どんどん背が縮んでいる。
■
<数か月後>
どんどん背が縮んでいる。買った服がもうブカブカだ。
オレがカナタを見つけなかったらもっと若返ってたのかと考えると恐ろしい。
昨日覚ていたことを忘れている……というわけではない
語彙力、感情の起伏が制御できなくなっている。簡単に言えば弱虫でわがままだ。
カナタは身体が小さくなる代わりに虚無状態からだんだん反応がよくなってきた。
幼児化するに伴いどんどん呂律が怪しくなって、語彙が減る代わりに感情が豊かになる。いかがなものかと思うが、それでも反応がきちんと返ってきたり、話しかけてくれるようになるのは嬉しいと思ってしまう。
「んん~~」
「カナタ? お腹空かないか?」
「…………」
ベッドの中のカナタ。もぞもぞと動くが返事がない。寝ぼけ眼なのだろうか?
顔を覗くと目が開いている。おでこに手を当ててみるが熱があるというわけではないようだ。無理に起こすこともないと思い、そっとしておいた。
その間、アカは子育てについてのサイトをめぐっていた。
急に布団から這い出てズボンを脱ぎ出した。何事かと思ったら、お漏らしをしたから気持ち悪かったということらしい。
■
<数日後>
「ただいま~」
「…………」
カナタからの返事はない。
アカは買い物から家に返ってきた。部屋用の義足に履き替え室内に入る。
カナタはというと、買い物に出るときと同じ態勢でテレビをボーっとみていた。
さて、帰ってからすべきこと。最優先事項はカナタに栄養を取らせることだ。今日はどうだろうかと期待薄ながらも傷つけた。カナタの口元に血を持って行ったが口を開かない。
「やー」と言ってぷいっとそっぽを向いた。
(今日もダメか……)
このままじゃずっと小さいままじゃないか……。
無理やり飲ませるしかないのかとアカは決意する。
■
<数日後>
――ピンポーン
「お届け物で~す!」
宅配便がやってきた。ネット通販で買えるものはそうしている。
「カナタ! ほら見てみろ~」
「?」
カナタの目の前で箱から出し梱包を取り除くと現れたものは、しろくまのぬいぐるみである。全長35センチ。『抱き心地バツグン!!』というウリだった。
テレビの子供向け番組「しろくまのスズ」をカナタが見たとき、今まで一切興味を示さなかった画面にくぎ付けになっていた。
このキャラクターが好きなのかなと思い、ぬいぐるみを買ってやった。
「わ~~!! スズだ!!」
言うや否や、ぬいぐるみに飛びつくように突進してきた。記憶力も低下したカナタが覚えている『スズ』というキャラクター。恐るべし。