屋敷の管理をしてくれる人を購入したよ
話すすまないねぇ。
おかしいなぁ。
ホムたちが案内されたのは、シューダー奴隷商会という奴隷商の店だった。この店はオーバンドーがお勧めしただけあり借金奴隷がメインの店であるが、奴隷を買う側にも奴隷側にも納得できる値段をつける事でどちらにも高評価をとっていた。
「すいません、オーバンドー商店の者ですが、シューダーさんはおられますか?」
「あら、カカさんではありませんか。オーナーは今呼びに行かせましたので、もうすぐ来られると思いますよ」
「ありがとうございます」
カカさんが店員さんに軽く礼をするのに合わせて、ホムたちも軽く頭を下げる。何しろ初めての奴隷商だ。どうしたら良いのか全くわからない。
「これはこれは、カカ様でしたか。本日はどのようなご用で?」
そこに現れたのは小太りで優しそうな目をした中年の男性だった。この男がここのオーナーなのだろう。ホムはそう推測したが、カカにこの場を任せることに心の中で決めていたので、特に何もしなかった。
「はい、こちらのお嬢様が屋敷を購入されたのですが、使用人がいないのでお困りになっているようでして。うちの店長が世話になった方ですので、3人まで都合つけさせて頂けないかとご相談に参りました」
「そうですか。さて、お嬢様、使用人はどのような人をご希望ですか?」
ホムは突然話を振られたので少し緊張したが、ここは正直に希望を伝えた方が良いと考え、次のような希望を述べた。
一つ目は、家の管理を任せたいので、掃除や料理の得意な方が良いこと
二つ目は、自分は冒険者なので、月の給料は金貨1枚程度になること
三つ目は、年齢は問わない。治癒魔法も使えるので、体調が良くない奴隷でも良いこと
「えーと、ホムさんと言ったかね。月の給料だが、金貨1枚というのは3人で金貨1枚ということかな?あと体調が良くない奴隷でも良いということだが、体の一部が欠損してしまっている奴隷でも良いのかな?」
「いえ、給料は1人金貨1枚程度です。それと、欠損や病気の方でも良いですよ。治せますから」
シューダーの問いに対するホムの回答は、常識から外れていた。普通奴隷を雇った場合、月の給料は銀貨5枚程度なのだ。つまり、ホムは通常の2倍の値段を提示した事になる。
また、病気や欠損まで治せる治癒魔法の使い手は、現在だけでなく過去にも殆どいない。
500年程前に聖者と言われる男が使えたらしいが、その男はある日忽然と姿を消してしまったらしい。ホムは500年前というワードにピンときてしまった。多分、あいつだと。でもあれじゃ聖者ではなくて性者だよね、とも思っていた。
「では、彼女達では如何でしょう。お聞きした屋敷ですと3人では大変でしょうから、4人ご紹介します。その代わり、給料は一人銀貨3枚程度になりますし、欠損もしていますので、代金も一人金貨1枚にしましょう」
紹介されたのは、メイドとして働いていたこともあるという右腕がない15歳くらいの女の子と目に障害があるという12歳くらいの女の子、元料理人という顔や腕にやけどの跡がある20代の女性、そして執事の経験があるという顔色の悪い50代の男性だった。
「元執事の彼は内臓系の病気で余命があまり長くないようですが、それまでは優秀な執事として貴族の館で働いていました。また、料理人とメイドの女性も欠損前はかなり優秀でしたが、事故や病気で満足に働けなくなってしまったのです」
どうやら病気や欠損が治れば優秀であるらしい人材を紹介してくれたシューダーに礼を言うと、ホムは彼等と話してみることにした。
「私はホムと言います。あなた方はシューダーさんのお墨付きだそうですが、体が満足に動けるようになったら、私の家を守って頂けますか?」
「お嬢様、私はトマスと申します。私は病気が治るのであれば、お嬢様に忠誠をお約束いたしましょう」
「私はスーリャと言う。やけどのせいで細かい動きができなくなってしまったんだが、それが治るのなら、お嬢様達に美味しい料理を作らせてもらうよ」
「私はアンと申します。右腕が再生できるのでしたら、是非お願いします。お屋敷の掃除、洗濯はお任せください。責任持って働かせて頂きます」
「私はリンネです。今は目が殆ど見えない状態ですが、治ればアンさんと同じくお屋敷の家事をさせて頂きます」
ホムは彼女等の返事に満足すると、契約を行うことにした。カカはもっと高い奴隷を購入するものだと思っていたが、思いのほか安い出費だったので心の中でほっと胸を撫で下ろしていた。やはりオーバンドーの命とは言え、要らぬ出費は抑えたかったのである。
契約を終えたホム達は、そのまま馬車で屋敷まで送り届けてもらうことにした。元々奴隷を購入するなら送り届けるつもりで大きめの馬車を用意していたオーバンドーとカカの心遣いに、ホムは感謝した。
「ホム様が購入されたのはこの屋敷でしたか。店長が気にされるのも理解できた気がします」
「いえいえ、こちらこそ購入代金だけじゃなくて馬車で送って頂いてありがとうございました。また今度お礼に行きますね」
今引き留めても、おもてなしもできない状態だ。今度お礼に行くことをカカに伝えて帰らせると、奴隷を屋敷の結界に登録してホールへと案内した。
「それじゃ、治癒魔法かけます。そこの円の中にいてね」
「は、はい。わかりました」
ホムはトマス達奴隷組をあらかじめ準備しておいた円の中に立たせ、治癒魔法をかけた。部位欠損も治せるちょっと強力なやつだ。クリスも目を見開いてみている。
「はい、終わったよ。気分や具合の悪い人はいるかな?」
「い、いえ、全く問題ありません。病気による倦怠感等全く感じません」
「おぉ、指が、腕がちゃんと動く…。また料理が作れる」
「み、右腕が…。あ、ありがとうございます!」
「目が見えます!う、うわあああん!」
ホールは中々のカオス状態になってしまった。ホムはメイドの2人が落ち着くのを待って、トマス達に今後の仕事の割り振りを任せるのだった。
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