2章-8
壁にかかったスクリーンにプロジェクターが映像を映し出す。
六学園対抗戦実施要綱。
「では講習会を始めます。前に皆さんの手元に置かれている要綱と全く同じものを写していますから前を向いて話を聞くようにお願いします。今年はルールの変更はいくつかありますからよく聞くように」
女性の年配の教師の合図で画面が切り替わる。
「規約。規約は飛ばしてしまいましょう。皆さんはもう申請済みだと思います。審査の上、正式に参加が認められた生徒に対抗戦用のプロテクターを配る予定ですので。ここでは変更点はございません」
画面が進み、次は試合形式の説明に移る。
「対抗戦の形式に関しても去年と変わりはありません。が、ここは説明しておいた方がよいでしょう。長らく身を潜め、今年ようやく重い腰を上げ乗り込んできた学園もある事ですし」
女性教師の目が六堂の面々を捉えた。
「よく聞いておくように。対抗戦の詳細に関しては何も難しくありません。五人の選手が順番に一対一の勝負を行い先に三勝した方の勝ち。Bo5。ベストオブファイブと呼ばれる形式です」
「ベスト・・・・・・なんだって?」
荻野が小さく綾瀬に耳打ちする。
「ベストオブファイブ。つまり最高で5回戦まであるって事」
「は?」
荻野はいまいち理解出来ていないようで、腕を組んでうんうんと唸る。
そんな事など隣国の火事。特に気にするそぶりも見せずに説明は続けられる。
「仮に諸事情でメンバーが欠けた場合も特にルール変更はありません。四人で参加してもらって結構。三勝できれば勝利です」
プロジェクターが次の映像を映し出す。横向きに作られたトーナメント表だ。
「実際のトーナメント、対戦方式に関してです。ここは難しいのでよく聞く事。対抗戦で使う形式がこの変則ダブルイルミネーション方式、です」
御影と溝畑を除いた三人が皆首を傾げる。
「簡単にいえば二回負ければその時点で脱落。一度負けた場合敗者復活戦に落ち、そこからまたトーナメントを行います。ここに関しては帰って要綱を見る事。いいですね」
「雑かよおい」
その後は注意事項や勝敗条件などが端的に説明され、一時間ほどで講習会はお開きとなった。
「やる意味あった?」
「これもらえただけ意味はあるだろ。こんなに厚みがあるんだ。そりゃ全部説明は無理だろうししゃーねぇよ」
荻野はヒラヒラと要綱をはためかせる。
「トーナメント表? 見てるんだけど、結構不遇な扱い受けてる。私達」
御影が目を細めて小さな文字を凝視する。
「一回戦が私達と五基。五番目の学園。で次が一回戦の勝者と四獅神。でその勝者と三番目。こんな感じで数字の大きい学園ほど試合数が多くて、小さい学園ほど少ない。一条なんて最短二回で優勝だ」
他の四人も御影と同じページを開いた。トーナメント表に既に組み合わせが載っていた。
「なんかきったねぇ表だな。トーナメントっつったらもっとこう、左右対称になってんだろ?」
「普通だよ。ゲームの大会とかだとこう言う形式はよくあるし。まぁ、ここまで露骨に試合数に偏りがあるのは見た事ないけど」
「僕達は最低でも五回勝たないといけないって事だね」
「六。一回も負けずに五回勝ったとしても、最後に敗者復活戦を勝ち上がったところに勝たないと優勝出来ない」
「そうですね。つまり私達が優勝するには五回勝った上でいままでで一度戦っている学園に再度勝つ必要があると」
「それか敗者復活経由で全勝するか。まぁでもそんな勝ち勘定している余裕なんてないじゃん私達。まずは五基に勝たないと」
「五基学園、どれくらい強い生徒が出場するのでしょうか?」
「五基は、俺がいたとこだな。・・・・・・まぁ。思ってるよりかは全然下手くそだ。そんな心配するこたねぇよ」
「五基から落ちてきたお前の言葉は信用できない」
「は? おいやめろよ。傷つくだろ」
御影の鋭い指摘に荻野はたじろいだ。
綾瀬は最後列にいる無言を決め込んだままの溝畑に話しかけた。
「溝畑って去年も出てたって言ってたけど、他の学園の生徒の実力とかって分かったりしない?」
「あんまり覚えてない。から雑魚ばっかだ。安心しろ」
「それは君基準で見たらの話だよね? はは。・・・・・・はぁ」
五人は六堂の練習場の前まで辿り着いた。
「そういや今日は全員いるな。学恋はまた戻るのか?」
「いや。そのつもりでしたけどさすがに不安になって」
「今更」
「今更かよ」
御影と荻野の二人から同時に反論され、学恋の目が泳ぐ。
「最初の試合が五月の中頃、ゴールデンウィーク明けくらいだから、あと一ヶ月も無いんだね。頑張らないと」
「溝畑。今日は何すんだよ?」
「・・・・・・たまには人の試合を見るべきだな。お前らは。とりあえず今日は総当たりで全員と一回ずつ戦え。俺は除いてな。戦ってない奴は練習せずに見て、感じたことがあったら言え」
「溝畑はやらないの? なんで。まさか楽しようとしてるとか?」
「オレと戦ったら、二度とここに来れなくなるぞ」
四人が悟ったような表情を浮かべる。
「じゃあ。最初は荻野と御影」
練習場は今日も騒がしい。




