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Bad Beats!!  作者: 明日在華
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2章-5

 あくせくと雑貨を並べている途中で綾瀬がやってきた。


「え? 何これ?」


「ちょうどいい。お前のそれも寄越せ」


 溝畑はカバンを渡すよう促すと、困惑した様子の綾瀬を尻目に作業を続ける。


「え。え? 何これ。悪魔を呼ぶ儀式か何か?」


「練習ですよ練習」


 学恋からひとしきり説明を聞き、ようやく理解した綾瀬は床の図形をまじまじと見つめる。


「あの後家で試してみたか?」


「あ。うん。透明な容器がなかなか見当たらなくて、小さいけど計量カップでやってみた。上に紙を置いて塞いで」


「首尾は?」


「ボチボチ。上手くいくときは上手くいくけど、破裂する時もある。まぁ原因は配信見ながらやってたせいだと思う。・・・・・・科学の実験やってるみたいでそこそこ楽しかった」


「そうか」


 ひとしきりセットアップが終わると、学恋は練習を再開する。床に描いてある円めがけて飛び、着地したら間をおかずに飛ぶ。


 悪戦苦闘する学恋をよそに、溝畑は綾瀬の元へと歩み寄る。


「今日やる事だが、昨日と同じだ」


 溝畑は空のカゴを引っ張り出してくると、隅に置いた。


「まぁだと思った」


「枠組みなしでサイズを可変できるようになるまでは、ここにカンヅメだ」


「・・・・・・やっぱり、そんなに大事なの? 大きさって。いや、別に疑ってるとかそういうわけじゃないけど」


 綾瀬の煮え切らない態度にも溝畑は苛立つ事なく答える。


「一つの大きい手を自在に操れるようになれば、かなりの応用が効くようになる。例えば」


 溝畑は壁に手を置く。


「壁から手を生やせば階段代わりになる。床に生やせば相手の攻撃から身を守る盾に、手を相手に突っ込ませれば確かな破壊力を持った武器になる。前にも言ったが、対抗戦に勝つためには最も重要なステータスなんだ。大きさってのは」


「大きければその分応用も効きやすいって事だね」


「理想は巨大な手を自由自在に操って攻防一体の武器にする。今やってるのはその初歩の初歩だ」


「じゃあやっぱ家でも大きい手作らないとダメか」


「そうでもない。大事なのは何もない場所に実物と違う大きさの手を作るにはどうすればいいか、だ。大小で難易度は変わらない」


「・・・・・・うん。とりあえずやってみるよ」


「今日オレは蓋になれない。上が空いたままになるが、まぁ慣れだ」


 そう言うと溝畑は隣の学恋の方へと戻っていく。


 綾瀬は一人空のカゴに意識を集中させて、能力を発動する。


 荻野と御影の時とは違って、後半の二人は別々に練習に取り組んでいる。


 練習場内には時折学恋の苦しそうな呻き声が聞こえ、綾瀬の作った手が大爆発を起こす。それがお互いの妨げになり連鎖的に能力不良を起こす。


「集中しろ。些細な事でも気にしてしまったらおしまいだ。自分の事だけ考えろ」


 長い時間が流れた。


 溝畑が綾瀬の様子を伺うと、そこには彼の今日の成果とも言えるべき奇妙な光景が広がっていた。


「・・・・・・いいぞ。きた。いけるぞ」


 カゴが横向きに壁に立てかけられている。


 壁がちょうど横転したカゴの上部を覆う形になり、その壁から横向きに巨大な手が生えている。


 その手はまるで鳥籠に捉えられたハトのように窮屈に身を捩る。


 綾瀬は慎重にカゴを後ろへと引き出していく。


 カゴが抜けた後、そこに残ったのは壁に突き出た手。それは綾瀬が座ることができそうなくらいの大きさでカゴという外組が無くても自力で体勢を保っている。


 溝畑はそれを見ると小さく手を叩いた。


「いいな。それ」


「あ。溝畑」


「前見ろ。せっかく作った手が消えちまうぞ」


 綾瀬は慌てて視線を戻す。


「それ動かせそうか?」


「やってみる。けど、維持するだけでも結構キツい」


 綾瀬の思いと共鳴するように手はゆっくりとその身体を上昇させていく。が。


「うう。おっもい」


 壁との接地面である手首部分は上へと動いたが指は最初の位置のまま動かない。そのためダランと手が垂れた形になり力が入っていない。


「・・・・・・ダメだ」


 綾瀬は手の位置を元に戻そうと動いたが、溝畑がそれを制した。


「待て。手をスライドさせようと考えるから指先まで動かないだけだ。手全体を動かすんだ。・・・・・・例えるなら、エレベーターみたいに並行に上下移動させるんだ」


「平行に・・・・・・」


 綾瀬は考えを切り替えた。手を滑らせて進むのでは無く手全体を持ち上げるようなイメージで。


 スルスルと、今度は指先も含め手全体が壁を登った。数十センチほど進んだところで綾瀬に限界が訪れ、それはドチャっとまるで泥のように地面に落下した。


「次は床でも試してみろ。床で同じことが出来るなら立派な武器になる」


「そうしたいのは山々なんだけど、ちょっと」


 綾瀬はその場に崩れるように倒れ込んだ。重い倦怠感が彼の身体を襲っていた。


「こんなに疲れるの。冗談だろ」


「慣れれば」


「良くなるって? はぁ。その前に身体の限界が来そうだよ」


 グテングテンの綾瀬を置いていき、今度は学恋の方に溝畑は足を運ぶ。

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