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オーバンドーさん

 オーバンドーが雇っていた護衛は、トラディアルの冒険者ギルド所属の6級冒険者達だった。冒険者とは、依頼を受けて魔物や盗賊を討伐したり、薬草やレアなものを採取したりしてくる所謂何でも屋である。そして、それを束ねるのが全世界組織である冒険者ギルドであった。

 そして6級冒険者は護衛任務ができる一番下のランクで、彼等も今回の任務が2度目らしい。今回は街道を通るとの事で危険も少ないとオーバンドーが6級冒険者を対象に依頼を出し、それを彼等のパーティが受けたのだった。


「ホムちゃん、強いのね。助かったわ。私はサーラ。魔法使いよ」

「ホント助かったぜ。デビッド、戦士だ」

「助太刀感謝する。ロウ、斥候をしてる」

「助かったー。あ、僕はサム。タンク職です」


 サーラさんは黒いローブにとんがりハット、短杖を持ったいかにもなお姉さん。スタイルも良く、美人である。そのお胸に埋もれたい。

 デビッドは革鎧にバックラー、片手剣の標準的な戦士スタイル。近所のあんちゃん的な雰囲気がイイね。

 ロウは革の胸当てに暗い色の服を着た痩せ型のお兄さん。黒い髪と茶色の瞳が日本人ぽいけど、やっぱり東方に昔の日本みたいな国があってそこの出身なんだろうか。

 サムは実はこのパーティで1番背が低い。タンクとして大丈夫かと思うくらいその顔は気の弱そうな顔だが、フルプレートメイルを着込んで大楯を振り回すのをこの目で見たら、彼以外にタンク職は考えられない。


「ホムです。皆さんの助太刀ができて良かったです」


 私はそう応え、オーバンドーさんに誘われるまま、一緒にトラディアルに向かうため馬車に乗り込んだ。



「そうですか、諸国を巡って知識を集める旅ですか。こんなに若いのに大変ですね」

「はい、できれば効率よく集めたいんですけど、何か良い方法ないですかね?」


 オーバンドーの馬車の中、ホムは彼と話しながらこの旅の目的について軽く語った返事がそれであった。


「しかし、こんな古い地図がいまだに使われているなんて、あなたの村はどんだけ周囲から取り残されてきたんだか…」


 そう、馬車に乗る原因の一つとなったのがホムの持つこの近辺の地図である。その地図をみたオーバンドーや護衛がこれでは迷うのも無理はないと言うほど古く、今とは街道や街の位置が変わってしまっているためだ。

 なお、ホムは生まれが森の奥にある小さな村で、色々な知識が知りたくて飛び出してきたことにしている。


「因みに、お金ですが、これ使えますかね?」


 取り出したのは骸骨が溜め込んでいた貨幣だ。念のため銅貨を出してみる。


「おぉ、500年前の帝国刻印の銅貨ですか。お金は300年程前に国家間の貨幣統一がされたので、当時の貨幣は今は使えません。ただ、美術品としての価値がありますので、古物商に持って行けば額面以上の値段になりますよ」


 オーバンドーは古物商では無いそうだが価値はわかると言うことだったので、銅貨、銀貨をそれぞれ数枚売って現在の硬貨に替えた。実は金貨も含めてまだいっぱいインベントリに入っているのだが、ここでたくさん出してもオーバンドーが買い取りきれないし、価値が下がってしまうだろうとのホムの判断だ。


「で、この地図にあるトラディアルですが、位置は少し南にずれたくらいでほぼ変わっていません。ですが、この地図頼りだと街道が大きく変わっているので迷っても不思議では無いですね」

「何で街道が変わってしまったのですか?」

「魔物の襲撃が多くなってしまったのですよ。500年前くらいから増えてきたようですが、原因はわかっていないそうです。そのため、護衛がいくらいても被害が大きくなってきたので被害が発生しないように森からどんどん離れてしまったのです。

 しかし、今度は森が広がってきて、結局街道は森の脇を通るようになってしまったのですがね。」


 と言うことは、あの骸骨が何かやらかした可能性があるんだな。とホムは納得した。ただ、シルキーはそれについては一言も触れていなかったのでシルキーを構築する前の話なのだろう。


 実はこのホムの考察は当たっていて、最初リッチが作り上げた魔物避けの装置が強力すぎて動物だけでなく植物性の魔物達まで逃げ出してしまったのだ。そのため森の外周にまで魔物が移動し、その結果被害が増えてしまったのである。数年経った頃にそれに気づいたリッチが装置を止めたところ、今度は魔物がリッチに襲いかかるようになってしまったため、屋敷の維持管理も兼ねて防御システムであるシルキーを作り上げることになったのだった。


「それと、今の知識を知りたいなら、『学園』に入学することをお勧めしますよ」

「学園、ですか?」

「ええ、トラディアルにはこの世界でも最高峰と言われるトラディアル学園があり、かなりの生徒が在籍しています。確か冒険者をしながらでも通うことができる制度もあったはずです」

「そうですね。冒険者登録して、お金稼ぎしながら通えるならそれが一番ですね」

「学園には残念ながら寮はありませんので、大体借家か宿を借りるのが一般的ですね。昼は食堂がありますから、食には困らないでしょう。味の評判も良いと聞きますしね」


 それを聞いたホムの方針は決定した。冒険者をしながら学園に通うこと以外に目的を効率よく達成させる方法が考えられない。ただ他を考えるのが面倒とかでは無い。ホムは自分をそう納得させると、学園への入学方法についてオーバンドーへと質問を重ねるのだった。


 その結果、学園は初等部三年、中等部三年、高等部三年の9年で構成され、初等部から中等部、中等部から高等部には昇格試験を受けて合格する必要がある事、成績優秀者には「奨学生制度」なるもので学費、寮費、食費が無料になる事などを知ることができ、ホムはオーバンドーを助けて良かったと思うのだった。


読んでいただいてありがとうございます。

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