1章-11
「俺? 俺は荻野風真だ。・・・・・・大丈夫なのか。見かけで判断するのはナンセンスだとは思うが、その。死ぬほど弱そう」
「おい」
「言ってる場合か? 今は猫の手も借りたい状況だろ。それに、モノはいい。・・・・・・多分」
軽く自己紹介を済ませた後、三人は練習場の中央に座り込むと、これからの事について思慮を巡らせ始めた。
「後二人だ。猶予はほとんどないが、なんとか集めるしかない。最悪名前だけ借りて当日不参加になってもらうのも手だ。とにかくメンバー登録はしないといけない」
期限は来週の月曜日の放課後17:00までとなっている。今日が月曜日であることを踏まえると丁度一週間が期限だ。
三日に一人と考えると余裕がありそうに見えるが、そもそも六堂の生徒の中に参加する意欲のある生徒がまだ残っている可能性は極めて低いと溝畑は考えていた。
他の二人も楽観的にいられるわけもなく、三人は一様に大きなため息を吐いた。
「・・・・・・各々が出てくれそうな人をあたってみるしかない。上級生の中に出場してくれる生徒がいるかもしれない。騙してでも連れて来い」
「言い方は悪ぃが、それしかねぇな」
「賛成。でも私には期待しないで。理由は・・・・・・分かるだろ? コミュ障だから」
御影は神妙な面持ちでスマートフォンを操作しながら呟いた。
外から聞こえるカラスの鳴き声が三人の行く末を暗示するかのように甲高く響く。夕陽が差し込む練習場を一通り見渡した後、声をあげたのは荻野だった。
「まぁ、今は、練習するしかねぇだろ。メンバーが揃うと信じてな」
「ごもっともだが、具体的には?」
「答えに困るな。・・・・・・俺はどうすればいい? どうすれば対抗戦で勝てるようになる?」
神妙な面持ちで考え込む荻野。彼の表情からは焦りと憤りの色が窺えた。
「メンバーが揃ったら、必要なことを教える。オレは同じ事を二回説明するのは嫌いなんだ。今は、自分なりにやってみろ。
簡単な事だ。自分の能力を分析して、何が得意で何が不得意か、何が可能で何が不可能か。紙に書くなりしてまとめてみろ。そうすれば自分の勝ち筋が見えてくるはずだ」
「・・・・・・分析か」
「練習するのはその後でいい。まずは、自分の能力と向き合え。能力を完璧にコントロールするのは至難の業だ。適当に扱っていたら、足元を掬われる。・・・・・・お前もだぞ変身野郎」
「んん? ・・・・・ああ私の事か。・・・・・・変身野郎!? 私は女だって!」
「オレは帰る。お前らも今日は早く帰った方がいい」
溝畑は言い終わると、カバンを手にし練習場を出て行った。




