コンタとお月様の詩
主要メンバーがなかなかそろって参りました。
さて
草原の西
川の上流には山があり
その山の向こうには大きな大きな山脈がある
天高く聳え
空行く雲さえ遮る壁
「天止めの山脈」山脈にぶつかった雲は雪にかわり…
少し離れたところでは雨になる。
その雨が溜まりに溜まった湿地、沼地、湖と森
そこに一匹の狐がいた。
ひくひくと風に髭を震わせ
狐は川を下り
小高い岩山に上り巨大なドラゴンの骨を見つけた。
その骨のあばらの辺りから白い煙がもうもうと上がっているので
探している人物は見つかったようだ。
「おばさんコンにちわー」
「あらコンタくん」
出迎えたのは灰色の毛を持った狼のおばさんだ。
このドラゴンを狩った辺りでも有名な牙族の英雄だ。
「おお、コンタかー」
「おじさんコンにちわー」
パチパチと燃える火の面倒をみているのは狼のおじさん
おばさんの旦那さんで、先輩のお父さんだ。
先輩と同じ真黒な毛並みで、櫛に刺したネズミを焼いていた。
「食べる~?」
「頂きますわーい!」
「フフフ」
今日は沼で獲れた蛙の御裾分けにやってきたのだ。
二人の息子、先輩とは小さい時からよく遊んでいて
蛙やトカゲと取り方を教わったものだった。
「先輩戻ってこないんですかね?」
「うーん、男が一度旅だったら、帰らないのが牙族の掟だからなぁ」
「古臭いわねぇ、何万年前の話よ」
この家族は非常にまったりしていて
狼なのに気が抜けている。
そこがとてもいい感じだ。
「僕が様子を見てきましょうか?」
「いいの?やったー!」
「あらアナタも気にしてたのね~」
「当然だろ?あいつは俺ににて虚弱だからなぁ」
「あらあら、でもあなたに似て賢いわよ」
「てへへへ」
うん、この家族は良い感じだ。
狐のコンタは川を辿って草原に行く事を決意する。
先輩の事だから、多分3日も行ったところで暮らしてるだろう
水場の河原を辿っていけば、どこかで匂いを見つけられるはずだ。
「じゃぁーねー、あの子によろしくー」
「俺は心配してなかったって事でな!釣り竿とか持ってくか?いいか?」
てとてとてと
岩山を下り
川を辿って
小高い丘を2つ超えた。
林を超えた。
変な小屋があった。
匂いがした。
「先輩近い!!」
旅立つと宣言してまさか半日圏内でいける所にいようとは…
さすが先輩!ほかの狼達とは一味も二味も違う。
「なんか気が抜けててほっとするなぁー」
先輩の匂いのする小屋に向かう。
凄い…丘の上の土を抉り、石と砂利を敷き詰めて、木の枝で作ったのだろうか
壁や屋根まで作ってある。
…一人でこれを?木を見るとロープで縛られている。
おじさんが森のツタを水でフヤカシ、作っていたロープだ。
先輩と一緒に教わってみたけど繊細で根気のいる作業だった。
「すごいなーさすが先輩だ!」
…
……
………
中から気配がする!やった!タイミングは良かったようだ!
「コンにちわー遊びにきましたよ~!」
「あぁ!コンタ!おひさ!」
「わー誰?黄色い狼さん?」
「zzz」
「くさい」
…なんかモフモフしてるぅうううううううううううううううう!?
「ど…どうしたんですか?先輩?」
「あぁ、なんだか子供預かる仕事始めたんだよ。子供と遊んでると木のみとか美味しい草とか貰えるの」
「働いてるんですか!?」
「えぇ?当たり前だろ?社会を舐めるんじゃないぞ?」
…なんて事だ、のほほんまったりしてる先輩、全然遠出もしてなかった先輩に安心
してしまっていたけど…大間違いだ。定職についていようとは!
「え…っとあれ?これなんです?」
「あぁ、適当に座ってくれよ、自作で作った椅子とテーブルだ」
「何それ凄い!」
「あ、ちょっとまってて今お茶入れるから」
凄いよ!
凄いよ先輩!
何か解らないけど凄いよ!
ザッザッ
「おーい、畑で獲れた芋もってきたぞ」
「わーライオン先輩ありがとうです」
「えええええええええええええええええええええええ!?」
…凄いよ!え何?ライオンって近づいていいの?
えっえっ
「コンタ挨拶してくれよ、こちらおいらの先輩、つまりコンタの大先輩だぞ?」
「うぇえええ!?よよろしくお願いしますこここコンタです!」
「おう、ウルフのダチかよろしくな」
グツグツグツ…
「あっお土産に蛙もってきました!」
「ワ~お肉だ!」
「ガハハ、カエルと鳥とドラゴンはコレステロール低い!食わせてくれ!」
初めて食べた。
香草とやらと焼いた蛙
ピりリとした木の実をまぶした蛙
付け合わせのジャガイモ
土の上でなく
テーブルの上での食事。
そしてお茶
「先輩すごいですよ!」
「ハハハ、苦労したんだよ色々」
…
草原の悪魔との戦い、敗北
そして再戦、勝利
河原の主との死闘と、それを奪いにきた百獣の王との戦い。和解
北東の森への数カ月の遠征、牙豚族とのギリギリの駆け引き
「ガハハハお前の話面白いな」
「いやーちょっともっちゃいましたね」
すげーよ
先輩すげーよ
…そんなこんな、先輩に一生ついていこうと誓う
コンタであった。
「まじでか!ライオンと友達!完全にかーちゃんの血だな!」
「フフフ…あなたの器用さとわたしの強さ!あの泣き虫が立派に!」
岩山のおじさんおばさんに伝えると喜んでいた。
「え?家持で定職ついてライオンと友達で料理上手なの?なにその優良物件」
家に帰って話すと妹食いついてきた。
うーん
「多分性格あわないよ、先輩のんびり優しいから」
「むしろ好感度あがるんだけど」
コンタの手には先輩の作った釣り竿が握られていた。
おじさんの作った釣り竿を届けたら
先輩が作った釣り竿を頂いた形だ。
「明日から釣りを趣味にしてみようかなー」
「わー美味しい魚とってね!美味しくて大きいの!」
うーん、どうにもこの妹は食いつきが良すぎる
お兄ちゃん心配。
「…さて、寝るかな」
…コンタには一つの習慣がある
寝る前に森の木に登って月に吠えるのだ。
先輩を真似して始めたのだが、なかなかどうして続いている。
コオオオオオオオオオン
コーーーーーーーーーーーーン
コンコン…あ- あああ♪
♪
お月様ころころ夜空を転がり
東から飛び上がって西に落ちる
毎日休まず光ってくれる
ありがとうね
って言っても多分解らないけど
ありがとうね
おやすみなさい
「…よし!今日はなかなかいい詩が出来た!」
「むにゃむにゃむにゃ…魚うまひむにゃ」
…コンタは先輩に憧れていたので
よく先輩の真似をした。
けれどもそれじゃ悔しいので、ちょっと工夫を加えるのだ。
「フフフ…いつか先輩に凄いって言わせてやる!」
こうしてコンタの一日は終わった。
日帰りで行って来れてビックリだった。