1.Started from the bottom
新作書き始めました。
ちょっと本気で書こうと思います。
よろしくお願いします。
コツッコツッコツッ…固く広い空間に大人数人の足音が響き、その足音は段々近付いて来る。
俺は埃っぽい倉庫の木箱が敷き積み上げられた一角に腰を下ろし、埃っぽいコンクリートの地面を見ていた。
すると数人の足音は俺の手間で止まった。
奴等の靴が視界に入る。
真ん中一番前にピカピカに磨かれた茶色い革靴の奴、左に白と青のバッシュ、右は紺色のスニーカーだ。
誰かは顔を見なくてもわかった。
「Hey!Boss!!(やぁ、ぼす)」
声のした方へ俺は顔を向けた。
やはりだ。
真ん中の茶色い革靴の男はキャム。
左はサンターナ、右はジミーだ。
こいつらはハーレム地区を牛耳らせている、ディプミール部隊だ。
キャムの顔を見て俺はニヤっと笑った。
「Hey bro!What’s up!(やぁ、兄弟。調子は)」
そうキャムに言い、木箱に下ろしていた腰を上げ立ち上がりキャムとハグをした。
するとキャムは
「Nothing much!Just chillin’!(いつも通りだぜ)」と返した。
「Good!Good!(そうか、そうか)」
と返事をし彼を抱きしめた手を離し、俺とキャムはお互いの手の平と手の平をパンパンと2度叩き合い、腕相撲をするような形で手をグッと握り合い、お互いをお互い力強く寄せ合うと手を離し、腕と腕の側面を合わせた。
この一連の流れはキャムと知り合い、兄弟と呼び合う仲になった10年前から変わっていない、一種の挨拶だ。
俺にはキャムの他にもこいつの横にいるサンターナやジミー、それにNY地区の各部署を牛耳らせている奴等と兄弟が大勢いる。
その兄弟の長兄が俺だ。
兄弟と言っても血の繋がりはない。
中には従兄弟だったりする奴もいるが、そんな事は関係なく俺達はファミリーなんだ。
NYを支配するアメリカ東海岸のギャンググループで青がチームカラーのクラップス、それが俺達だ。
そして俺がこのグループの長兄、スタイン・トゥキーだ。
「Oh!(おっと)」
キャムが何かを思い出したかの様に声を出した。
「Was bout to forget!It’s monthly dollars!!Jimmy!!(忘れるとこだったぜ。今月の売り上げだ。ジミー。)」
そう言うと黒髪を編み込んだコーンロールヘアーのジミーが前に出て来て、手にしていた大振りのジェラルミンケースを片手で横に水平に持ち上げ、蓋のロックをもう片手で開けて蓋を上げた。
中には約1000万ドル位のベンジャミンが敷き詰められていた。
この量だと先月より数百万ドル位は多いだろう。
俺は見せられた札束の量に満足をした。
「Good job!Good job!(良くやった、良くやった。)」
そう言いながら三人の顔を見てニヤっと微笑んだ。
三人とも嬉しそうに、そして誇らしそうに俺に笑みを返した。
ジミーは空気を読んだのか、ジェラルミンケースの蓋を閉めてロックを掛け、俺にジェラルミンケースを手渡した。
俺はジェラルミンケースを受け取ると先程座っていた木箱へ腰掛け、横にある木箱にジェラルミンケースを置くと再びロックを外し中を見る。
やはり多いな、流石はディプミールだ。
素直にこいつらの働きには関心をする。
毎月毎月売り上げは上がっており、前月より下回った月はない。
ここ最近で毎月少なくとも100万ドル以上上がっているのだ。
二束位か…そう考えた俺は100枚単位で纏められた札束を二束手に取ると
「キャム!」
と名前を呼び、手にしていた札束二つを奴に放った。
彼は自分に放られた二本の札束を受け取ると、ニヤって右の口角だけ上げ言った。
「サンキューボス!」
「ご褒美だ。ほら、ジミー!サンターナ!」
他の奴等にも二束ずつ放った。
「サンキューボス!」
「愛してるぜボス!」
もらった二人も満足そうな笑みを浮かべている。
「来月も頼むぞ!」
俺が優しい声音で三人に言うと
「Yes! Sir!!(了解しました。)」
と三人か気迫満ち溢れた声が返って来た。
俺も三人の声音と表情を見て、こいつ等なら安心だなと肩を撫で下ろした。
俺達の生業か?
ギャングだぜ?
違法薬の売買は勿論、武器の売買、窃盗に恐喝、裏カジノ経営に地下格闘技場経営。
法に触れるような事ばかりだ。
何でそんな事をするのかって?
俺にはそれしかなかったんだ。
俺が産まれた家は貧乏だった。
家族は俺と母と父。
トレーラーハウスに住み、母は売春、父はヤクの売人をしていた。
父もギャングだが下っ端でヤクの売り上げも殆ど上に持っていかれると言う下も下のギャングスタだ。
そんな父だが家では偉そうで母が売り上げが悪いと機嫌を悪くして酒を飲んでは母を殴る、蹴る。
DVクソ親父だ。
そんなクソ親父も俺が4才の頃、ヤクの売り上げに手を出してギャングの上の奴等に始末されちまったらしい。
DVクソ親父だからな、居なくなって良かったと思った位だ。
母は俺には優しかった。
他人には口悪いし、男とだって取っ組み合いの喧嘩をするような肝っ玉母さんだが俺には本当に優しかった。
「女の子には優しくしないといけないんだよ。わかったかい?」
DVされていた母が良く俺に言い聞かせた言葉だ。
それは未だに俺の中で強く残る教えの一つだ。
だから売春斡旋はするが女に手を出したり、嫌な事を強制したり、そんな事はギャングを作ってからした事はない。
女は守るべき対象であり、悲しませたり、痛めつける対象ではないのだ。
家の近くに住んでいた、気の良いジジイがいた。
小さい頃から何かと遊んでくれる良いジジイだ。
もうこの世にはいないが家族のように好いていた。
俺には友達がいなかったからジジイが友達のような物だった。
そんなジジイが俺に良く友達が出来たらいいなと言っていた。
「スタイン。友達が出来たら大切にするんだぞ。友達は裏切ったらダメだ。」
そんな事を良く言っていた。
それも俺が未だに信念にしている一つの事だ。
だから俺の家族に裏切りはない。
もし裏切るような奴がいればそれ相応の罰を下すだろう。
場合によっては命さえ奪う。
それがこのクラップスのルールの一つだ。
何故クラップスを作ったか?
家は貧乏だったんだ。
母には優しくしてもらっていた。
だが優しさだけじゃ食えない。
母は路上に立ち、客を捕まえていた。
それでも金はなく、カビが生えかけたパンや薄味のスープが殆ど。
たまに肉が食える事もあるが、それは質素な食卓だ。
食えない時は水を飲んで腹を満たした。
俺が5才の頃、いつも遊んでくれるジジイもいない日、暇で家の周りを徘徊していた。
すると人集りが出来ているのを見つけた。
何だろうと思い近付くとそこには子供同士が殴り合っているのを大人が囲んで声援を上げていた。
手には紙幣を握っており、子供の喧嘩に賭けて遊んでいるのだと言う事を悟った。
こいつら狂ってる…子供ながらに俺は周りの大人を嫌悪した。
すると
「おい!お前何才だ?」
無精髭を生やした30代後半位の面をした薄目の黒い肌をした男が俺に聞いて来た。
「5才」
そう答えると男はニヤッと笑みを浮かべた。
「おい!こいつ新しい選手だぜ!ハッハ」
男は振り返り、誰かにそう言うと男の背後から男と同じ位の年齢の黒い色の濃い男がニヤニヤと笑みを浮かべて近寄って来た。
「よし!お前次出ろ。」
そう俺に言うと俺の手を強引に掴んで大人に囲まれた丸いスペースに連れ出された。
先程の試合は決着が付いた後のようだ。
俺が恐怖を感じていると大人の間から同じ位の年齢の男の子が前に出て来た。
「お前の対戦相手だ。頑張れよ。」
黒い色の濃い肌の男が俺にそう言い残して、大人達が囲む円の外へ出て言った。
「俺右だ!」
「俺は左手!」
「私左よ!」
周りの大人がベットを始めたようだ。
なんなんだこれ…俺が周りの大人を不安な顔付きで見回していると
「おい!」
俺の対戦相手が話し掛けて来た。
視線を対戦相手に戻すと
「ボッコボコにしてやる。覚悟しろよ?」
そう言われた俺は不安だった気持ちが急にムカムカした気持ちになって来た。
相手は俺より痩せ細っており、体格も俺よりやや小さい。
こんな奴に舐められた言葉を言われたからなのか腹が立って来た。
俺の顔はあからさまに不機嫌になった。
すると
「カーン!!」
試合開始のゴングが鳴った。
奴は俺の顔目掛けて拳を振り下ろして来た。
だが俺はガードするでもなく、頭を下げ、お辞儀の姿勢になり前へ走った。
すると俺に殴りかかって来た奴の鳩尾に俺の頭突きが炸裂した。
奴は「うっ!」と声を上げた。
よし、効いた。
そう確信した俺は勢い良く頭を上げた。
俺の頭突きが奴の顎にヒットした感触が俺の後頭部から伝って来る。
何故ならとても痛かったのだ。
する奴は尻餅を着いた。
俺は今だ!と思い、奴の上に跨り、奴の顔をポコポコと何度も殴ってやった。
「ストップ!ストップ!」
奴を殴り続けている俺をヒョイと誰かが持ち上げた。
先程の黒い色の濃い肌の男だ。
「お前の勝ちだ。」
彼はそう言うと周りから歓声が上がった。
「わぁぁぁ!!」
俺が勝った…その事実に我に帰る。
男が俺を下ろした。
ふと対戦相手の奴に目をやると泣きもせずにゆっくりと体を起こす所だった。
「あ、ごめん」
俺は対戦相手の奴に謝った。
「は!お前強いな!」
参ったと言うような微笑を浮かべ奴は立ち上がり、俺をじっと見つめる。
「俺はレイモンだ。お前は?」
「俺はスタイン。」
「スタインか。よろしくな、スタイン」
そう言うと奴は右手を俺に差し出して来た。
「ああ」
差し出された右手を握り返した。
これが親友レイとの出会いだった。
レイと見つめ合っていると、トントンと肩を叩かれた。
振り返ると先程の黒い色の濃い肌をした男が俺に紙を手渡して来た。
「お前の取り分だ。」
渡された紙を見ると、それは5ドルだった。
勝った者には取り分として5ドルが渡されるようだ。
俺はこの日から何度も試合をした。
負ける事もあったがある程度やり続けると負ける事は一切無くなり、俺は近所のチャンピオンになった。
勿論歪み合う仲になった奴もいたが、殆どの奴は俺を認めてくれた。
そして俺を中心としたキッズグループが出来た。
それがクラップスである。
毎日仲間達と集まって悪さをした。
子供の喧嘩を賭けるような治安の悪い地域だ。
悪い事は大体した。
時には仲間を傷付けた大人のグループに報復すらした。
そんな事をしていると地域で俺達を知らない奴はいなくなり、仲間もどんどん増えた。
ギャングから仕事を依頼されるようになり、金も仲間もどんどん増えた。
仕舞いには安い給料で働かせた上のギャンググループを潰して俺達が町を牛耳るようになった。
俺達の勢いは自分達の町だけでは足りず、隣町を支配し、次はまたその隣町、またその隣…と繰り返し行く内に俺達はアメリカの東海岸を制覇した。
今では北と西と南で睨み合っている。
ここまで来るのに最初のキッズグループのメンバー殆ど居なくなってしまった。
抗争で死んだり、家庭が出来てグループを抜けたり、それぞれだ。
キッズグループからいるのは俺とレイの二人だけだ。
月に数億と俺には金が入って来るようなった。
今は産まれ育ったトレーラーハウスなんてどこにいったのかもわからない。
豪邸を構え、母と二人暮らしだ。
嫁は作らない主義だ。
ギャングだからな。
いつ死ぬかもわからなければ俺のせいで殺されてしまうかも知れない。
そんなのは可哀想だろ。
ある日の夜、幹部だけで集まりパーティーを開く事にした。
会場は俺の持っているナイトクラブだ。
何台か車はあるが、今日はシルバーのポルシェで行くと決めていた為家を警備している部下に玄関まで持って来させ、乗り込み出掛けた。
車内で流れるのはお気に入りのDJのミックスCD。
Hip-Hop,R&B,EDMなどなどだ。
そして赤信号…流石に追われてる時意外は無視はしない。
無闇に事故りたくないからな。
赤信号で停止し、信号待ちをした。
この日は夏が近い春で、窓を開けて入って来る風が、丁度良い温度だった。
今日も楽しいパーティーになるといいな…そんな事を考え、流れて来るブラックミュージックにテンションが上がっていた。
すると視界に大きめな黒いSUV車が入って来た。
SUV車も赤信号の為停止した。
二車線の為隣に止まろうが何の不思議もない。
何の不思議もないのだが、俺は非常に危険な雰囲気を感じた。
ふとSUV車の方に目を向けた瞬間、見に覚えのない黒人がこっちに向かって自動機銃を構えていた。
不味い!!そう思った俺は即座に車を発進しようとした。
が、反応間に合わず直ぐに良い物を数発もらってしまった為車を発進出来ずにモロに全弾貰ってしまったようだ。
意識がなくなると直ぐに意識が戻った。
「貴方の現状の個体情報を別の世界へ転生します。個体情報を解析中。個体情報を解析中。」
AIのような機械的な声が聞こえた。
それと俺の体は七色のトンネルのような空間を前に進んでいた。
前方100メートル先は真っ暗で何も見えない。
「解析完了。5つのスキルを手に入れました。」
「シンプルスキル:強力を獲得」
「シンプルスキル:強固を獲得」
「シンプルスキル:高速を獲得」
「ユニークスキル:リーダーを獲得」
「ユニークスキル:魅了を獲得」
「ユニークスキル:リーダーと魅了を獲得した事により、スペシャルスキル:統率者を獲得しました。」
何を言っているんだ…俺はまだ頭が朦朧としていた。
俺は死んだら地獄行きだろうと思って生きていた。
だが今はどうだ…全く想像していた地獄とは違ったのだ。
しかも聞こえて来る変な機械の声…これは一体…そんな事を思っていると、再度機械の声が言った。
「転送先はグレートバースに決まりました。転送開始します。5秒前。4、3、2、1…転送します。」
俺は何処に行くんだ…頭の中で考えはするのだが体は動かず、されるがままだ。
すると急に先が明るくなり出し、段々と周りが明るくなって行く。
あまりの眩しさに俺は目を閉じた。
すると足と尻に強烈な熱さを感じた。
「アッ!!」
ビックリして飛び上がると俺は砂漠の真ん中に立っていた。
こ、ここは…周りを見渡しても一面砂漠…上を見上がるとかんかん照りの太陽が眩しい。
そして肌を刺す紫外線を感じ、ずっと立っていると熱さを感じる足の裏。
藁で編まれたようなサンダルのような靴を履いていた。
取り敢えず歩かない事には足も限界が来そうだ…俺は周りをグルっと見てから勘で前方へ歩き出した。
それから何時間歩いたのか…熱いし喉は乾いた。
なのに飲み水すら持っていない。
それに気付いた事だが、俺は薄い布を体に巻いているだけで下着もない。
それより驚いたのは手の小ささだ。
俺は子供になっているようだ。
何の冗談だろうか…それとも悪い夢か…母さんは大丈夫だろうか…兄弟達は…そんな事を考える事で気を紛らわせながら歩いた。
歩いて歩いて、体感では5時間位か…ようやく町が見えた。
フラフラになりながら町に入り、水を探した。
だが蛇口は何処にもなく、水の音は待ちを歩く大人の腰に付けてある水筒のような物からしかしない。
町も随分旧式な家が多く、現代から来た俺には時代すら違うように思えた。
喉がカラカラ、お腹ペコペコ。
大人に助けを求めても誰も助けてくれなかった。
汚い!と罵られ、蹴られたりした。
行く宛もなく、歩くのが辛くなり、せめて日の当たらない所を求めて薄暗い路地裏に入り倒れ込むように地面に手を付いた。
すると男の子の声がした。
「お前大丈夫か?水…いるか?」
声のする方に顔を向けるとそこには汚い格好をした男女の子供が五人程いた。
またここからかよ…俺は二度目の人生も底辺からのスタートをした。
面白かったですか?
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