46.Crazy world
本日も無事更新出来て良かったです。
今作はYoung jeezyのCrazy worldをバックナンバーにお読み頂けると雰囲気出るかなと思います。
洋Hip-Hopの曲を題材に作品を書く事が多いので皆様にも興味を持って頂けると幸いに思います。
王都へ繋がる階段の上に現れたのはトゥキーだった。
そして数人が列から出て階段を上がる。
その人数5人。
階段に横に一列に並んだ6人の少年少女は数カ月前に王宮で王に無礼な態度を取った者達であった。
「あ、あの者達は指名手配中の者達ではないか!?」
近くに居た衛兵達が集まり始める。
「そろそろ始めようか。準備はいいか?」
「ああ」
「勿論」
「うん」
「うん」
「皆気を付けてね」
俺は腰の魔袋に手を入れ例の物を取り出した。
「な!」
「あ、あれは…!」
「ま、魔物!!」
「ひぃ!!」
俺は魔袋から10体編成の舞台を3隊…計30体のアンデッドを魔袋から取り出した。
すると見方、敵問わず混乱した声が聞こえた。
見方側には既にこういった手を持っている事を伝えておいてはいたが、口で聞くのと実際に見るのとでは違うらしい。
「よし!お前等の初陣だ!無抵抗な国民には手を出すな。衛兵、王宮にいる者、全て捕縛。難しければ殺しても構わない!いいな?」
するとこちらを向いているアンデッド部隊が声のない首を縦に振るだけの了解をする。
「よし!では行け!」
するとアンデッド部隊は即座に王宮に向けて走り出した。
そしてもう一体の魔物を魔袋から取り出す。
そう、スパイディである。
スパイディの成長は早く、俺達を王宮から助けた時点で二本足で立って手を伸ばしたら俺達の身長を少し超える程に成長していた。
普通に立てば俺の脇位までの大きさだ。
そしてスパイディにも命令を出す。
「アンデッド部隊の援護をしろ」
すると体を縦に振り無言の了解を体で示すと即座に立ち並ぶ家の屋根伝いにアンデッド部隊を追った。
アンデッド部隊は衛兵を捕縛し、または殺しながら王宮に向かう。
俺達も遅れを取る訳にはいかない。
そして階段の上から平民街の市場通りに待機する同胞へ声を掛ける。
「反王国軍の皆よ!この国から王政を廃止するぞ!魔物に続けー!!」
「「「おおー!!!!」」」
俺はこの時ミスを犯した。
1200人に向けて統率者を発動してしまったのだ。
その瞬間俺の魔力は底を付いたのだ。
自らの体内エネルギーが底を尽きる感覚は脱力感と似ていた。
「くっ」
俺はその場でよろめいた。
「トゥキー?大丈夫?」
とシーナが俺に肩を貸す。
「ああ。すまん。そしてお前達に謝らないといけない事がある」
「どうした?」
とレイが言い、皆も不安そうな顔をして俺を見た。
「スキルの使い方をミスっちまった。俺の魔力今空だから援護頼む」
「は!?」
俺の言葉に皆驚いた顔をした。
声を出したのはレイだ。
「どうするんだよ!戦争だぞ?リーダーのお前が何もしないまま魔力切れってそれは不味くないか!?」
「だからすまん。クリンが最前線に行く前の形態に一時的に戻してもいいか?」
それはクリンが俺の盾役となると言う意味であった。
それを直ぐにレイは理解する。
「まぁそれがいいか。魔力のないトゥキーはただの人間だ。全く間抜けめ!今のクリンなら任せて大丈夫だろう。クリン、頼んだわ」
「う、うん」
そういうとレイは前に立った。
その横にはシーナ、シーナは不安そうに俺の方を見ているがレイは王宮しか見ていなかった。
そのレイの後ろ姿が俺には旧友レイモンの姿を思い出していた。
レイモンも俺が銃弾を受けて倒れていた時に俺の前に立って敵しか見てなかったな。
名前もそうだが変な所が似ている。
「トゥキーどうしたの?」
とクリンが聞いて来た。
どうやら笑ってしまってたらしい。
「何でもない」
と伝えると不思議そうな顔をしてクリンも俺の前に立ち、王宮を見上げた。
すると先程から小さく聞こえていた足音が大きくなり俺達の直ぐ傍まで近付いていた。
反王国軍が階段を上る音だ。
そして俺達を追い越して王宮へ1200人が走って行く。
前線ではアンデッドが衛兵を捕縛、排除をし、その隙間から反王国軍が王宮に迫る。
ひ弱な国民は路地や家の中に隠れ身を隠し、こんな事態でも空気を読まない金と酒と女で脳みそトロけた貴族は平民に無礼だと文句を言い、ボコボコにされ捕縛される。
戦闘開始から10分後、王宮の前には衛兵が整列した。
その数3600。
内400は反王国軍を食い止める為に整列が完了する前に倒されている。
残り1000は王宮内で待機しているのであろう。
俺達はその様子を民家の屋根上から見ていた。
「王宮に入る前に通せんぼされちまったな」
「ああ。腐っても国の戦力って訳だな」
「流石に1000単位となると崩すのが難しいね」
「そこでアレン、スーカ、お前達の出番だ」
「そんな気はしてたよ。ね、スー」
「うん。してた」
「じゃあ頼む」
そういうと出来るだけ城門に近付いた。
魔力がないとしても俺の脚はレイやシーナとそう変わらない。
勿論最前線を進むアンデッド部隊よりも早くだ。
「さ、城門を開けて貰おうか」
そう言うとスーカとアレンが魔法を詠唱する。
「ポイズンレイン」
「アイスブリザード」
城門の前に整列した3600人の衛兵の頭上に魔法陣が現れ、紫色の雲と氷の鋭利に尖った無数の塊が現れる。
紫色の雲は右側にいる衛兵に毒の雨を降らせ、氷の塊は左側にいる衛兵に勢い良く降り注いだ。
この攻撃で何人死んだのだろう。
王都中に呻き声と悲痛な叫びが響き渡った。
「魔物は抵抗なかったけど、流石に人は抵抗あるよな」
「そうだね。嫌いな貴族や王族はまだしも衛兵さんはただのスケベな親父多かったし」
「それ理由になるのか?」
「なるわよ!男なんて皆スケベでしょ?それは当り前の事で殺す理由にはならないわ」
「否定出来ないのが辛いな」
シーナとレイの話しを聞いていて俺も少し居たたまれない気持ちになった。
少々俯き儀未のクリンもアレンも思う所があったのだろう。
男などそんな生き物である。
アレンとスーカの魔法が降り注ぐ城門前にアンデッド部隊が近付いて来たのが見えた。
「よし、アレン、スー、もう大丈夫だ。あとはアンデッド部隊に任せよう」
そう言うとアレンとスーカは俺を見てコクっと首を縦に振って魔法を解除した。
氷の塊に潰されてグチャグチャになっていたり、毒に侵され多くの死体がそこには転がっていた。
恐らく半分はやれただろう。
1500ちょいの衛兵にアンデッド部隊が襲いかかる。
「レイ、シー、加勢してやってくれ」
「あいよ」
「任せて」
二人に指示を出すと二人は屋根を飛び降り、着地すると同時に高速で衛兵の塊へ走り出す。
ここで纏う魔法は初級魔法で良いだろうと二人は察したのだろう。
そしてアンデッド部隊を傷付けない魔法をと考えたのだと思う。
レイはダークネス、シーナは水を纏わせて衛兵を切り伏せて行く。
二人は魔剣術を使わなくても十分人間の衛兵には適うはずだが出来るだけ疲労したくないのだろう。
何故なら王宮にいた魔法使い、もしくは魔剣術士はまだ現れていないのだから。
ポーンをいくら排除した所でキングを落とさなければ意味がない。
実際にはキングは盤上から落ちているのだからクイーンかビショップと言った所だろうか。
みるみる衛兵は減って行く。
こちらに損失はほぼない状態でだ。
これはほぼ勝ったなと内心では思っていた。
するとどこかからか若い女性の悲鳴が聞こえた。
「クリン、ちょっと行って来る」
「え?」
俺は戸惑うクリンを置き去りにし悲鳴のする方へ向かった。
何故向かったかと言うと戦場になっている城門側ではなく、反対側から悲鳴が聞こえたからだ。
俺は悲鳴が聞こえたであろう場所を隈なく探した。
すると村民か町民かはわからないが男二人が貴族の若い女性を犯そうとしているのだった。
俺はそいつらの髪の毛を掴んで後ろに投げ飛ばした。
髪の毛を掴んだまま投げた為俺の両手には頭皮から剥げた髪の毛が残っていた。
「いてぇ…髪が…髪が…」
「毛が…皮膚がない…」
その塊を離し、パンパンと手を払うとその男達に質問をした。
「おい。いくら貴族がお前等にした事が酷くてもお前等が貴族に何してもいいって事にはならないだろ」
「うるせぇ!そいつらは俺達の妹や姉を慰み者にしたんだ。俺達が同じ事をして何が悪い!」
「お前達の意見は最もだ。だがお前達が貴族の娘を犯す事で何が変わる?お前等の姉や妹は良くやったと褒めるのか?そうして欲しいと言ったのか?女を犯すなんて行為はお前等の性欲処理をしたかっただけだろ!それを姉や妹を引き合いに出しやがって!男なら惚れさせてヤれ!若しくは金払ってヤれ!金も魅力もねぇのに女とヤりたいが為に力づくで犯すような男は去勢するぞ!帰ってママとでもヤってろクソ野郎!」
「舐めやがって…ぶっ殺して…」
一人の男が言葉を言おうとして途中で意識を失った。
「なっ」
そしてもう一人の男も直ぐに意識を失った。
「全く…一人で動かないでよ」
現れたのはクリンだった。
クリンが二人の男を一瞬で伸したのだ。
「すまん。放っておけなくてな」
「トゥキーらしいけどね。女の子は大丈夫?」
俺は襲われていた女性の方を見た。
金髪の縦ロールで肌の色もこの国に珍しく白い。
その上白いドレスのようなフリルの付いた服を着ていた。
「はい!大丈夫です。本当にありがとうございます」
「俺達がこの戦争を引き起こしている張本人だ。礼なんて言われる覚えは無いさ。危ないから家へ帰りな」
「はい!でも…本当にありがとうございました」
「ああ。行こう、クリン」
「うん。大丈夫そうで良かったね」
「ああ」
そして俺達は一足飛びに民家の屋根に上り戦場へ戻った。
アンデッドの魔物が衛兵を殺し、人が人を殺し、男が女を犯し、苦痛の叫びは響き、血の雨が降る。
まるでこの世界が狂っているような光景。
その中心にいるのは俺達だった。
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