1章-10
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休み明けの月曜日、教室にいる生徒の数は先週よりも減っていた。当然だ。廃校の決まった学校に通い続けるのは無意味なことだ。
一年頑張って通ったところで卒業資格も得られないときたら、登校をやめるのは自然な行動だ。教室に残っている生徒も皆一様に沈み、重い空気が薄いベールのように学校中に覆い被さっている。
教師も同じようで、声に抑揚や覇気は無くただ機械的に授業を進めるのみだ。
そんな居心地の悪い学校生活を終えた放課後、帰り支度を進める溝畑に荻野が声をかけてきた。
「少し相談があるんだけど、平気か?」
「ん? なんだ?」
「お前に言われた通りこれから下級生の方にも足を運ぼうと思うんだが、そもそもどんな人を勧誘すればいいのかイマイチピンと来なくてな。付き添ってくれないか?」
荻野は自信なさげに頭をかいた。
「まぁいいか。オレも当事者だしな。・・・・・・この学年に御影って生徒はいるか?」
「御影? さぁな」
「そうか。・・・・・・行くぞ。といっても来たばかりだから何も分からないが」
「まぁそこは俺に任せろ」
一年生の階は二年生のすぐ真下にあった。驚くほど生徒の数が少なく放課後ということを加味しても数人程度しかクラスには残っていなかった。
「呆れるほど人がいないな。まぁこの時期に六堂にいる奴は余程審査でやらかした奴くらいだろうから当然か」
「二桁いねぇぞ。多分」
「これじゃ勧誘しようにもそもそもの母数が少なすぎる。聞かないよりもましかもしれないが、時間の無駄かもな」
溝畑は小さくため息を吐いた。
気を取り直し、まだ校内に残っている僅かばかりの一年生に出てくれるよう頼み込んでみるものの、帰ってくる返事は一種類だけだった。
「あの。ごめんなさい。無理です」
「出ない。放っておいてくれ」
「そっちで勝手にやってろ」
「おおう。言葉強えな」
あまりの辛辣さに荻野は呻いた。廃校の件もあって下級生もピリピリしているのだろう。特に下級生は入学直後に退学を命じられたようなものだ。心に溜まった不満は計り知れない。
ネガティブな言葉だけが二人に重くのしかかる。そのうちまだ声をかけていない生徒も二人を避け始め、結局なんの成果もあげられず、二人は帰路に着くこととなった。
「いや無理だろ」
「はなっから期待はしてなかったが、強がりは言ってられないな」
打ちひしがれる二人とは対照的に空は雲一つない快晴に夕焼けの光が映えて、綺麗に明と暗が別れていた。
「ああ・・・・・・。今日の練習、どうすっかなぁ」
「ご自由に」
「・・・・・・もう諦めて後一週間遊び尽くした方がいいのか?分っかんねぇ。なにも」
沈んだ空気を引きずりながら練習場のすぐそばまで来ると溝畑の耳が聞き覚えのある銃声を拾った。
「ん? なんだ?」
「ちょっとな」
練習場の扉を開くと、見覚えのあるシルエットが目に入った。
「ふっ。とぉ。せいっ。はぁっ」
奇声にも似た雄叫びをあげながらマネキンに向かって一心不乱に銃を乱射する一人の少女。
彼女は溝畑達に気がつくと恥ずかしそうに俯いた後、サッと顔をあげた。
「来てたならなんか一言言え!! 恥ずかしいだろ!!」
「恥ずかしいと思う気持ちは持っていたのか」
茶髪の少女は息を荒げながら、不満そうな顔を向けた。
「御影って、じゃあ彼女が?」
「・・・・・・ここで練習してるのか」
「まぁ。いろいろ考えたんだけど・・・・・・まだここで終わりにしたくない。私の能力者人生。だから、参加することにした」
「そうか」
「で、そっちは?」




