57.国の闇
更新遅くなってすみませんでした。
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その夜一行は酒場で飯を食べた。
酒場は良くあるパブのような作りで長四角い食卓テーブルが並び、長四角いベンチチェアーが並ぶ60㎡程の店だ。
料理は鳥の姿焼きやパエリアのような物、炒めた飯、スープ、サラダと言ったような酒屋飯メニューが多かった。
「うっま!この店うっま!」
レイが店の味を褒めながらバクバクと飯を食う。
レイが言うようにこの店の味はそれなりだ。
俺はウェイトレスと思われる女性店員を呼び止めた。
「お姉さん!ビール一つ」
「おいおい!小僧が酒なんて飲むもんじゃないぞ」
と師匠が俺に言った。
そうか…俺は見た目子供だったな。
実年齢は前世と合わせると40半ばだ。
人生の酸いも甘いも知っている。
酒は好きだったし数日歩き周ってやっと辿り着いた町ならば久々にビールをやりたくもなるのだ。
「師匠!堅い事言うなよー。俺も飲みてー!」
「お前等もう酒の味なんて知ってるのか。何て子供達だ。程々にしておけよ!」
レイが師匠に酒解禁を求めた。
前世の世界では法律があり、未成年の飲酒は禁止されている。
この世界でも未成年の飲酒は体に悪いと言う認識はあるらしいが飲んではいけないと言う法律はない。
健康を妨げる可能性があるがこの世界の成人は早い。
10歳の子供が大人と同じ位の稼ぎを作っている事だってざらにある話しである。
その為この世界では未成年の飲酒は法律で禁止をされてはいないのだろう。
そもそも俺は前世から法律に逆らって来た人間だ。
今更法律を守るなんて事は考えていなかった。
魔法があり、仲間がいて、悪い事をせずとも金が稼げる世界。
俺のような人間には楽園のような世界である。
その後俺達は酒を飲んだ。
何だかんだ言っていた師匠も飲み始めたら楽しくなってしまったのかレイに酒を進めていた。
酒の席と言うのは不思議と距離が近くなる物なのだ。
「そう言えば私が書いた魔法書で勉強したと言ったな」
「はい。これです」
俺は魔袋から魔法書を取り出した。
師匠は手に取りページを捲り言った。
「これか!これは私が3番目に書いた魔法書だ。ほぼ簡単な魔法しか書いてない初期作だな。これを何処で?」
「エジファトの店でです」
「そうか…。巡り巡ってエジファトに渡っていたか」
その後腹も膨れた俺達は店を出ると師匠とクリンが取ってくれた宿に向った。
外は既に暗くなっていた。
その道中師匠が口を開いた。
「付けられてるな」
「ですね」
「ああ」
その気配を感じたのは師匠とレイと俺である。
「何人に感じる?」
「3ですかね」
「多分3」
「うむ。良い感覚だ。魔王軍かも知れん。注意しろ」
「「はい」」
そして俺達は意図して誰も目が届かないような町の路地に入った。
追手は3人。
普通の人間のように歩いて付けていた訳ではない。
屋根を移動したり壁を這って移動したりしていた。
一行が入った路地裏に入るとそこに一行の姿はなかった。
「見失った!?」
と驚いた瞬間声が聞こえた。
「お前等誰だ。魔王軍の者か?」
建物の上には戦闘態勢の一行が待ちかまえていたのだ。
「くっ」
追手は気付かれていた事と予想外の行動に驚き後退りする。
三人とも黒い布を深く被り顔は確認出来ない。
その時俺は口を開いた。
「スパイディ!」
すると追手の後ろに黄色い大蜘蛛が飛び上がって来る。
背後に飛び上がった大蜘蛛を見て追手は驚いた声を上げる。
「ま、魔物!?」
飛び上がったスパイディは追手三人に向けて糸を吐いた。
スパイディの糸は火には弱い物の耐久性に関してはかなりの物だ。
その為俺達も服に用いている訳だ。
スパイディの糸に絡まれ自由を失った二人はそのまま下に落下しそうになるが糸はスパイディに繋がっている為落ちはせずに宙釣りになっている状態になった。
だが一人は上手くスパイディの糸を掻い潜り逃走を図った。
「クリン!」
俺がクリンの名前を呼ぶとクリンは建物の屋根から落下。
下に着くと強く地面を蹴り高速で逃走を図った追手の目の前に現れ道を塞ぐ。
高速で動く際、非常に強く踏み込まなければいけない。
建物の屋根では崩落する恐れがある為一度地面に降りてからでないと100%の力で踏み込めないのだ。
人外な力を得るとこうなってしまうのである。
「っな!」
クリンのあまりの素早さに追手は逃走する足を止め一つ後ろに下がる。
そこを見逃さず俺はスパイディに指示を送る。
追手を右手の人差し指で差し、右手の親指と人差し指と薬指を立てた手の平を見せる。
すると追手の背に向ってスパイディが糸を吐く。
「クソ!」
スパイディの糸に絡められた追手が自身の油断を嘆く。
そして三体の蓑虫が出来あがった。
「おい。何故俺達を付けていた?魔王軍の追手か?」
俺が三人に聞く。
「魔王軍ではない。そこの小僧が俺達の仕事の邪魔をしたからだ」
「仕事の邪魔?」
そしてどうやらその目線の先はレイだ。
「レイ…何かしたのか?」
「ああ…ほら!さっき逸れちゃっただろ?その時に小さい女の子を浚おうとしてた奴等がいたんだよ。だから助けたんだ」
「と言う事らしいが?」
俺はレイの良い訳を聞いてレイは悪くない事を理解し、再度宙釣りになっている追手に目線を直した。
「ああ、そうだ!俺達はこの町の人売組合の者だ。そこのガキのせいで今日の売上に影響が出てんだ!人売組合が黙ってる訳ねぇだろ!」
「ほう。国の闇って事か。そんな組織があるんだな」
「うむ。魔王大陸では良くある組織だ。この世界の事レッスン1だ」
師匠がこの世界の事を話し始めた。
「この世界には…いや、魔王大陸では人身売買が闇で行われている。人間は勿論魔族、魔物も商品に含まれている。この世界は二つの大陸が存在する。今私達がいる魔王大陸と海を挟んで向かいにある聖大陸だ。そしてこの星の総称をグレートバースと言う。聖大陸は人も多いが魔族も多く人身売買も法で禁止されている。まぁ全くないとは言い切れないけどな。だが魔族と人間が共に暮らす土地もあるのだ。一方魔王大陸は人身売買を禁止する法はなく、寧ろ盛んに行われている。それは現魔王ヴァイダンの影響が大きい。人と魔族は長年争いが絶えず、人による魔族への迫害、魔族による人間迫害が続いて来た。ヴァイダンは魔族至上主義者であり人の命など何とも思っていない奴だ。それに人身売買は金になる。その金は結局は魔王に流れ魔王自身の懐も潤うと言う訳だ。ヴァイダンはそれだけに飽き足らず聖大陸へも侵略を続けており、少しずつ魔王大陸の一部と化しているのが現状だ」
「魔王ヴァイダンか…完全に悪者だな」
「そうだ。魔王と言う存在は必ずこの世界に存在する。それと同時に勇者も必ずこの世界に存在するのだ。その時の魔王、勇者によってこの世界の状態は大きく変わる。ヴァイダンがこのまま魔王でいる場合、100年もあれば聖大陸全てを魔王大陸にする事も可能だろうな」
「勇者は?勇者は何してるんだよ?」
「聞いた所によると少し前に魔王と対峙したらしい。そして負けたと…。死んではいないようだがあいつではな…。どの位時間がかかるやら」
「え?何?師匠は勇者を知ってんの?」
「ヴァイダンも現勇者も知っている。何を隠そう現勇者に魔法を教えたのは私だからな」
「勇者の師匠なの!?師匠」
「んん…まぁそういう事にはなるが勇者は魔剣術士だ。私が教えたのはほんの基本魔法…お前達が持っている魔法書程度の魔法しか教えてない」
「いや、十分だろ」
師匠の言葉にレイが質問をし最後にツッコミを入れる。
そして俺は皆が忘れているであろう事を口に出した。
「それで?こいつらはどうする?」
「うむ…。逃がしてやっても害はないだろうが組織が後ろにいるんじゃどの道面倒な事になりそうだな…」
と俺の言葉に師匠が答える。
「なぁ。こいつらこの大陸にいる人身売買組織の一角だろうけどさ、見逃せないよな」
とレイが言う。
「ふっ」
「はは」
「レイらしい!」
「本当!」
「レイ兄はそう言うと思ったよ!」
「あ!?何だよお前等!笑う所か?」
あまりにレイらしい一言に皆が笑顔になった。
レイは頭は良くないが優しく思いやりのある人間だ。
次の勇者がレイだったらと思うと何だかいい世の中になりそうな気さえして来るのだ。
俺は方針を決め口に出した。
「この国の人売組織を潰そう」
「「うん」」
「だね」
「…」
「っし」
「待て待て待て!ここで大きなトラブルを起こすのは…」
「師匠。俺達は弱い者の為に戦うとエジファトで誓った。国が違えど見て見ぬふりは出来ない」
「…わかった。先ずはこいつらにアジトを聞くとしよう」
師匠がそういうと皆蓑虫状態の追手三人に視線が集中する。
「さて、話してもらおうか」
レイが不敵な笑みを浮かべて追手に話しかける。
「喋る訳ないだろ!」
「らしいぜ?トゥキー。話す気ないらしい」
レイが振り返り、後方にいた俺に話しかけた。
「そうか。今お前達が捕まっている蜘蛛の魔物が目に入ってるか?」
そう。
スパイディである。
スパイディはエジファトから登場していなかったがあの時よりも少し大きくなっており、2mは確実に超えていた。
ヤオ・ミンと同じ位かそれ以上なのである。
「その巨大蜘蛛はパンクトリウムと言う種類で蜘蛛の魔物でも上位種だ。その生態は獰猛で肉食。俺の言いたい事わかるな?」
そういうと追手の三人は黒い布から微かに覗いている顔が青くなっていくのが見えた。
「食べられたくなかったらさっさと吐いた方がいいぞ?」
レイがニヤニヤと悪そうな笑みを浮かべながら言う。
「あっ」
「ピュン!」
追手が口を開こうとした瞬間高速で小さい何かが飛んで来た。
その何かは横一列に並んだ蓑虫となっている追手の頭を横一列に打ち抜き、追手三人は絶命をする。
その何かが飛んで来た方向を見ると一人の人影が闇へ逃げって行くのが見えた。
「野郎!」
レイが地上に一度降り、もの凄い力で踏み込み一気にその人影に距離を詰める。
俺達もその後を追うのだった。
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