表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

クロネコギター4

作者: 山崎 モケラ

少しでも、ほんの少しでもあなたの勇気がわいたら嬉しいです。

あたしはいわゆる登校拒否児だ。

本当なら高校3年生になってるはずの高校2年生だ。


おまけに引きこもりというものをしている。

家からもう半年出ていない。


家ではゲームやギターを弾いている。

それ以外はあまり何もしていない。

勉強も、しなくなった。



友達からのLINEも最近は来なくなった。

LINEがきても、あたしが無視していたからだろう。



でも、構わない。



学校に戻る気はないからだ。

じゃ、どこに行くの?と、聞かれると困るのだが。

今の高校に戻る気は無いのだけは確かだ。



なんで、学校に行かなくなったかというと。

あたしにもわからない。



学校には仲の良い友達もいた。

成績は普通だと思う。


だけど。行けなくなった。



行けなくなった理由が有れば、あたしが知りたいと思った。




以前は週に1回、登校拒否の精神科の先生のところに行った。

でも、今、それすら行けなくなった。



その病院は母が代わりに行っている。



ゲームもギターも飽きた時は、外をぼんやり見ていた。



そんな時に気がついた。


あたしの部屋は3階なのに、丸っこい大人のクロネコがベランダで日向ぼっこしていた。



あたしはネコが好きなので、撫でたくてたまらなくなり、逃げないようにソッと手を伸ばして背中を撫でた。



あまりにかわいいと思い、抱き上げて部屋の中に入れた。



母に飼っていいか?と、相談に行くと、母はびっくりした顔で『いいけど。世話はあなたがしなさい』と、ハッキリ言った。



あたしはこのネコに、ブラッくんと名付けせっせと世話をした。



世話といっても、トイレくらいだったけど。




ある日、気がつくとブラッくんの餌がカラになっていた。

どうしよう。

母は私の精神科の病院に行ってて帰りは遅い。

ブラッくんはお腹空かせてるようだった。



あたしは、念のためにと置かれていた千円を握りしめ、餌を買いに行くことにした。



外に出るのはすごく怖かった。

だって、半年も出てないんだもん。



着替えて、髪をとかして、鏡にうつった自分を見て、変なところはないみたいと勇気づけて、玄関のドアをグッと握りしめた。




そして、外に向かって目をつぶってドアを開けた。





何分も立った気がした。

一瞬のことだったけど。



3歩外に出てみた。心臓がバクバクする。




大丈夫、あたしは倒れてもなければ、化け物に変身してもいなかった。そう、あたしはいつも通りのあたしだった。




化け物に変身してないことを確認し、あたしは、近所のドラッグストアに向かった。


ネコのご飯は売っていた。

まるで、50年前からそうしているかのように。

無事に買って、のんびり帰った。




帰り道は歌いたいような気分で帰った。

そうだ、ギターを弾きながら歌ってみよう。

そんなコトをボンヤリ思った。




家に帰るとブラッくんが餌を待ってウロウロしていた。





さっそくあげると、嬉しそうに食べていた。



そのタイミングで急に友人からLINEが来た。




『バンドをやろうと思うんだけど、ギターがいないんだ。

一緒にやらないか?』



あたしは、なんだか急にワクワクしてその誘いにオッケーを出した。



打ち合わせは明日学校でやろうと、言われた。




学校にその要件だけのために行ってもいいと思った。

明日は学校に行ってみよう。




バンドの打ち合わせは考えただけでワクワクした。








気がつくと、ブラッくんがいない。

どこにも。

まるで空気になって消えてしまったかのようだった。






部屋中探し回っていた時に母が帰ってきた。

明日、学校に行って、バンドの打ち合わせをするんだと言った。



母は嬉しそうにちょっと涙をおさえながら『今夜は美味しい物作らなくちゃ!』と、背中を向けた。

最後まで読んでくださってありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ