表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/24

3年経ちました

一週間お待たせしました。

 俺がこの世界に召喚されてから3年が過ぎた。その間、シルキーからこの世界の常識や知識、そして魔物等との戦い方までみっちりと叩き込まれた。


「マスター、そう言えばお名前はつけられないのですか?」

「そう言えば、名前で呼ぶ必要がなかったからなぁ。うーん、ホムンクルスから、ホム・クルスでいいかぁ」

「ンを抜いただけですよね、それ」


 いいじゃん、ホムンクルスなんてまだ認知されてないでしょ。多分。


「それにしても、あれだけ鍛えたのに見た目が全然変わらないんですね。やはりホムンクルスは不思議生物なのですね」

「まぁ、あの設計書をみる限りではボクを構成している細胞一つ一つがおかしなスペックみたいなんだけどね」

「見た目変わらず、栄養さえ取れれば勝手にメンテナンスも行われ、超再生とも言える機能付き。ほぼ不老不死ですね。これから旅に出るのであれば、これ以上の身体はないですよ」


 この500年で施設外の世界がどう変わってしまったか確認するためにボクは世界中を旅することにしたのだ。これはシルキーの願いでもある。この施設から動けないシルキーは情報の更新ができないので、ボクの持ち帰ってくる情報だけが頼りなのだ。


「それじゃ行ってくるよ。たまには転移で戻ってくるから、その時は宜しく」

「了解しました。マスター」


 荷物は既にインベントリに放り込んである。武器は使い慣れた刀とトンファーだが、街に行くまではトンファーで十分だろう。不帰の森の魔物達も今のボクにとっては雑魚扱いだ。レッドドラゴンだって、トンファーでカチ上げてその直後にもう片方で喉を突けば倒せるし。

 でも、最初の頃は身体の使い方が全然分からなくてホント大変だった。初めて外に出た時なんか、ホーンボアなんて言う牙だけじゃなく角もあるでかい猪に追いかけ回されたもんね。あの時は死ぬかと思ったけど、今は貴重なタンパク源だ。


「んー、インベントリの中が魔物だらけになってきたなぁ。地図だと、距離的にもう森は出てるはずなんだけど、何でまだ森が続いているんだろ?」


 500年の間に森が広がってしまっていることをホムは知る由もなかった。ホムは首を捻りながらも、森の中を歩いて行く。



 それから2時間、ホムは漸く森を抜けて街道に出ることができた。だが、出た場所が問題だった。


「何であんなところで馬車が襲われてんの?」


 そう、テンプレとも言うべき馬車襲撃イベントがホムの100メートル程先で派手に行われていた。襲われているのは恐らく商人。だって馬車が高価そうじゃないし、乗合馬車っぽく人が沢山乗るように見えない。襲っているのはどう見ても盗賊。なんか汚いし、臭そうだし、装備もバラバラだ。商人側には護衛が四人程いるが盗賊は30人程。多勢に無勢だし護衛も全員が前衛と言う訳ではないので直接やりあっているのは二人くらいだ。


「ここは商人さんを助けよう。道も聞きたいしね」


 ホムはそう結論を出すと、馬車の護衛に襲いかかってる盗賊の後ろからトンファーで後頭部を殴りつける仕事を始めた。


 護衛と戦っていた盗賊達は、いきなり自分達に襲いかかってきた少女に驚くも、たった一人の助太刀と言うことで動揺は少ない。頭と思わしき人物が3人程ホムへと向かわせるが、ホムはその3人を瞬く間に昏倒させ、他の盗賊にまで被害を及ぼすようになる。


「何だ、あいつは!」


 既にホム一人に10人以上の盗賊が昏倒させられている。護衛にも何人か倒されているので、既に半数以上が倒されているのだ。ここは撤退すべきか、そう頭が迷っているのをホムは見逃さない。


「盗賊は逃さないよ。土壁!」


 盗賊が一番多い箇所を中心に土の壁が現れる。高さは3メートルくらい。当然ジャンプしても逃れる高さではない。


「くっ、魔法も使えるのか。おい、あいつを集中して倒せ!あいつさえ倒せば壁は消えるはずだ!」


 残った盗賊達がホムに殺到する。だが、ホムはその攻撃を躱し、受け流し、弾き飛ばして代わりに強烈な一撃をお見舞いして戦力を奪っていく。それからほぼ時を置かずして、盗賊は全員昏倒してしまっていた。頭もホムには粘ることもできずに一撃だ。


「ふぅ、数だけはそれなりに居たけど、本当にそれだけだったなぁ」

「あ、あのー、すいません」


 ふう、と一息ついたホムに、護衛の一人が声をかけてきた。ホムがそちらを向くと、護衛達の一人、魔法士っぽい女の人が恐る恐るといった風に声をかけてきていた。彼らは馬車を守るようにホムとの間に陣取っているが、これは敵意ではなく警戒してのことなのは理解できるのでホムとしては問題ない。


「ハイハイ、何でしょう」

「加勢ありがとうございます。ところで、あなたはどんな目的でこちらに?」

「あぁ、そこの森から街に向かおうとしたんですけど、丁度この有様に出くわしたので加勢しただけですね。で、良ければ街への方角と距離を教えて欲しいんですけど」


 嘘をつく必要もないので、ホムは正直にそう言った。それを聞いた護衛達は、「ちょっと待ってて。雇い主に聞いてみるから」と一人が馬車の方に向かい、3人がホムと対峙することになった。


「この盗賊達、どうする?」

「どうするって?」


 盗賊達は、生きたまま街に連れて行くと報奨金の他に犯罪奴隷としての売却金も貰えるのだそうだ。因みに殺してしまった場合は首を持って行くことで報奨金だけが貰える。


「まぁ、殺してないからそのまま連れて行くのがいいかなぁ」

「でもこの数を連れて行くのは無理よ。ロープで繋いでいても暴れたりするし」

「それなら大丈夫。こうするから」


 ホムは空間魔法で亜空間を作り上げ、そこに縛り上げた盗賊達をぽいぽいと投げ入れる。この亜空間は見渡す限りの草原で、時間停止はしないが生き物もそのまま入れることができる。言わば小さな異世界だ。

 全員を放り込んだところで、馬車から護衛と商人らしきおっさんがやってきた。


「オーバンドーさん、こちらが助太刀してくれた、えーっと名前聞いてなかったな、少女です」

「あ、名前はホムと言います。ふらふら旅してます」

「ホムさんと言うのですね。私は商人をしていますオーバンドーと言います。ところで盗賊達の姿が見えないようですが」

「あぁ、あいつらは私の亜空間に放り込んでおきました。確認します?」


 まだ閉じていなかった亜空間から、一人取り出して見せる。先ほどからあんぐりと口を開けていた護衛達と一緒に、オーバンドーと彼と一緒に戻ってきた護衛も口をカクンと開けて茫然としてしまったのだった。


今回も3000文字未満と少ないですが、毎週投稿は続けていきますので、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ