表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/24

トラディアルに着いたよ

「着きましたよ。ここがトラディアルです」


 オーバンドーが御者台の隣に座ってキョロキョロしているホムに告げる。

 オーバンドーの馬車は、途中で出会った他の商隊と共に、列に並んでいた。その先には高い城壁。その城壁の先がとりあえずの目的地であるトラディアルである。


「すごく高い城壁ですねぇ」

 でも、結界魔法はチャチいですねという言葉を飲み込んでホムは応えた。前世でも不要な一言が相手の心象を悪くするという事態を何度か経験したことのあるホムは、ここで否定的な事を言ってはならぬと思ったからだ。一応前世からも学習はしているのである。


 そうして順番が来るまでの間にトラディアルの基礎知識をオーバンドーから再度教えてもらいながら、メモをとっていく。ホムンクルスになってからは記憶力も上がって、メモを取る必要など基本的にないはずなのだが、何故かうっかりド忘れしてしまう事が多発するホムにシルキーから必ずメモをとる事を躾けられていたのだった。


「次。おぉ、オーバンドーさんじゃないですか」

「お久しぶりです、ジャックさん」


 オーバンドーと門番は顔見知りのようであった。考えてみればあちこち仕入れや行商に出向くオーバンドーは必ず門を通る。そこの門番と顔見知りになっていてもおかしくはない。


「え!?盗賊ですか!?」

「はい、ですが全員こちらのホムさんが捕らえています。ホムさん、こちらに」


 オーバンドーに呼ばれたホムがトテトテと駆け寄ってくる。その愛くるしい姿に注目が集まるが、当の本人はまるで気づかない。


「はい、何でしょうか?」

「地下の牢屋に盗賊共を出して欲しい。その後懸賞金とかが貰えるはずだけど、数が数だから明日になるだろう」

「あー、はい。わかりました」


 ホムは衛兵に連れられて地下牢まで行き、そこで盗賊共をインベントリから出した。


「本当に生きたままなのか」

「こいつ、懸賞金も出てたヤツじゃなかったか?」

「あ、こいつもだ!これは結構な金額になるぞ」


 やはり、今日中には報酬はもらえないようだ。ホムはオーバンドーのところへ戻ると、冒険者登録をするため、冒険者ギルドへ行くことを伝えた。


「というわけで、私は冒険者ギルドへ向かいます」

「わかった。デビッド達も任務報告のために行くから、一緒に行くといい。後で私もお礼をしたいから、宿が決まったらデビッド達に伝えておいてもらえるとありがたい」

「お礼はもう十分ですけど、宿が決まったら伝えておきますね」


 ホムは一旦オーバンドーと別れると、デビッド達と冒険者ギルドへと向かった。



 冒険者ギルドへ到着したホムは、デビッド達に促されるまま、受付へと並んだ。デビッド達も一緒だ。


「えーっと、次の方。あぁ、デビッドさん達ですか。お久しぶりですね。報告ですか?」


 受付の女性はデビッド達の知り合いだったようだ。


「あぁ、オーバンドーさんとこの護衛任務の報告と、この子の冒険者登録だ。それとギルマスと会いたいんだが」

「はい、報告と登録ですね。ギルマスは今なら大丈夫だと思いますけど、ちょっと確認してみますね」


 受付嬢が別の女性に話しかけると、その女性が階段を上がっていく。ギルマスとやらの確認に向かったのだろう。


「で、そこのお嬢ちゃんが冒険者登録ですか。デビッドさん、大丈夫ですか?」

「そこの嬢ちゃんのご希望だ。年はわからんが、少なくとも俺たちよりは強いぞ」

「…デビッドさん達よりもですか?」

「ああ、報告書にも記載したが、街道沿いに出た盗賊共を一人で殆ど倒した。しかも殺さずにだ」

「盗賊共をですか。わかりました、登録しましょう。そこのお嬢ちゃん、文字の読み書きはできるかな?」

「はい、私ホムって言います。文字の読み書きはできますよ」

「ホムちゃんね。それじゃ、この書類にお名前と年齢、それと住んでいるところが決まってるなら、その場所を書いてもらえるかな?」


 住んでいるところはまだ決まっていないので、名前と年齢(10才)を記入して受付嬢に渡す。受付嬢はそれを確認すると、今度はA4タブレットくらいの大きさの石板のようなものをカウンターの上に置いた。


「ホムちゃん、この上に右手を置いて、魔力を少し流してね」

「はい、これでいいの?」


 ホムは言われるがままに石板の上に右手を置き、魔力を流した。


「はい、犯罪歴はなし、と。魔力パターンの登録完了ね。

 はい、このカードがホムちゃんの冒険者カードになります。

 無くしたら再発行が必要だけど、それにはお金がたくさん必要だから、無くさないようにしてね」

「わかりました〜!無くさないのように大事にしますね」


 ホムは、冒険者カードをシャツのポケットにしまうフリをしながら、インベントリに放り込んでおいた。これでなくす事はないだろう。


「では、冒険者登録おめでとうございます!まずは見習いである10級からですが、いつかはデビッドさん達みたいに高ランクの冒険者になれるよう頑張ってね」

「はい、ありがとうございます!」


 ホムは深々とお辞儀をして、冒険者ギルドを出て行こうとする。ところが、それに待ったがかかった。


「ホムの嬢ちゃん。例の件、ギルマスに説明しなくちゃなんねーから、一緒に来てもらえるか?

 それに、冒険者のランクシステムとかの説明も受けなきゃならんだろ」

「あ、そうですね。それと例の件?盗賊の件ですか?」

「ああ、懸賞金の受け取りとかもあるから、話通しておかないとな」

「わかりましたぁ」


 ホムはギルマスに会うため、デビッド達の後に続いて階段を上がっていった。

 デビッド達は慣れているのか、職員の案内もなく廊下を進んでいる。ホムは周囲をキョロキョロと見回しながらついていく。


「ここがギルマスの執務室だ。ギルマス、デビッドだ。入るぞ」

「いいぞ、入れ」


 声がでかいせいか、ノックの必要はなかったようだ。

 デビッドがドアを開けて入ると、パーティーメンバーに続いてホムも入る。

 そこには、書類の山に囲まれた人相の悪いおっさんが、脇目もふらずサインをしていた。


(うわぁ、ブラック企業さながらの仕事量だ)


 つい、前世のブラック企業に勤めた知人を思い出してしまったホムであった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

よければ☆評価とブックマークお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ