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【死にゆくはずの暴走ヴァンパイア(幼児化吸血鬼)】


 吸血鬼は美人である。絵空事のようだがそれは正しい。カナタも見事なまでの美しき吸血鬼であった。


 カナタは何日何週間も何か月何年も血を吸っていなかった。

 何百年も生きた生。仲間を増やしてやりたいこともない。今ここに朽ち果てようとしていた――。



「……んん……」

「よう、起きたか?」

「……あれ……おれ……生きてる……なんで?」

「なに、覚えてねえの?」

 そう言ったアカは、事のいきさつを話してくれた。


 アカはコンビニへ買い物の途中、おれと遭遇したらしい。

 なんでも、子供に食らいつこうとしていた間に割って入ったらしい。少し吸われたら大人しくなったところを殴って気絶させたそうな。


 血に飢えていた。

 理性では死ぬ気だったのに、本能が勝手に血をの止めたのか。こりゃ飢え死するには拘束されなきゃ無理そうだ……。



 考え事から現実へ戻り、子供を助けてくれた男を上から下へ初めてきちんとみる。するとどうしたことだろう、男の二の腕から下が無かったのだ。

「おまえ……片腕……。おれが食った?」

「いやいやちげぇよ。こりゃ元からだ」

「そ、そうか……よかった……」

カナタは、安心感からそっと息を吐いた。


「どんだけ安心してんだよ。吸血鬼って血を吸うだけじゃねえの?」

カナタの様子を見て少し笑いつつ、疑問を投げてきた。


「その認識で間違いねぇ」

「じゃあなんて自分が食ったなんて思ったんだ?」

「…………」

 このままの足れ死ぬと思ったあの時、あの瞬間――。

 カニバリズム(人肉嗜食)衝動が芽生えたからだ。『人間を食べたい』と確かにそう思った。

 アカが割り込まなかったら、おれは子供を食っていたんじゃないか――。


「オレァもともとバンドマンだったんだ。んで片腕失った時にやめた」

 アカは一向に喋らないカナタにしびれを切らしたのか、沈黙を破った。

「そ、そうなのか……」

 片腕を失ったからやめざる負えなかったのか……。


「んでその時稼いだ貯金で食ってる。いま無職」

 あっさり身の内を話すアカの口調は、過去をまるで引きずっていないように感じた。



「つーか普段は義手つけるぜ。カッケーやつ」

 続いてアカが言った。

 

 スムーズに装着する場面まで見せてくれたそれは、能動義手というものらしい。腕にピッタリとフィットした義手はオーダーメイドで作られたようで、確かにカナタが遭遇したよりも前からそうであったことをうかがわせた。



「そえばおれ、おまえに血、吸われたんだけど。たしか……吸血鬼って人間も同族にするだっけ? え、俺、人間じゃなくなった?」

「……いや、人間だ。吸血鬼は同族を作れる。自分の血を分けたらな」

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