ジャガイモ畑と平和な日々
まったり
ザクリ
ザクリ
「…ふぅ」
「すまないなぁ、弟と二人でやってたから助かる」
今日はライオン先輩のジャガイモ畑の拡張のお手伝いをしている。
ウルフの家から川を上り、林を超えた先
土で出来たライオン先輩の家がある。
その裏手にあるのがジャガイモ畑だ。
肉を断ったライオン先輩の主食らしい。
もう十分広い畑に見えるけど、畑はずっと同じ所だとダメになるとの事で
手が空いた時はちょっとずつ周りを耕し、来年か再来年に仕えるようにしているようだ。
「草原ではやらないが、結構農業やってる所はあるんだ、デカい国はみんなやってるな」
ライオン先輩は傭兵として世界を旅していたらしいので
色々と詳しい。
ウルフは川の上流にある岩山と、更に上流の湿地帯しか知らない。
この草原も今年になって出て来たのでまだまだ新参だ。
「…そういえば大豆かったところも国なんですか?」
「あぁ牙豚の国だな。あのデカい森が一つの国なんだ…あそこは木の実か、果実を作ってるな」
「果実!おいしい!」
「デカい国は色々便利だが、住むにはめんどくさい…まぁ、一回行ってみるのは楽しいぞ」
ザクリ
ザクリ
ザクリ
ザクリ
ザクリ
ザクリ
ザクリ
ザクリ
ザクリ
ザクリ
その日はフライドポテトというのをご馳走になった!旨い!
肉を食べていた時は知らなかったけど
肉以外にも美味しい物が結構ある。
「先輩は肉食べたくなったりないですか?」
「うーん肉はないが……卵だな…」
「え?」
「コレステロールがな…うん…ぐぬぬん…」
先輩の話は難しい、色々と知らない言葉が多い。コレステロール
なんだろう…まぁいいか。
「午後はちょっと匂うから先に謝っとく」
「…え?」
午後は凄かった。
ライオン先輩は食事の残りを土に埋めてるのだけど
一月に一回場所をずらしてるらしい
そして今回は3カ月前に埋めたところを掘り返した。
プーン
「ホババババババ」
「これをな、畑に混ぜ込むんだよ」
あと、灰やらなにやらも混ぜた。
うん…畑って大変だ。
あっという間に日がくれた。
お前もやらないかって事でジャガイモを何個かもらったが…うーん
めんどくさい。
とりあえず、ちょっと食べて家の裏に投げといてみよう…うん。
…さて
明日は魚釣りにいくかな。
干物も少ないし…うん
久々に湿地帯にある湖に行ってみるか。
コンタの家に遊びに行こう。
ウオォオオオオオオオオオオオオオン!
翌日
湿地へ行くために実家<岩山>の近くを通った。
…しかし、一度出た男は帰らないのが牙族の鉄の掟だ。
けっして…けっして岩山には足を踏み入れない。
「あらぺリコじゃないの?おかえりー」
「わー見つかった」
岩山には入ってないけど近くを通ってたらお母さんがいた。
頭が8つに分かれた大蛇と戦って勝った所みたいだ。
「あらら~家に寄りなさいよ、ご飯あるわよ…ほら…」
母は尻尾を振りながら蛇のしっぽを加えて引きずってる
うーん
「いいよ!俺も男だ!誇り高き牙族の!」
「あらー、じゃあお弁当あげるわ」
「いいよ!」
なかなか母は引き下がらない。
やたら何か食わせようとしてくる。
「………!」
ブンッ!
唐突に8首大蛇を空中に投げた!尻尾から頭の丈は母ウルフのザっと5匹分か…
ダン!
ヒュババババ!
ボトトト…ボて!
「あーーー運びやすいようにバラシてたらうっかり縄張りの外に一番おいしい所がぁあああ!」
「………えぇ」
「ああーー脂がタップリのってて美味しい所なのに縄張りの外なんてぇええ!お母さんうっかり!」
「ありがとうございます!おばさん!」
「あらコンタくん!」
「前のカエルのお礼ですね!やったー!」
「そうよそうよ」
「……えぇ」
「先輩そうゆうことですから、僕から先輩に前のお茶のお礼でご馳走しますよ」
「コンタくん凄い!天才!」
「うーん…あ」
ウルフはうっかり転んで
背中の袋からジャガイモを転がした。
「あー 畑で獲れたジャガイモがー!焼くとおいしくなる芋という食べ物がぁああ!」
……
…………
…………………その夜
「なんで私を呼ばなかったんだ!」
「えーだって、アナタは牙族の誇りだし好きだし」
「誇りと息子なら息子のが大好きに決まってるだろ!何考えてるんだ!」
「えぇえぇえぇ!?」
「いいかい?縄張りの外を見回り中にばったり、縄張りの外の息子と会う…これはセーフだ?」
「お肉あげるのは?」
「うーーん」
パチパチと蛇の肉が焼けていく。
ジャガイモもとりあえず焚火のソバに転がしてある
ハフハフ
「セーフ!」
……そんな平和な数日だった。