてようやく叶う願いなんですよ。まぁそれに、天狐様が兄さんを堕とせた時点で私に勝ち目はありませんし。どの道命を絶っていましたよ」
「そ、そん、な」
笑って、言うことか。
死ぬことを。そんな簡単に決めていいものか。
俺なんかの行先で、そんな。
「まあまあ! いいじゃないですか。結果として生きてますし。私が賭けに勝った証拠です」
「ふん……全く、残念でならん。あぁ、口惜しい」
「……? 分かっていたことじゃないですか、こうなることは」
「それとこれとは別よ。儂も女じゃ。意地というものがある」
「ぷっ。……ざ、残ね、ふふっ、残念でしたね天狐様。女の、い、意地……ふふふっ」
「死ね」
二人が何かを話しているような気がする。よくわからない。
頭の中で言葉が反芻している。おろし金で体中を削られる感覚。
掠れゆく思考の中、俺は、最後の問いを投げた。
「……それ、で。紬さんは、何を、願って」
「はい? あぁ、そうでした! まだ言ってませんでしたね」
「この術は通常とはかけ離れた邪法じゃ。故に危険極まりないが……その分強制力が働く」
「もう神様だって私達を引きはがせないのですよ? 素敵ですね……」
「本来ならば儂が孝仁と結びたかったが……儂はちと位が高すぎてな。術が反転し、お前さんを傷つける可能性があった」
「そこで! 同じ人間であり、かつ深い縁のある私が結んだのです。あぁ、これこそ運命ですね」
「名もなき禁術。あるときは心中、あるときは愛憎、あるときは執着。人が生まれ落ちてから存在する呪いの契約」
「私は願う……貴方が受ける、全ての傷をこの身に刻むことを」
蕩けた瞳。
天音さんと同じ……愛に濡れ、愛に溺れた瞳。狂気的なまでの、それ。
俺は……。
「……あ、ぁ」
心が、悲鳴をあげている。
俺のせいで彼女達を……美しく清らかな彼女たちを、縛ってしまっている。人殺しの罪人である俺が。地獄に落ちるべき存在の俺が。
俺なんかを愛さないでくれ。
俺に、愛される資格なんてないんだ。
貴女達はもっと、幸せになれるはずなんだ。
「兄さん」
「孝仁」
「ぐ、ぅ、あぁ」
膝をつき、両手で顔を覆う。このまま握り潰してしまいたかった。頭蓋を割り、脳みそを千切り、消えてしまいたかった。
だが、できない。
そんなことをすれば紬さんが傷付いてしまう。
死ね、ない。
『約束ですよ、兄さん』
『絶対に、死なないでくださいね』
……あぁ、なんてことだ。
俺はもう、死ねない。死んで償うこともできない。
俺は、俺は。
「ああぁぁぁぁぁぁああああああ……」
壊れろ。
壊れてしまえ。
もういっそ、廃人なってしまえ。そうすれば彼女らも諦めがつくだろう。
そうだ、死ね。
心を殺してしまえ。自我を殺してしまえ。
死ね。
死ね。
死ね!
……頼むから、もう、死なせてくれ。
「……あぁ、ああぁぁ……」
「……無理ですよ、兄さん。貴方が心を失うことはない。そういう風に生まれてきたんです。貴方は、優しすぎるから」
「儂も、お前さんを傷付けることが苦しい。じゃが、もう、儂も限界なんじゃ。天音も、もう、耐えられない」
指が俺の首を伝い、胸の前で結ばれる。後ろから抱きしめられている。
湿っぽい息が耳元に感じる。
高い体温が、服越しにも伝わった。
「愛しておくれ、孝仁。孝仁、なぁ、孝仁。お前しかおらんのじゃ。愛して、愛して」
「兄さん、愛しています。貴方だけを愛しています。貴方がいれば、私は幸せです」
「……」
手を握られる。これは紬さんの指。
耳を撫でられる。これは天音さんの唇。
足を絡められる。これは紬さんの足。
髪を撫でられる。これは天音さんの指。
紬さん。天音さん。紬さん。天音さん。紬さん。天音さん。
紬さん。天音さん。紬さん。天音さん。
紬さん。天音さん。
紬さん。天音さん。紬さん。天音さん。紬さん。天音さん。
溺れていく。
彼女達の愛に、俺も。
深く深く沈んでいく。
「……ぁ」
ここにきて、俺は気付いた。
今にも気が狂いそうな状況なのに、俺の心はいつも通りだ。
悲しみ、苦しみ、痛み、後悔し、絶望し、罪悪感を覚えて、自己を嫌悪する。
笑ってしまうほどにいつも通りだ。
あぁ、そうか……。俺の心はもう、壊れないのか。何も感じないなんて、そんな逃げは許されないのか。
漸く分かった。
俺は罪を償いたくて死にたかったんじゃない。
俺はただ、逃げたかったんだ。
それだけが俺に残された唯一の方法だったんだ。
死んで無になる。
どこまでも壊れることのない俺は、それでしか逃れるすべはない。
「じゃぁ、もう、いいか……」
死は安寧だ。
死は救済だ。
そして、そんなものを、俺は求めてなどいけなかったのだ。
俺は償うべきだった。
俺が成した、全ての罪を償うべきだった。
「天音さん……」
「すぅ、ふぅ。すぅ、ふぅ……ん、てんこさふぁ。よんでまふよ」
「ちゅ、ちゅる、れろ、ん、ん……あえ? どうしたぁ?」
……今更ながら、だが。
どうやら天音さんは俺の耳を舐めていたらしい。こんな穢れた身のどこに、価値を見出すかなど想像もできないが。
彼女がそれを求めるのなら、それでもいいのかもしれない。
俺は彼女が汚れることを恐れた。
だがそれは結局、俺の欲望だ。浅はかで愚かな願いだ。自分の都合だけを押し付ける最低の行為だった。
……怖かったのだ。
これ以上誰かを傷付けてしまわないかと、誰かの人生を歪ませてしまわないかと。
「貴女の望みを、言ってください」
「……!」
後悔は遠く、過去に手は伸ばせない。
俺はもう彼女らを歪ませてしまった。彼女らを汚してしまった。
その償いをしなければならない。
何年、年十年かけてでも。
……その末に、彼女らが俺を忘れ、温かな人生を送れることを願って。
「い、いいのか……? ほ、ほんとうに……?」
「はい。……どうか貴女の望みを、叶えさせてください」
どの口が、と思う。
今まで何度彼女を傷付けてきた。何度悲しませてきた。
そんなお前が叶えるなどと。そんな資格は。
……違う。
そんな俺だから、叶えないといけないんだ。
もうこれ以上。天音さんを悲しませたくないから。
こんな俺を愛してくれた彼女に、報いたいから。
「ほ、ほんとじゃな! ほんとにほんとじゃな! う、嘘ではないな!?」
「はい」
「~~~!! あ、ぇと……ほ、ほんと」
「いいふぁらふぁやくしてくらさいよ。めんどくふぁい」
「あ!? き、貴様っ、誰が孝仁の服を嗅いでよいと言った!」
「すぅううう……ふぁいこうでふ」
「は、離れろ小娘が! はーなーれーろー!」
「天音さん、少しお待ちいただけますか」
「……んにゅっ? 孝仁?」
「紬さんと、お話ししたいことがあるのです」
「うぐ、それは」
「どうか、お願いします」
「……ちょっとだけ、じゃぞ」
「ありがとうございます」
一礼をして、胸に抱き着いている紬さんに視線を移す。
……なんだか昔に戻ったような気分だ。
酷く懐かしい気持ちになって、俺は彼女の頭を撫でる。できるだけ優しく、思いやりを込めて。
「紬さん、お話があります」
「……はい、兄さん」
殊の外すんなりと彼女は離れた。
それでも撫でる手は止めない。昔からの教訓というべきものだろう。ここで止めてしまえば、また最初に戻ることを知っていた。
だから撫でる。
指先に柔らかな絹のような感触を覚えた。あの頃から変わらない。
紬さんの髪は、とても美しい。
「先程……俺の母が、車に轢かれたとき。それは、紬さんのせいだとおっしゃりましたね」
「……はい。私が全部、計画しました」
僅かに、頭が俯く。
怒られる直前の子供を想起した。だから俺は、なるべく声色を柔らかくして、彼女に言った。
「正直俺は、それを信じ切れていません。実感がない……とも言えますが。なにせ、もう五年前の話ですから」
「……」
「ただこれだけは覚えてほしいのです。紬さん。母さんが亡くなったのは……」
「っ」
「絶対に、貴女のせいではありません」
「……へ?」
どこか、ぽかんとした顔で俺を見る。
まさか俺が罵るとでも思ったのだろうか。そうだとしたら、それは勘違いだ。
罪人は俺一人。
これはもう、変わらないのだから。
「で、でも、私は。兄さんのお母さんを」
「仮に貴女が計画したとしましょう。貴女が母にパートナーを与え、場所を準備し、全てを整えたとしましょう」
「そうです。だから私が」
「……いいえ、それは違う。繰り返します。貴女のせいではありません」
「ならっ」
「俺です」
「……!」
紬さんの目が開かれる。
……恐らくだが彼女は己を偽って生きている。それは何となく、昔から感じていた。
だが今この瞬間。
目を見開いている彼女だけは、真実だと思いたい。
俺は続ける。
「たとえ準備をしたとて、俺が最後の一歩を踏まなければ、あんなことにはなりませんでした」
「……私は計算した。元宮孝仁が伊藤佑香と出会えば、どうなるかなど分かっていた」
「分かっていたからなんなのです。結局、一番の問題は、そのような弱さを持っていた俺自身。そして……母自身の、問題です」
「……」
思い出す。あのときの記憶を。思い出したくもない、俺の罪を。
サイレンの音。
鳴り響くシャッター音。
殴られる頬。
血の色。
『ごめん、ね』
「……母は、笑っていました。笑って、俺に謝りました。たぶん……あの人もどこかで、俺を想っていた」
「あの女が? 宛がった男にすぐさま靡いた、あの?」
「……たぶん、紬さんは勘違いしてます。だって、俺を殴ったあの人、本気でした。本気で母さんのこと、愛してたと思う。きっと……母さんも」
「なぜ分かる」
「分かるさ……俺は、母さんの息子だから」
「……」
今ならば、痛いほどに分かる。
母さんもきっとそうだった。自分の犯した罪にたくさん苦しんで……疲れてしまったんだ。
思えば母さんはいつも謝っていた。
優しい……優しすぎるほどに、善良だった。
そんな彼女が、自分の息子を家において立ち去る。
それはどれほどの苦痛だったのだろう。どれほどの罪悪感だったのだろう。
母の苦しみを思うだけで、俺は無性に泣きたくなった。
「……もう一度だけ、言います、紬さん。母さんが死んだのは貴女のせいじゃない。ましてやその男性でも、運転手でも、拡散した人間でもありません」
撫でる手を止め、彼女の瞳を見ながら言った。
「この罪は、俺が背負います。俺と……母だけが、この罪を受け入れていいと、思うから」
「……」
紬さんは、何か眩しいものを見たかのように目を細める。
そして瞳を閉じ……ゆっくりと立ち上がった。
「ふぅ……話は以上ですね。さぁ、それではさっさと天狐様のお願いを聞いてください。ほら、嫉妬で醜く顔が歪んでますから」
「は!? し、嫉妬なんてしてないが?? 別にそこ変われとか思ってないが??」
「語るに落ちてるじゃないですか」
顔を背け、紬さんは揶揄うような口ぶりで話す。
でも俺は……それがとても愛おしく思えた。偽りでない彼女の姿に、酷く安心を覚える自分がいる。
そっぽを向く彼女が、いつか一人で飛び立てることを願うばかりだ。
……さて。
「大変お待たせしました、天音さん」
「う、う、うむ! べ、別に全然待っとらんのじゃ!」
「……うわ、あんなに鼻の穴を広げてはしたない。恥ずかしくないのですかね」
「うっさいわ!! ……ご、ごほん。そ、それでじゃの、その、孝仁よ」
「はい」
「ぅ……ぇと、その」
「……?」
「……うわ、ありえませんね。もしかして日和ってるんですか? それで兄さんから言い出すのを待つって……ださ」
「だから喧しいわ! さっきからなんなのじゃ貴様! 言葉の棘が鋭すぎんか!?」
なるほど。
どうやら天音さんは自分から言い出すのが恥ずかしいらしい。
気付けなかった。
こういった機微も、もっと学ばねばなるまい。
俺は今一度彼女の藍色の瞳を見つめ、願った。
「天音さん。貴女の望みを、俺にお聞かせください」
「ぁ……うん」
すると、途端に彼女はもじもじして、何事かを呟いた。
「……だ、大丈夫……さっきの隙に洗浄したし。き、汚くない、汚くないはずじゃ……」
「……?」
「……童貞かよ」
「……すぅ、はぁ。すぅ、はぁ。大丈夫大丈夫、言うぞ、言うぞ……!」
「……」
幸いに、紬さんのぼやきは耳に入らなかったようだ。
しかし分からない。
天音さんは何を願うのだろう。そこまで緊張するものなのだろうか。
そう思って、焦らなくてよいと言おうとし。
「あの、天音さ」
「く、口吸いを!! 口吸いをしてほしいのじゃ!」
「……口吸い?」
口吸い。確か……昔の、接吻のことだったか。
そうか。
そうか……。
「……」
「……ぁ、あにょ。だめ……かのぅ?」
「はっ、いえ、そんなことは。ただ幾分衝撃的なものでして。不安にさせて申し訳ありません」
「そ、そうか。あの……嫌だったり、とかは」
「ありえません。寧ろ光栄です。天音さんこそ、俺のような人間でよろしいのでしょうか」
「も、もち、もちろんじゃ! 孝仁がいい……孝仁でなければ、嫌だ」
「天音さん……」
「……脳が壊れるー」
心に湧いた、不敬という感情を押しつぶす。
汚してはならないという怨嗟の声に耳を塞ぐ。
俺が願うことはただ一つ。
天音さんの、幸福である。
「……じゃぁ、ぇと、するか」
「はい」
「んにゅぅ……あの、で、できれば、孝仁から、お願い……」
「分かりました」
彼女の目が閉じる。
形の良い、小ぶりな唇が僅かに突き出る。ぷるぷるとした爪先立ちが、酷く愛らしかった。
……。
「……行きます」
「……うん」
彼女の肩を優しく掴み、少しずつ近づいていく。
思えば、人生においてキスというものを俺はしたことがなかった。うまくできる自信はない。
……それでも、まぁ、よいか。
やがて俺と天音さんの距離がゼロに――
「待ち、やがれです……!!」
瞬間、もの凄い力で引き剥がされる。
次いで、火の玉が恐ろしい速度で通り抜けた。一瞬すれ違っただけでも感じる、その熱量。
これは……。
「管狐様……?」
「はぁっ、はぁ、かはっ、はぁっ」
胸を押さえ、苦しそうに彼女は立ち上がる。大きく空いていた穴は既に塞がり、茶色の瞳には燃えるような激情が備わっている。
どうして彼女が、と考える前に。
先程の火球を思い出す。
全くの気のせいだとおもうが、あれは俺ではなく、天音さんを狙って……。
「……何をしとるんじゃ、お前?」
ぞわり。
背筋が凍る……否、それどころではない。
紬さんと見せていた応酬がまるで児戯のように、暗い。深い。
俺の知らない天音さんがそこにはいた。
「はぁっ、はぁっ。に、逃げてください……孝仁さん、ごほっ。私が、時間を……」
「は?」
ぶおん、と天音さんの尻尾がぶれる。
目で追えない速度。いけない、管狐様が……!
「っ、界!」
「む」
凄まじい音を立て、何かと何かがぶつかり、壊れる音がした。
状況を全く把握できない。一体何が起こっているのだ。
一瞬、本当に一瞬、管狐様の前に薄い膜のようなものが見えた気がするが……。
「ちょっと天狐様。しっかりしてくださいよ。こっちは脳破壊のピークでくたばりそうなんですから」
「勝手にくたばっておけ。……しかし、これはどういうことかの」
「はぁ、はぁっ……! はや、く……!」
「……管狐様」
満身創痍。その表現が正しい彼女の姿を見て、何かが騒めいた。
止めなければならない。
このままでは、今度こそ彼女は。
「ふむ。まぁよいか。結果は変わらん」
「ぁ、ぐっ!? あぁ!?」
天音さんが手を前に突き出す。
瞬間、管狐様が何かに押し潰されたように這い蹲った。
そのまま一切身動きができないのか、苦し気な表情を浮かべたまま、立ち上がれないでいる。
「どうしますか、これ?」
「うむ、妖狐界の規則に則れば殺処分が妥当じゃが……」
「……!」
温度の感じない声色。床に落ちている虫を見る目ですら、もっと温かいと思うほどに。
俺は急いで管狐様の前に出て、天音さんへ向き直る。
その、何も映していない、虚無の瞳を。
「……」
「……」
数秒、経ったか。
彼女は諦めたように息を吐き、手を直した。
「かはっ、はぁ、はぁーっ、げほっ、げほっ!」
「孝仁に感謝することじゃな。本来なら、毛の一つも残さずに消していたところじゃ」
「あらら、可哀想に。尊敬していた天狐様にこんな仕打ち……まぁ同じ状況なら私もそうしますけど」
「ふぅっ、ふぅっ」
……未だ彼女は荒い息のままだ。しかし一応、最悪の事態は免れたらしい。
胸の内で一息をつく。
……そのとき感じた、一抹の痛みに、目を背けながら。
「……よし! これでもう邪魔者はおらんなっ? おらんなっ?」
「はい」
「にゅにゅにゅ……うん、大丈夫かな。……そ、それでは孝仁よ。その、つ、続きを……」
「……はい、天音さん」
もう一度、彼女の肩に手を置く。
管狐様が倒れている状況でのキスは流石に不謹慎だと思うが、これ以上天音さんを待たせるわけにはいけない。
最悪、管狐様に被害が及ぶ可能性もある。
だから。
「待って、ください……!」
「……おい」
切実な。いまにも消えてしまいそうな、か細い声が聞こえた。
可憐な鈴の音に似たそれは、哀願する。
「だめです……! それを、したら、戻れなくなる……! 二度と、この世に、帰ってこれなくなりますよ……!?」
「いい加減にしろよ、貴様」
「天狐様も、お考え、直しをっ。こんなこと、条約違反、です!」
「何度邪魔をすれば気が済む」
「あ、貴女では、彼を、救えない……!」
本能的に不味いと思った。
思考も論理も置き去りにして、ただ強烈な焦燥感に駆られた。
「――死ね」
天音さんが手を伸ばす。
致命的な何かが起こる。彼女にはそれができる。その力がある。
だからその前に、行動した。
「天音さん、好きです」
「……へ? たかひ、と!?」
「ん……」
「んー!? ん、あ、ん、ん……」
「……ぁ、あ……」
ふにゅり、とした感触。柔らかく、温かい。
心臓が破裂するのではないかと思うほど、興奮している。いや、これは緊張か。恐らくはどちらも正解である。
薄く目を開いた。
言葉通り、目の前には天音さんの顔がある。
初めこそ困惑していたようだが、今では身を預け、ぐいぐいと唇を寄せてくる。
もっと。もっとと。
されど、こちらにも息の限界というものがあって。
「っ……ぷはっ。はぁ、はぁ」
「ぁ……。ご、ごめん、孝仁……」
「いえ……こちらこそ、初めてなもので、申し訳ありません」
「は、初めて……え、えへへ。そっか、えへへ」
暫し、呼吸を整える。
冷静になってみると、罪悪感が沸々と湧いてくる。
俺は何て、身勝手な行為を。
「……すみません」
「んーん、いいよ。天音は……んん、儂は怒っておらんよ。まぁ《《これ》》がきっかけなのは気に食わんが……その分、強烈じゃったし」
「……俺は、その。……たしかに管狐様を心配しましたが。それでも、キスをしたのは、自分の意志で」
「うん」
「手段ではなく……本当に、俺がしたいと思ったんです。愛しいと思って」
「うん、わかっておるよ。孝仁は、あれではなく、天音を選んでくれたんじゃろ?」
「……はい」
首肯する。それは紛れもなく事実だった。
もし管狐様を助けたいのなら、他にも方法はあっただろう。手を握って説得をするだけで、恐らくは解決したはずだ。
だからこれは俺の我儘だ。
早く彼女にキスをしてあげたいという……恐ろしく汚い、俺の欲望だった。
思わず不安になって尋ねる。
「……天音さん。願いは、叶えられたでしょうか?」
「いや、まだじゃ」
「へ……、――!?」
「ん、ちゅ。ん、んぅ」
……!
首に、手を回されて。これは、引き寄せられたのか。
再度柔らかな彼女の唇が触れる。
湿った、艶やかな唇。
愛らしくちゅむちゅむと啄んで、そして……!?
「れろぉ、ん。んぁ、ちゅ、ちゅ……」
「んん!? ぷはっ、あ、あまね、ん、さ……!」
「ん、ん、ん。ちゅる、れちゅ、れる、れる、んー」
「!?!?」
「……あー、脳破壊の音ー」
ちゅぷ、ちゅぷ。ねちょ、ねちょ。じゅぷ、じゅぷ。
彼女の小さな舌が、俺の口を蹂躙している。
舌を、歯を、硬口蓋を、内頬を。余すことなく愛撫し、征服している。
俺は混乱の極致に至った。
この状況もそうだが、何よりその快感によって。彼女と合わさった舌が熱を持って、今にも燃えてしまいそうだった。
「あ、あま、んぐ、あまね、さっ。ちゅ、少し、ん、休憩、を」
「はぁ、いや、んちゅぅ、ならぬ。最後まで……んぇあ、せねばな。儀式が、んむ、成らぬて」
「はぁ、はぁ、ん……、ぎし、き?」
そういえば……先程、管狐様が何かおっしゃっていたような。
……だめだ。頭が朦朧としている。酸欠状態だからというのもあるが……この無上の気持ちよさに、俺は溺れていた。
溺れ、沈み。
やがて彼女と溶け合っていく。どろどろに絡み合い、求め合い、一つになっていく。
「あまね、さん」
「たかひとぉ」
「……そん、な……」
「わぁ、管狐ちゃん、よく直視できますね? 流石は淫らで有名な女狐ってことですか。卑しいですねぇ」
「……ぁ、あぁ……」
「……あらら。もう聞こえてませんか。可哀想に」
……何分、経った?
いや、まだ数秒しか経っていないのかもしれない。それほどまでに濃密で、淫靡で、刺激的だった。
くらくらする視界の中、ふと壁が歪むのを感じた。
否、壁だけではない。この部屋、この空間、全てが捻じ曲がるような。
「ふぅ、ふぅ……ん、あぁ。始まったか」
「……どういう、ことですか……?」
「はぁ、ん……まぁ、見てればよい」
言われるがままに、俺は部屋の中を眺める。頭の中がぽわぽわとして、定まらなかった。
目の前で起きている光景は明らかに異常なのに。
俺はもう、それを受け入れることしかできなかった。
「……はぁ、ようやく終わりましたか? 全く、脳破壊ビデオを直で見せられた私の身にもなってほしいものですね」
「ほう? その割に、随分と興奮しておったようじゃが」
「……それより、契約は守ってくださるんですよね。ここで取り残されたら、私ノータイムで自殺しますよ」
「安心せい。そんなことをすれば神秘が薄れるでの。今はまだ、生かしておいてやる」
耳元で言葉を交わされているはずなのに、どこか遠くで聞こえる。
あぁ、なぜだろうか……瞼が、とても重い。
今にも眠ってしまいそうな気分だ。体が疲れていた。頭も、心も。
もう、休んでいいのだろうか。
「そうですか。それはどうも」
「うむ。この場に残るのは……あの女狐だけよ」
『ぐ、ぅう……!』
「うわぁ、見てくださいよ天狐様。管狐ちゃん、ガチギレですよ。こっわーい。かわいそー」
「思ってもないことを……」
「いえいえ、割と本気で同情はしてるんですよ? 敬愛する天狐様に操られて、優しい兄さんさえも奪われて……ぷふっ」
「……やっぱり貴様、皮の下は妖怪ではないか?」
『が、ぁあっ、孝仁さん! 孝仁さん!』
「……?」
名前を、呼ばれた気がする。
この声は誰だったか。鈴の鳴るような可憐な声。俺は確か、この声を知っている。
『孝仁さん! 駄目ですっ、行っては! そこだけは、貴方が!』
「……」
薄い……壁だろうか。
彼女はすぐそこにいるはずなのに、とても遠く感じる。
悲しげな声だった。
貴女には、そんな声は、似合わないというのに。
だから……。
「どうか、お元気で……」
『――』
俺は今、うまく笑えているだろうか。
彼女を悲しませないように、できているだろうか。そうならいいな。
もう誰も、泣いてほしくないんだ。
「……さぁ孝仁、おいで」
「私たちと永遠に慈しみあいましょう」
「お前さんを傷つけるものはもう、なにもない」
「私が守ります。兄さんはただ、いてくれるだけでいいんです」
「存分に愛し合おう」
「存分に触れ合いましょう」
「さぁ、一緒に」
……手が伸びる。二つの手が、こちらに伸びる。
細くて、柔らかそうで、綺麗で、白くて。
「はい……どこまでも、一緒に」
俺はその手を取った。
そうして……俺という人間。
元宮孝仁。旧姓伊藤孝仁はこの世から、完全に消え去った。
目を瞑る。
あぁ……温かいな……。




