1章-23
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「なんで食堂じゃなくてファミレスなんだよ」
「食堂なんか行けるわけないじゃんか。腫れ物みたいに冷めた目で見られるし」
「高いだろ」
悪態をつきながら溝畑は大きくソファに腰掛ける。
練習場が塞がってしまい、解散しようと考えていた溝畑だったが、御影に半ば引きずられるようにファミレスへと連れてこられた。
「で、本題は?」
「ん? ああ。そうそう。・・・・・・でもその前に。一つ聞いていい?」
「なんだ?」
「実際何%くらい? 私達が対抗戦で優勝できる確率」
「0」
「おい! 嘘でももうちょっと盛れよ!」
「現状はゼロだ。数字を増やしたかったら、成長するしかない」
「成長、ね。じゃあ協力してもらう、よっと!」
落胆する様子もなく御影はガッと身を乗り出すとポケットから数枚のカードを取り出し、机に並び始めた。
そのうちの一枚を手に取ると、御影は話し始める。
「私の能力がこれ。各カードに書かれているシルエットの能力を扱うことができる。端的にいうと、昔にあった仮面ライダーのあれ。分かる?」
「いや全く。・・・・・・そういえば、能力を使う時それっぽい事言ってたな。・・・・・・それで?」
「これさ、何に見える?」
御影は一枚のカードをピックアップすると、溝畑に突きつける。拾い上げ、確認するとそこには右手をかざした人の絵が描かれていた。その手の先から放射線状に広がる短い直線と丸みを帯びた長い曲線が不規則にカードの端まで伸びている。その線は長さもバラバラで中には途中で千切れしまっている物もある。
「さあ?」
溝畑が目を細めながら答えると、御影は落胆の表情を浮かべた。
「今のところ私が使えるのはこの銃のカードだけ。これだけは、すぐに銃だって分かった。けど他の何枚かのカードはどんな能力が描かれているのか分からない。使おうとしても何も起きない」
続けて見せたカードには仁王立ちの人影が描かれていた。その両手には長い棒状の物が握られている。
「他にもカードはあるけど、どれも抽象的で何の能力が描かれているのか分からない。だから今は銃の能力しか使えない。他のも使えればもう少し戦える、と思う」
「お前の能力を一番よく理解しているのはお前自身だ。それでダメならもう無理だろ」
「正論やめて。・・・・・・とりあえず真っ先にイメージした能力を教えてよ。参考にするから。百人くらいに聞いて一番多かった意見に決めるから」
「街頭アンケートかよ」
悪態を吐きながら溝畑は渡されたカードに目を細める。
見れば見るほど奇妙なイラストだ。何かを放っているようにも見えるが、逆に迫り来る何かを受け止めているようにも見える。
とても一言で表せるような代物では無かった。溝畑はしばらくカードを睨みつけていたが、やがて嫌気がさしたのか持っていたカードを手放し代わりにテーブルにあった銃のイラストの描かれたカードを取り上げた。
まじまじと見つめ、ハッと目を見開く。
「・・・・・・は?」
「なに? どうかした? というか見て欲しいのはそっちのカードじゃないんだけど」
「・・・・・・これ逆だろ」
「逆?」
溝畑はカードを戻すと、注文していたシュークリームに手を付ける。
「何が描かれているかが重要なんじゃない。お前がこの絵をどう思ったかが大事なんだ。カードに正解なんてない」
「うん。・・・・・・うん?」
「俺には、このカードに描かれている物が銃には見えない。ただの棒だろこれ。まだ刀って言われた方が納得がいく」
「いやいや。それ銃だって! だって実際使えるし。合ってる」
「能力を当てたから使えるんじゃない。お前が銃の能力だと認識しているから使えるんだ。ようはカードに描かれているイラストを見て、お前自身がどの能力か決めることができるって事だ」
「つまり私が銃の能力だって思い込んでいるから、その通りになったって事?」
「多分な」
「んなバカな」
御影は目を丸くしながらテーブルに肘をつく。




