89.ダンジョン リターンズ⑨
更新お待たせ致しました。
これから色々と周りを巻き込んで行こうと思っています。
これからも楽しくお読み頂ければ幸いです。
「トゥキー、大丈夫?」
クリンが俺の顔を見て心配そうに首を傾げている。
俺達は今ダンジョンへ戻るべく、宿の俺達男子部屋に集まっていた。
「ああ。俺が魔法使いじゃなかったら全治3ヶ月の複雑骨折で飯もろくに食べれなかっただろうな」
「ごめんね」
「何を謝る。俺達は男だ。仕方ない事もあるさ」
するとシーナが怖い顔をしてこちらに振り向いた。
「今何か言った?」
「いえ!何も!」
ジト目で俺を見続けるシーナの目が怖くて俺は思わず目を反らしてしまった。
そんな俺とシーナを見てあたふたとするクリンとアレン。
スーカはいつも通り聞いてるが知らんぷりだ。
必需品は先ほど町へ出て買い揃えていた。
既に転移石はダンジョンに置いてある為、俺達は75階へ宿の部屋から戻る事が出来る。
用心する奴はダンジョンの運営している転送部屋を使う事が多い。
そこであれば転送石を勝手に持って行かれて捨てられたり転送石を壊される事はない。
そうならないよう運営が管理しているのだ。
転送石が壊される事は先ず難しいが可能性はゼロではなく、それなりのスキルを持った者、または強力な魔法、魔剣術、武器などを有する者であれば破壊は可能である。
俺達は単純に楽だからと言う意味で宿からの転送をしようとしている。
転送石が何者かに奪われたとして奪った者に利点がない。
強いて言うなら俺達への嫌がらせだ。
60階に行けない奴等が70階へ転送する意味がない。
ブルーワイバーンを倒せないのにアースドラゴンを倒せるはずがないのだ。
要は死にに行くようなものである。
その為俺達は宿からの転移をしようと言う事となった。
「それじゃそろそろ戻るか」
そういうと俺は部屋の丸机に置いた転送石に平手を翳し、魔力を流し始めた。
同時に何人も一緒に転送するには条件がある。
お互いの身体や衣服の一部を触っている事だ。
そして転送石が魔力を感じ青白く光り出す。
目を開けているのも難しい程の光を放った為瞼を閉じると直ぐに瞼の前は暗くなった。
暗くなった事を感じ取り目を開けるとそこはダンジョンの壁の前であった。
俺達はダンジョンの中へ戻って来た。
俺はまだ仄かに青白く光る転移石を壁から抜き取ると直ぐに元の色に戻った。
周りを見渡し、皆がいる事を確認した後転移石を魔袋に入れ一言発した。
「よし!先に進むか!」
「うん」
「だね」
俺達は更にダンジョン深層部へと進んだ。
その頃ダンジョンの外ではいつもと違う事が行われていた。
ダンジョンの前には多くの冒険者が押し寄せていた。
するとダンジョンを運営するカルタカヤル運営局の建物上部に設置されている拡声器から声が流れた。
「只今トレシアスク一行がダンジョンへ戻りました!さて!今回の潜行ではどこまで進み記録を伸ばすのか!勇者ロドメンソン一行が潜行を中断して15年!105階の最深記録を更新する可能性のある冒険者が現れた!ご存知トレシアスクファミリー!!彼等の最新情報は随時放送にて報告致しまーす!」
それを聞いたダンジョンに集まっていた冒険者、住民などは大きいに沸いた。
「おー!すげー!!」
「頑張れー!トレシアスクー!」
「記録抜いちまえー!」
ダンジョン攻略するとリミテーションスキルが手に入る。
それは世界共通の認識だ。
この特別なスキルを求めダンジョンに入る者も少なくない。
追い越されて気分の良い者はいない。
だがダンジョンに入る殆どの冒険者がリミテーションスキルを求めて入っている訳ではなく、あくまで冒険者は職業。
ダンジョンに入り、魔物を倒し、素材や魔石、薬草にアイテムなどを拾って売る事が目的だ。
自分のレベルもアップし、金も手に入る。
より深部に進む事によってレア物は増える為それなりの収入とそれなりの力が手に入る。
ダンジョンには夢と希望が詰まっているのだ。
だがトレシアスクや勇者、魔王軍などの希少な者はダンジョンに長居する事はあまり好まない。
何故なら欲しいのはリミテーションスキル。
世界を変える力を求めて潜行している為、何年、何十年も潜行はしたくないのだ。
人間は尚の事、その間に老い、新たな勢力も出て来る。
時間を掛ければ掛けるだけ本末転倒な結果となってしまうのだ。
ダンジョンを攻略した所でリミテーションスキルはなくなってしまうがダンジョンがなくなる訳ではない為、ダンジョンで生計を立てている者は攻略方法の開示を期待し応援し、リミテーションスキルを狙う者は面白くない顔をした。
その他住民は新たなヒーローを歓迎していた。
その頃クランス王室。
若き王ジャン・エルメ・クランス4世は大臣のピエールからの報告を聞いていた。
「ほう。15年ぶりにダンジョンの記録を更新したと。その者達は何者だ?」
「運営局の情報ですとバルテオナ3大神の弟子との事です」
「それは勇者以来の大物が出て来たのではないか?魔王大陸にいるとされている勇者ロドメンソンの後継者候補なのでは?」
「恐らくそうではないかと存じます。ロドメンソン以来のビッグネームはまだ出ていませんでしたからな。彼の有名な3大神は現勇者にも教授を取った事でも有名な元勇者パーティの一員ですし、恐らく次期勇者候補として育てたのではと存じます」
「そんな大物を我が国で囲ったら他の国でも我が国は更に優位に立てるのでは?」
「ですが次期勇者であればいつまでもこの国に居座らせる訳には行きませんぞ?」
「わかっている!ロドメンソンが死ぬまでだ。数十年はまだあるだろう。あれもまだ30代。魔王に挑んで死なん限りはまだ時間があるだろう。その間に更に領土を広げる!ベルグイ、ルクセンボー、シュイム、あわよくばイザニア、ロイス、イグリスをクランスの領土とする事も可能なのではないか?」
「バルテオナは黙ってますかね?」
「魔王軍の侵略を食い止めるのがあ奴等の仕事だ。他国の戦まで首を突っ込んだりはせんだろう。よし!トレシアスクがダンジョンから戻り次第使者を送れ!我が直々に会おう!」
「は!」
トレシアスクの知らぬ所でクランス王の思惑が渦巻いていた。
そしてもう一つ、無視出来ない勢力がトレシアスクを狙っていた。
サイモンズがジャルーズなる者の所へ赴いていた。
「久しぶりだな、ジャルーズ」
「サイモンズ様。お久しゅうございます。仕事でしょうか」
「うむ。聖大陸にあるクランス王国。この王都ペアリスにあるカルタカヤルダンジョンに無視出来ぬ新勢力が潜っておる」
「狙いはリミテーションスキルですか?」
「そうだ。将来我等の敵になると予想される。若い芽は若い内に摘んでおきたい。頼めるか?」
「畏まりました。それでその者達の名は?」
「トレシアスクファミリーと名乗っている」
「…数年前に指名手配されていた?」
「そうだ。関係ないとは言え、前魔王軍の軍団長であったベルフェゴルを倒している。知っての通りベルフェゴルは猛者だ。それを後元勇者パーティの一員であった魔法使いシャクール・オニールが倒し、その者と行動を共にしていたと言う情報が入っている。想像するにこの6年間オニールに色々叩き込まれているはずだ。6年前とは比べ物になっていない可能性が高い。現在の軍団長を向かわせても良いか聖大陸のど真ん中で隣国にバルテオナがある。下手をするとバルテオナが出張って来る可能性がある」
「だから私なんですね」
「そうだ。お前であれば聖大陸でも問題ないだろう。何かあれば帰還の羽で戻って来ればいい。お前を追って魔王大陸へは来れんだろう」
「…そうですね。わかりました。聖大陸への近道は?」
「イザニアに我が軍の潜入者がいる。イザニアに転移陣を仕込んである。イザニアへ行き、その足でクランス入りしトレシアスクを抹殺した後帰還しろ」
「畏まりました」
「準備出来次第出発してくれ」
「はい」
「そうそう。奴等を殺るのはダンジョン内がベストだ。外だと色々と面倒だからな」
「そうですね。承知しました」
魔王軍からジャルーズがイザニアへ派遣される事となった。
そんな事は露知らずトレシアスクはダンジョンを先に進んでいた。
70階層は死者蠢くホラーな階層となっていた。
どういう訳かトゥキーはアンデッド系の魔物が好きでコレクションをするレベルであった。
より強いアンデッド部隊を作るべく、欲しい人材…死人材はスキル統率者にて仲間にしていった。
階を下る毎にダンジョン外では放送され、その度に歓声が起こっていた。
トレシアスクは1階1階隈なく調べて降りると言う方法を取っていた為放送されるのは数時間に1回程度の頻度であった。
新しいヒーローに町の子供はワクワクしながらその放送を聞いた。
学校でもトレシアスクの話題で持ち切りだ。
そんな事になっているとも知らず本人達はダンジョン攻略を目指し奥へと進んだ。
特に苦労もせず進めたのはトゥキーのアンデッド好きな事と彼のスキル統率者のおかげだろう。
そして今目の前に大きな鉄製の扉が立ち塞がっていた。
彼等は現在79階。
そう。
ボス部屋の前である。
するとトゥキーが扉を目の前にして口を開いた。
「来たな、ボス部屋」
「うん」
「何が待ってるだろうね」
「またスカルドラゴンは勘弁かも」
「素材高く売れるし良くない?レアモンスターだよ?」
「またドンチャン騒ぎ出来るかな?」
「この前はそんなにしてなくない?あ…」
「ごめん」
酔っぱらって場を白けさせた事をスーカが謝る。
そんな空気の中トゥキーが口を開いた。
「取り合えずアースドラゴンより強いのが中にいる。ここまで遭遇した魔物で一番強いのはLv.472のフェンサジックゾンビだった。俺達のレベルに段々近付いてる。そろそろ一筋縄じゃいかなくなるかも知れない。気を引き締めて行こう」
皆その言葉に気の緩みを張り直す。
「じゃあ行くよ」
そういうとクリンが大きな鉄製の扉を開けた。
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