91.ジャルーズとレイ
更新お待たせ致しました。
今回はダンジョンのお話しは一旦お休みです。
その後のレイのお話しをお楽しみください。
ダンジョン外の広場。
カルタカヤル運営局の建物に設置されている拡声器から夜の20時頃、声が響いた。
「速報ー!速報ー!トレシアスクファミリーが79階のキングゴーストを撃破!80階層へ突入しましたー!またもや記録更新であります!快挙!快挙です!果たして彼等は前人未到の106階へ到達する事が出来るのか!随時更新の状況をご報告致します!乞うご期待!」
するとダンジョン前の広場には歓声が上がった。
「やりやがったぜ、あいつら!」
「どこまで行くのか楽しみだね!」
「俺も入れてもらおうかな!」
「バカ!お前のレベルじゃお荷物になるのが落ちだぜ!」
「トレシアスクばんざーい!!」
老若男女がダンジョン前で騒いでいた。
そこに居合わせた2人の男がいた。
「なぁ兄貴。あいつら80階層だってよ」
「俺達がもらった転送石のセーブは59階だったな。いきなり階層ボスのブルーワイバーンと戦わないけんらしい」
「ふん!ブルーワイバーンなんて肩慣らしにもならねーべ」
「んだな。取り敢えず宿でも取って早速ダンジョンさ行くべよ」
「ここまで全速力で来たべ!?俺腹空いてしまって…」
「んじゃ腹ごしらえしてからだな。あんまりダラダラやってっと魔王様に怒られちまう」
「んだな。急ぐべ」
この兄妹の名はジャルーズ。
魔王軍の隠し玉的兄妹だ。
二人はその昔、スパイとして聖大陸へ潜入していた事もあった。
生まれは魔王大陸。
竜人、ドラゴニュートの種族に生まれ、その腕を買われ魔王軍へ所属。
兄シャルガは5番隊副隊長の経験を経てスパイへ。
弟シュルバは6番隊副隊長の経験を経てスパイへ。
二人はユニークスキル:擬態を習得していた。
ユニークスキル:擬態はドラゴニュート族が持って生まれるスキル、シンプルスキル:変化の強化版である。
このスキルを使う事によって二人は人間へ擬態化し聖大陸へ潜入。
内部情報を魔王軍へ流し、ウルザリアを落とし魔王大陸の敷地を広げた。
帰国後隊には既に副隊長に昇格した者がおり、二人は魔王軍別働隊として扱われるようになった。
兄シャルガ・ジャルーズ。
弟シュルバ・ジャルーズ。
兄シャルガは称号:ドラグロード
弟シュルバは称号:ドラグジェネラル
軍隊長レベルに匹敵する力を持っている。
二人はダンジョンへ潜入しトレシアスク一行を抹殺するのが目的だ。
そんな事も露知らずダンジョン内。
トレシアスク一行は80階層へ入っていた。
トゥキーが80階のフロア内を見渡して口を開いた。
「こういう気候って言うのはダンジョンの特有なのかね」
80階のフロア内は所々マグマが煮え滾る灼熱フロアとなっていた。
トゥキーの言葉にシーナが答える。
「凄い気温差だよね。上は墓場、下はマグマ。まるで何かのクイズみたいね」
「90階は氷フロアだったりしてね」
「あり得るね」
「話しててもしょうがない。今日はこの階で宿を取ろう」
一行は灼熱フロアでその日の探索を打ち切った。
その頃メタトロンに敗れたレイは何かが弾ける音で目を覚ましていた。
目を開けると茅葺き屋根に木材で作られた屋根が見えた。
「目を覚ましたかい?」
左方向から老人男性のような声が聞こえた。
その声の方に顔を向けるとそこには老人が一人、囲炉裏を挟んで藁を編んでいた。
レイは一瞬で今までの出来事を思い出した。
メタトロンにボコボコにやられ、海岸に倒れ、去り行くメタトロンの姿を見ながら意識を手放した所までを。
そして今の状況を瞬時に推測し言葉を発した。
「あんたは?」
「私はチーハオ。お前海岸で倒れてた。だから家まで運んだ」
「そうか。世話掛けたな」
レイはメタトロンから受けたはずの傷口を手で撫でた。
すると直ぐに異変に気付いた。
それを見て老人が口を開いた。
「お前傷凄かった。だけど近くにポーションあった。それかけといたね」
「ああ…そうか。ありがとう」
メタトロンが置いて行ったポーション。
あれを使う体力も残っていなかった。
普通であればあのまま死んでいたに違いない。
この老人が助けてくれなかったら。
悔しく思う前にレイは感謝の気持ちを強く感じた。
そして再度老人を見て口を開いた。
「ここで暮らしてんのか?」
「ああ」
「一人で?」
「ああ」
「…そうか」
レイは身体を起こした。
そして室内の暗さを感じ今が夜であろう事が想像出来た。
再度老人へ質問をした。
「どの位寝てた?」
「3日位ね」
「は!?そんなにか!!」
「酷い傷だった。ポーションなかったらあの世逝きね」
レイの最期の記憶は昼過ぎ。
数時間位寝ていたのかと思っていた。
自分の想像を上回る経過時間に驚いたのである。
「そうか。何日も悪かったな」
「私は何もしてないよ。家と布団貸しただけ。腹空いた?」
「ああ…」
そういうと急に腹の虫が泣き出した。
それが耳に入ったのか老人が口を開いた。
「待ってろ。今何か作ってやる」
そういうと編んでいた藁を床に置き、立ち上がると台所へ行き準備を始めた。
飯を待っている間レイはメタトロンとの戦いを思い出していた。
魔力を発したメタトロンは今まで出会った事のない位の威圧感を有していた。
その威圧感はトゥキー、師匠以上で『化物』と言う言葉がぴったり当てはまるような感じであった。
初めて戦闘前に恐怖を覚えた。
そんな自分を奮い立たせた。
今まで強い者であれば強いだけ戦闘がワクワクした。
逆境と言うスキルは魔力量を増やす以外にシンプルスキル:挑戦系のスキルの補正もする。
身神を所有し逆境により補正されても尚、人を震え上がらせるメタトロンの威圧感。
無理やり自身を鼓舞し立ち向かって行った。
辛うじて戦えたが見た事もない剣捌き、剣技、魔剣術。
闘いの中で何度も食らい何度もふっ飛ばされ、何度も切られ、闘いの中メタトロンの剣に少しずつ慣れて行くのを感じた。
その吸収力にメタトロンは驚いた。
何度もふっ飛ばし、何度も切り付けたにも関わらず向かって来る。
二度と同じ攻撃はほぼ通じなくなって行く。
人でこれ程までに才能を感じた事はない。
荒く、力任せな剣ではあるが吸収が早く相手がしている事を完璧にコピーは出来ないが7割位の完成度で直ぐにコピーする。
その中で隙を見つけ攻撃して来る強かさ。
メタトロンは人族に対してこれ程興味を持った人間はいない。
その為思いの外力が入ってしまう。
大地を抉り、海を裂き、緑を破壊する様な攻撃を何度も仕掛けた。
何度も食らいながら立ち向かって来ては先程より剣が鋭くなって行く。
思いの外大技を使い過ぎてしまったメタトロンは魔力が少なくなっていた。
自分より魔力量が明らかに下だったはずの人間はまだ魔剣術を使えている。
そんなはずはなかった。
自分よりも魔力量がないにも関わらず魔剣術をずっと使っている。
メタトロンが放つ魔剣術は大技。
それを防ごうとすると同じ位の魔力が必要な大技で返さないといけない。
何度も放って何度も防いだ人間の魔力は疾うに尽きているはず。
にも関わらず未だに魔剣術を放っている。
その不思議な現象に気を取られている内に一太刀浴び、二太刀浴び、三太刀浴びてしまった。
決着をつけなければこっちがやられる。
相手は魔力は尽きているにも関わらず未だに魔剣術を放つ。
メタトロンは秘技を出し、レイの背中に大きな太刀傷を刻んだ。
それによりレイは倒れた。
メタトロンは久々に未来へ希望を持った。
この日メタトロンはレイズ・ワシントン。
この名前を深く深く記憶した。
他の剣神と戦って成長したレイズ・ワシントンが再び自分の前に現れる事を楽しみに思った。
同時に恐怖にも思った。
次の日からメタトロンは久しくしていなかった剣の精進を再開したのだった。
そんな事を考えている内に目の前に食事が出された。
出された食事は赤い野菜の漬物と貝やエビなどが入った粥であった。
老人は食事を出すと口を開いた。
「碌な物出せないよ」
「いや、助かる。ありがとう」
老人は再び向いに座り藁を編み始めた。
レイは粥を手に取りスプーンのような陶器で出来た物で粥を救って一口食べた。
粥は海老や貝の出汁が良く出ており、奥深い味わいになっていた。
レイは感想が思わず口に出ていた。
「美味っ」
「口に合って何よりだよ」
レイは粥の横に小皿に乗せられた赤い菜っ葉の漬物を掬い一切れ食べた。
恐らく白菜か何かだろう。
ピリ辛でほんのり甘みと酸味が合わさって良い味を出していた。
「これも美味いじゃん!じいさん料理美味いな!」
「元々料理人ね。美味くて当たり前よ」
「そうなんだ!ここにはどの位住んでるんだ?」
「もう10年以上よ」
「一人か?」
「そう。気楽で良いよ」
「ふーん。職業は?」
「内職。後は漁師よ」
「料理人はもうしないのか?」
「うんざりよ」
「そうか」
レイは直ぐに出された食事を食べ終えた。
そして老人に感謝を言った。
「ありがとう。助かった」
「困ったらお互い様よ」
「さっきから気になってたけど、もしかして魔王大陸出身か?」
「…」
「あ、いや、俺もそうだからさ。俺の生まれた国にもあんたのようなイントネーションで話す商人とか来てたから」
「ああ。お前もそっち出身か。あまり聖大陸でそれ言わない方が良いよ」
「ああ。それは教わってる。同郷にはやっぱり聞いちまうけどな」
「もう身体大丈夫?」
「ああ。すっかり」
「なら明日出てくつもり?」
「そうだな。俺も目的がある」
「そう。何処向かう?」
「ヘストニア」
「なら海沿いを行けば着くね。パーランドは広いけど他2ヶ国は狭い国よ」
「だな。今晩だけ泊らせてもらっていいか?」
「勿論よ。ゆっくりして行くが良いね」
「ありがとう」
次の日レイは早朝に目覚め、支度をすると金貨を一枚床に置くと老人を起こさないように小屋を出た。
辺りは靄掛かっており、海が近いようで波の音がした。
レイは魔袋から取り出した方位磁石を確認し、進む方向を確かめるとヘストニア王国へ向かい歩き出した。
より強くなる為に。
メタトロンに勝つ為に。
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