表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Bad Beats!!  作者: 明日在華
4/53

1章-4


 放課後、荻野風真はいつもように練習場で汗を流していた。放課後の特訓が習慣づくようになって随分と経つが、荻野は未だに自分の弱点を克服できずにいる。


 『能力の制御が効かない』。それが彼が五基学園から六堂学園へと転入することになった大きな要因だった。


 荻野の能力は端的に言うと風を生み出し、操る能力だ。風を圧縮してボール状にして飛ばしたり、風に乗って空を飛んだりとかなり応用が利く器用な能力であるはずだが荻野はそんな器用な能力の制御に苦心していた。


 一番の問題点は自らが生み出した風のコントロールが上手くできないことだ。作り出した風が暴走し制御不能に陥ったり、飛ばした風の塊があらぬ方向へ歪曲し周囲に被害をもたらしたりととても人前で安全に使えるような代物ではなかった。


 能力者として最優先されることは自分の能力を支配下に置き、他人に被害が及ばないよう制御する事である。それが出来なければどれだけ優秀な能力を持っていても不利な扱いを受ける。荻野は一年の二学期途中で五基学園からの転入を余儀なくされた。


 能力者の育成はシビアだ。万が一にでも能力の制御が出来ない人間を能力者と認めるわけにはいかない。生徒にも危機感を持って鍛錬に励んでもらうため、各学園間での移動は活発になっている。


 その中で、能力者として失格の烙印を押されたものが六堂学園に転入してくる。六堂を卒業した者であっても能力者の資格を得ること自体はできるが、別途科される特殊な試験を突破しなければならずその合格率が芳しくないことは語るまでもない。


 他学園から六堂に来ることはあっても六堂から他学園へと昇格する生徒は滅多にいない。これはシンプルに昇格自体が難しい事もあるが、一番の原因は六堂の生徒達が他学園への復帰を諦めてしまう事だ。


 自分の能力に自信が無くなり自暴自棄になった者。そもそも諦めた者。やる気のない者。六堂にはレールからはじき出された者が数多くいる。荻野のように自己研鑽に励む者はイレギュラーなのだ。


「30投中命中は15、半分か」


 生み出した風を操作し、自分の思い描いた軌道で目標にぶつける練習。繰り返し続けているものの成果はあがらない。


 それで腐らずに鍛錬を続けられる理由はひとえに彼がまだ自分の才能を信じているからだ。上を目指すことを諦めていない。


 誰も来ない練習場でただ一人、荻野は奮闘し続ける。


 いや、一人ではなかった。今日に関しては場違いな生徒がが二人。紛れ込んでしまった。


「あれ? 人だ。珍しい」


「うーん。じゃあダメか」


 彼らの着ている制服は六堂学園のものではなかった。荻野は怪訝な顔つきで彼らに話しかけた。


「ん? 誰だ? 六堂の生徒じゃないだろお前ら」


「ウチの練習場がいっぱいでさ。どうせ誰も使ってない六堂の場所を借りようと思ったんだが・・・・・・先客がいたとは」


「悪ぃが、ここは六堂の練習場だ。部外者は出てってくれ」


「はいはい。まぁ無駄だと思うけどね。何の練習してるかしらないけど、君ぐらいだろ? 真面目にやってるの。もう諦めて別に道を探したらどう? 余計なお節介かもしれないけど」


「は?」


 荻野は勢いよく詰め寄ると彼らを睨みつけた。


「おっと。ごめんごめん。じゃあ失礼するよ。邪魔したね」


 二人は去っていく。取り残された荻野は立ち尽くし拳を強く握り込むことしか出来なかった。


「俺が分かってないとでも思ってんのかよ」


 自分では理解していたが、やはり他人から言われるとズシリと心にくるものがあった。


 対抗戦に必要なメンバーは五人。自分と転入生の彼を含めても最低後三人は必要になってくる。廃校を告げられてから毎日のようにメンバーを探し続けているが相手にされない。


 最近では声をかける事すら躊躇うようになっていた。もしかして廃校を阻止したいのは自分一人だけで、他の生徒は皆能力者を辞める覚悟を決めているのではないか。自分だけがまだ迷っているのではないか。そんな悪感情が胸の奥で渦を巻く。


 しばらくボーっとしていると、練習場の扉が開き溝畑が姿を見せた。


 




 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ