12.ダンジョン⑤
ダンジョン中層に転移させられたトゥキー一行。
このままではダンジョンを乗り切る事は難しいと判断する。
基地を設置し修練を始めるのであった。
翌日から俺達は修練を始めた。
魔法の本を見ながら中級魔法を主体に発動させて行く。
一日で発動出来る魔法は10程増えた。
俺の場合、詠唱すればほぼ発動する。
が、無詠唱となると練習が必要だ。
魔法の扱いにも慣れて来た事もあり、今までよりも身に付く速度が速くなった気がする。
声に大魔法の効果を聞いた所、魔法が取得しやすくなる効果もあるとの事だった。
俺以外も多くて3つ、少なくとも一つの魔法の発動に成功している。
問題はクリンで、こいつは魔法について不器用だ。
その為魔法を1日で1つも取得出来なかった。
先ずは俊敏性と物理的な攻撃威力を高めるのがいいと思った。
男の子だし魔法がダメでも体を使うと言う事が出来るのだ。
俺は前世、暴力でのし上がった男だ。
暴力でのし上がる為にはそれなりに格闘技術を要する為、ジムに通って格闘技を習っていた事もある。
ボクシング、キックボクシング、総合格闘技と習っていた事があった為にそれなりに人に教えられる事も可能なのだ。
翌日からクリンの魔法習得は諦めて筋トレを命じた。
一日何セットも決められたメニューをこなして行く。
俺の時間が空いた時に俺がスパーリング相手になり、格闘技技術を教える。
まだ体が出来ていないクリンは毎日筋肉痛に悩まされたようだが、格闘技センスはそれなりにあった為、この転向は正解だったのだろうと確信があった。
クリンがパワーファイターに育ったらレイとシーナの前に置いて近距離戦闘と遠距離戦闘のバランスの取れたパーティが出来あがる。
俺は未来を見据えてクリンを育てているのだ。
アレンとスーカは魔法の才能がある。
修練を初めて数日経ったが着々と使える魔法を増やしている。
年も近いからか仲が良く、コンボ技なども工夫して増やしている。
アレンの足りない部分をスーカが、スーカの足りない部分をアレンが…と言う風にバランスの取れたコンビだ。
彼氏、彼女と将来なったとしてもうまく行くだろう。
俺は二人を微笑ましく眺めるのだった。
レイとシーナは正直オールラウンダーだ。
何をやらせても上手い。
俺を入れた最年長組だ。
正直このトリオはかなり優秀だ。
レイとシーナは動けるし、剣も扱えるし、魔法も才能ゼロではない。
その為、前衛を二人に任せて俺は後衛で魔法での支援をすれば良い。
隙のない組み合わせとなっていた。
そんなトリオに中衛、後衛に魔法使い3人。
そうなったらやはり一番欲しいのは盾役だ。
クリンがそこまで成長すれば、このパーティは最強となると考えたのだ。
その為、クリンに将来のパーティの形を伝えた。
お前は将来盾役だと包み隠さず告げた。
「そ、そんなの無理だよ」
と潤んだ瞳で言っていた。
ビビりのクリンだ。
だが盗みの時のように自分が盾になる事が出来る男だと俺は知っている。
クリンは防御力極振りでも一向に構わないが接近戦も出来た方がレイもシーナも動きやすい。
その為クリンには諭すように言った。
「ずっとお前は皆に守られて来た。それはお前がまだ小さいからだ。大きくなったら誰も守ってくれない。今まで守ってくれた兄貴達を今度はお前が守ってやるんだ。お前は男の子だ。大きくなったら姉貴達はお前が守らなければならない。それは男として生まれたお前の宿命で男は女を守らなければいけないんだ。いいな?女を守れる男になれ。出来るか?」
「声/スペシャルスキル:統率者を発動しました」
そう聞くとクリンは決心した面持ちでコクっと首を縦に振った。
それからと言うもの、筋トレも筋肉痛もキツくても文句を言わず毎日頑張っていた。
それを見ているせいか、クリンには一番目をかけてしまう。
この修練期間中で一番相手をしているのはクリンだろう。
そして俺も人の事ばかり気にしてはいられない為、魔法の種類を増やす事と基本的な戦闘能力の向上を目的として日々奮闘していた。
魔物討伐に出かける事もあった。
手近な相手を倒してレベルを上げるのと経験値を積む為だ。
そして食料調達も兼ねている。
魔物が美味いと言う事は分かった為、食べれそうな魔物を見つけて狩るのだ。
たまに巨大蜘蛛が現れたりするが隠れれば難なく逃れられる。
そんなこんなで数カ月修練に精を出して来たが、そろそろ頃合いだろう。
俺も今はLv.58にまで上昇した。
毎日毎日魔法を憶えて基本的な戦闘技術を磨き、死にそうになるまで魔物と戦った。
本当に危ない時もあった。
巨大蜘蛛と戦ってた蜥蜴とは別の個体の蜥蜴に出くわしたり、何度倒しても起きあがってくる骸骨兵。
巨大な熊に巨大な猪、狼に毒蛙。
毎日傷だらけになりながら戦った。
何とか生きていられるのもスーカが回復魔法を使えるようになった事と俺自身回復魔法を憶えた事だ。
俺とスーカの魔力が切れるまで戦える為、瀕死手前でも何とか生きていられた。
この日もゴブリンを相手に修練していると前方から大きな足音が聞えて来た。
その足音は大きな人の足音ではない。
何故なら二足で歩く足音ではないからだ。
無数の足で歩いている音。
その全貌が段々と見えて来ると巨大な体が見え、無数の足が見え、頭部には何個もの眼が赤く光る生き物。
因縁の巨大蜘蛛だ。
レベルも使える魔法も段違いに上がった今の俺達ならやれるだろう。
ゴブリン共はその恐ろしい巨体を見るなり逃げて行った。
俺は口笛を吹き、パーティメンバーを呼び寄せる。
いつもの陣形になり巨大蜘蛛と向き合う。
「ダークネスホールには気を付けろよ」
「ああ、わかってる」
「あれは要注意ね」
「…」
「うん」
「うん」
皆が答える。
「もう逃げ回る弱者じゃないって所を見せてやろう!」
「声/スペシャルスキル:統率者を発動しました」
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