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105.殺刀流

更新お待たせ致しました。

今回はガッツリレイのお話しになります。

楽しんで読んで頂けたら幸いです。

ヘストニア王国とは旧名称。

現在はヘストニア共和国へと変わっている。

前国王がなくなった際、国を継ぐ者がいなかった為である。

ヘストニアは田舎国で自然が多く、長閑な田園風景が広がる聖大陸にある和の国と言った印象の国である。

山々に囲まれており閉鎖的な国で他の国とは殆ど交流はない。

国の総人口は3万人。

若者はこんな国さ嫌だ!と言い、ローシアルへ出る者が多い。

その為国内では高齢化が進んでいる。

だがある一部の道場には若者が険しい山を越え時々やって来るとの事。

その道場こそが殺刀流剣術道場。

どこから噂を聞いたのか、殺刀神ジョセフ・ゲイシーに剣術を習いたいと言う者が少数ではあるが集っているのだ。

そして山を越え、谷を越え一人の若者がこのヘストニアへ到着した。

昼間。

木漏れ日を浴び、山の上から見下ろすヘストニアを見つけ、その若者は少々疲れた口調で言葉を発した。


「やっと着いた」


その若者はレイズ・ワシントン。

茶色い髪に褐色の肌の青年がそこには立っていた。


レイは山を降りると畑で農作業をしている老婆を発見した。

レイはその老婆へ聞きたい事があった為質問をした。


「おーい!ばあちゃーん!」


「…おや。おめさんどこの子らね?」


「いや、俺は他所の国から来たんだ。国の人間じゃなない。ちょっと聞きたい事があるんだけど…」


「おいや!それは御苦労らったねぇ。何が聞きてぇんだね」


「この国に殺刀流剣術道場があるって聞いたんだけど…」


「おめさんも剣士になりてぇんかね?」


「あー…まぁそんな所!知ってんだな?ばぁちゃん!」


「当たり前ぇらてぇ!ヘストニアに殺刀流知らねぇもんはいねてぇ!この道真っすぐ行って国の端まで行けばあるっけ、またその辺のに聞いたらわかるっけ行ってみたらいいよ」


「ふーん。ありがと、ばぁちゃん!」


「頑張れねぇ~!」


レイは老婆に感謝し、教えられた道を只管歩いた。

出会った者、数人に道を尋ねたが皆が道場の事を知っており、親切に道を教えてくれた。

殺刀流剣術道場は国の端の山の中にあり、場所は知っていても国の物が訪れる事は殆どない。

ヘストニアは基本自給自足であり、農作業をしないと国民は食って行けず、国に流れる清流で魚が多少取れる。

その他は山を越えると海があり、国の物が数日を費やし山を越え、海で漁をし国へ持ち帰る。

山には幸い猪やジビエの類は充実している。

野生の果物や野菜も多く食料には恵まれているように思えるが魔物も少なくなく、年寄りに山へ行って食料を取って来いと言う訳にも行かない為国内の食料は常にギリギリの状態である。

剣術を習いたいと言う国民も少ないないが食べる事に忙しく習えないと言うのが現実である。


そして夕暮れ時、レイは殺刀流剣術道場に着いたのである。


「おお、ここか」


レイは早速門を叩く事にした。


「コンコン!誰かいるー?俺レイズ・ワシントン!殺刀神ジョセフ・ゲイシーに用があって来たー!頼もー!」


すると戸が空き、中から顔を覗かせたのは黒髪のショートカットの自分と同い年位ではないだろうかと言う見た目の女の子だった。

レイは少し驚いた。

季節は夏のような温かい気候。

半袖の着物に近い甚平のような服を着た女の子の戸にかけた手には痣のような物が多くあった。

レイが驚いているとその女の子が口を開いた。


「誰?あんた」


「お、俺はレイズ・ワシントン!殺刀神ジョセフ・ゲイシーに用があって来た」


「ああ。弟子志望?今一杯なんだよね。また来年…いや、再来年来てもらえる?じゃ」


そういうと女の子は戸を閉めた。

レイは焦った大きな声で言った。


「ちょ!待てよ!弟子じゃねぇ!」


そういうと再度戸が開いて先程の女の子が怪しい人を見るような目で言った。


「じゃあ何?」


「おっほん!あー…俺はあれだ。決闘を申し込みに来た」


「は!?」


「だから!俺は決闘…」


「さようなら」


そういうと女の子は凄い勢いで戸を閉めた。

レイは少しムカついた。

その為閉まった戸の前で大きな声で叫んだ。


「殺刀神ジョセフ・ゲイシー!!俺と決闘しろーーーー!!!」


その大きな声は周囲に響き渡った。

すると道場の中からバタバタと複数の足音が聞こえた。

中は殺気立っている。

超感覚のスキルで読み取ったレイは戸から一足飛びにバックし距離を置いた。

その直後戸が勢い良く開き、中から十名程の門下生と思われる者達がゾロゾロと出て来た。

道場から出て行く男達に女の子は「バカよ。ほっときなさい」と言うもその声届かず男達はレイを囲むとその中の一人、黒髪で目に掛からない位の長さで少し癖毛、恐らくレイよりは年上の端整な容姿をした男が口を開いた。


「先生に決闘しろとは何事だ、貴様!」


レイを囲んでいる男達は真剣を抜き構えている。

レイがその問いに答えようとした時、道場の上の方から声が聞こえた。


「お前等辞めろぉ」


その声の方向に目をやると一人の黒髪長髪で一本髷を結った髭面の恐らく50代位であろう男が道場の瓦の上にヤンキーのような座り方をして刀を肩に立て掛けてこちらを見ていた。

するとレイを囲んでいた男達が言った。


「「「「師匠!」」」」


レイはその男を見て背筋が寒くなった。

ミカールと対峙した時でさえ感じなかった間隔。

これはメタトロンに出会った時と似た感情。

いや、もしくは別の感情をレイは感じた。

理由はこの距離であればレイのスペシャルスキル:超感覚によってそこに誰かいるのが見ずとも感じられたはずだ。

だがその男は音のし易い瓦の上で音も立てずそこにいると言う事だ。

もし最初からそこにいたとしてもレイが存在を感じ取れない訳はないのだ。

その事実にレイは驚いた。

が、そこで物怖じしないのがレイである。

瓦の上に居る者に質問をした。


「あんたが殺刀神ジョセフ・ゲイシーか?」


「あん?如何にも。お前は何者だ?」


「俺はレイズ・ワシントン!現聖刀神、レイズ・ワシントンだ!」


「「「「「!!!!!」」」」」


「殺刀神ジョセフ・ゲイシー!あんたに決闘を申し込む!」


「…。っくはははははは!!」


レイの言葉にゲイシーは腹を抱えて笑った。

そしてレイに返答した。


「おめーが新しい聖刀神だって!?嘘だろ!ミカールがお前に負けたってーのか!?こりゃ傑作だな!」


その言葉にレイは師匠をバカにされたと感じ怒りがこみ上げた。

が、直ぐにその怒りの火は鎮火した。


「メタトロンが新聖刀神が来るってーからどんな奴かと思ったら!まだ餓鬼じゃねーか!」


「は?メタトロンが?来た?」


「ああ!いきなり着やがったから何の用だと思ったら新聖刀神が俺を訪ねて来る。面白い奴だってだけ伝えでまた帰ってったぜ!」


「何でそんな事…」


「さぁな!久し振りに会ったからあの時の借りを返そうと決闘を挑んだけど無視されちまった!あのメタトロンが面白い奴だとお前の事を言った。俺が再挑戦しようとしたのに無視するような奴がお前には興味を持ってた…。気に食わねぇな。俺の気配すら気付けないこんな餓鬼の方が面白ぇなんてよ」


そう言うとゲイシーは瓦から音も立てず地面に降りた。

そしてレイに近付く。

門下生と思しき男達はその通り道を開ける。

そしてゲイシーはレイを見て言った。


「受けてやるぜ。お前の決闘。殺されても文句言なよ?僕ぅ」


「上等だ、糞爺ぃ」


レイは片方の口角だけ上げて不敵な笑みで答えた。

するとゲイシーは周りの弟子と思しき者達を見て言った。


「お前等死ぬぞ」


そう言われた男達は顔を青くしてそそくさと二人から離れた。

そしてゲイシーは再度口を開いた。


「んじゃ始めるか」


レイはこれは手加減して勝てるような相手ではないとわかっていた。

どういう訳かゲイシーを目視してからは存在を体が認識している。

相当強い事もびんびんと感じるのだ。

達眼を使いたいが達眼を使った事によって逆上させたら危ない。

レイは珍しくビビっていた。

逆境と言うスキルを保有している為、自身よりも強者に対しては闘争心が上がり、闘いを楽しむように戦う事が出来るのだが、このジョセフ・ゲイシーに対してはいつものような気持ちの高ぶりは抑えられているような感覚があった。

だがレイは剣を構えた。

そしていきなり出来るだけ全力で倒しに行こうと言う思考になった。

レイは剣にダークネスを纏い始める。

するとゲイシーは関心したように言った。


「ほう。闇使いか。珍しいな」


何度も言うがこの世界の人間は魔力が低下しており、魔法が使える人間が減っている。

そんな中光属性、闇属性と言った特殊な属性魔法を使える人間は少ないのだ。

このヘストニアでも同じ事が言える。

寧ろ老人が多いだけ他の国よりは魔法が使える者が多い。

それでもこの二属性を使える者は少ないのだ。

続けてゲイシーが口を開いた。


「じゃあ俺も」


そう言うと剣にダークネスを纏った。

レイは改めて剣を握り直しゲイシーに言った。


「行くぞ!」


そういうとレイは高速移動でゲイシーへ一足飛びに向かって行った。

次回はレイ VS ゲイシー後編です。


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