主人公
僕は「あなたは主人公ですか」と問われれば間髪入れずに、否と答えるでしょう。
僕は凡人です。なんの才能も無く、毎日をただたんたんと過ごしている一般人。小説や物語の世界ではモブE程度の存在です。自分を決定するアイデンティティというものが無い、まさにモブと呼ばれるような存在です。
僕は自分から気になって始めたものはありません。
僕はガンダムが好きです。男の子だからロボットに憧れます。でも、友達から勧められ好きになったものであり、自分から見て好きになったものではありません。だから本当のガンダム好きの人の話についていくことができません。
僕はポケモンが好きです。でもそれも小学生の時に、これもまた別の友だちに勧められその世界観が好きになっただけで、本気で考察することもなく、かといって対戦をするでもありません。
僕はVtuberが好きです。承認欲求が大きいのに顔出しすることを恐れ、顔を出さなくても活動できるVtuberというものに憧れ、配信をするも奇才を持たない僕に固定視聴者がつくはずもなく、特に何も為すこと無く配信をやめました。そもそもVtuberを見始めたきっかけだって友達の話についていくためです。
多くの人が「人生の主人公は自分だ」と言います。でもそれは違うのではないかと考えます。たとえ自分の人生であろうとも輝いている人が近くにいれば、その人が主人公になり自分は脇役になります。いつも一人でいる人、いわゆるボッチと呼ばれる人は、そこでアイデンティティが生まれます。気に留められることもあるでしょう。しかし少ないながらも友達がいる人は仲間内以外からは気に留められることもありません。
ここまで読んでくれた人にはわかると思います。僕には文才がない。小説を書こうにも文が書けず、設定を作ったときにはどこかで見たことがあるようなものになります。そして読者に何も伝わらない。
このように才能がなくアイデンティティもない僕は主人公になれない
それでも僕は主人公になりたかった
誰かに影響を与えることができるような主人公に
……でも僕は主人公になることはできない、ただの凡人だから
これからもきっと、僕は誰かの物語の脇役であり続けるのだろう
これは主人公になりたかった一人の少年の独白である