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ベジタリアンウルフ  作者: 前歯隼三
草原の生活編
7/10

コンタとお月様の詩

主要メンバーがなかなかそろって参りました。

さて

草原の西

川の上流には山があり

その山の向こうには大きな大きな山脈がある

天高く聳え

空行く雲さえ遮る壁

「天止めの山脈」山脈にぶつかった雲は雪にかわり…

少し離れたところでは雨になる。

その雨が溜まりに溜まった湿地、沼地、湖と森

そこに一匹の狐がいた。


ひくひくと風に髭を震わせ

狐は川を下り

小高い岩山に上り巨大なドラゴンの骨を見つけた。


その骨のあばらの辺りから白い煙がもうもうと上がっているので

探している人物は見つかったようだ。


「おばさんコンにちわー」

「あらコンタくん」


出迎えたのは灰色の毛を持った狼のおばさんだ。

このドラゴンを狩った辺りでも有名な牙族の英雄だ。


「おお、コンタかー」

「おじさんコンにちわー」


パチパチと燃える火の面倒をみているのは狼のおじさん

おばさんの旦那さんで、先輩のお父さんだ。

先輩と同じ真黒な毛並みで、櫛に刺したネズミを焼いていた。


「食べる~?」

「頂きますわーい!」

「フフフ」


今日は沼で獲れた蛙の御裾分けにやってきたのだ。

二人の息子、先輩とは小さい時からよく遊んでいて

蛙やトカゲと取り方を教わったものだった。


「先輩戻ってこないんですかね?」

「うーん、男が一度旅だったら、帰らないのが牙族の掟だからなぁ」

「古臭いわねぇ、何万年前の話よ」


この家族は非常にまったりしていて

狼なのに気が抜けている。

そこがとてもいい感じだ。


「僕が様子を見てきましょうか?」

「いいの?やったー!」

「あらアナタも気にしてたのね~」

「当然だろ?あいつは俺ににて虚弱だからなぁ」

「あらあら、でもあなたに似て賢いわよ」

「てへへへ」


うん、この家族は良い感じだ。


狐のコンタは川を辿って草原に行く事を決意する。

先輩の事だから、多分3日も行ったところで暮らしてるだろう

水場の河原を辿っていけば、どこかで匂いを見つけられるはずだ。


「じゃぁーねー、あの子によろしくー」

「俺は心配してなかったって事でな!釣り竿とか持ってくか?いいか?」



てとてとてと


岩山を下り

川を辿って

小高い丘を2つ超えた。

林を超えた。

変な小屋があった。

匂いがした。


「先輩近い!!」


旅立つと宣言してまさか半日圏内でいける所にいようとは…

さすが先輩!ほかの狼達とは一味も二味も違う。


「なんか気が抜けててほっとするなぁー」


先輩の匂いのする小屋に向かう。

凄い…丘の上の土を抉り、石と砂利を敷き詰めて、木の枝で作ったのだろうか

壁や屋根まで作ってある。

…一人でこれを?木を見るとロープで縛られている。

おじさんが森のツタを水でフヤカシ、作っていたロープだ。

先輩と一緒に教わってみたけど繊細で根気のいる作業だった。


「すごいなーさすが先輩だ!」


……

………


中から気配がする!やった!タイミングは良かったようだ!


「コンにちわー遊びにきましたよ~!」


「あぁ!コンタ!おひさ!」

「わー誰?黄色い狼さん?」

「zzz」

「くさい」


…なんかモフモフしてるぅうううううううううううううううう!?


「ど…どうしたんですか?先輩?」

「あぁ、なんだか子供預かる仕事始めたんだよ。子供と遊んでると木のみとか美味しい草とか貰えるの」


「働いてるんですか!?」

「えぇ?当たり前だろ?社会を舐めるんじゃないぞ?」


…なんて事だ、のほほんまったりしてる先輩、全然遠出もしてなかった先輩に安心

してしまっていたけど…大間違いだ。定職についていようとは!


「え…っとあれ?これなんです?」

「あぁ、適当に座ってくれよ、自作で作った椅子とテーブルだ」

「何それ凄い!」

「あ、ちょっとまってて今お茶入れるから」


凄いよ!

凄いよ先輩!

何か解らないけど凄いよ!


ザッザッ


「おーい、畑で獲れた芋もってきたぞ」

「わーライオン先輩ありがとうです」

「えええええええええええええええええええええええ!?」


…凄いよ!え何?ライオンって近づいていいの?

えっえっ


「コンタ挨拶してくれよ、こちらおいらの先輩、つまりコンタの大先輩だぞ?」

「うぇえええ!?よよろしくお願いしますこここコンタです!」

「おう、ウルフのダチかよろしくな」


グツグツグツ…


「あっお土産に蛙もってきました!」

「ワ~お肉だ!」

「ガハハ、カエルと鳥とドラゴンはコレステロール低い!食わせてくれ!」


初めて食べた。

香草とやらと焼いた蛙

ピりリとした木の実をまぶした蛙

付け合わせのジャガイモ


土の上でなく

テーブルの上での食事。

そしてお茶


「先輩すごいですよ!」

「ハハハ、苦労したんだよ色々」


草原の悪魔との戦い、敗北

そして再戦、勝利


河原の主との死闘と、それを奪いにきた百獣の王との戦い。和解


北東の森への数カ月の遠征、牙豚族とのギリギリの駆け引き


「ガハハハお前の話面白いな」

「いやーちょっともっちゃいましたね」


すげーよ

先輩すげーよ


…そんなこんな、先輩に一生ついていこうと誓う

コンタであった。



「まじでか!ライオンと友達!完全にかーちゃんの血だな!」

「フフフ…あなたの器用さとわたしの強さ!あの泣き虫が立派に!」


岩山のおじさんおばさんに伝えると喜んでいた。


「え?家持で定職ついてライオンと友達で料理上手なの?なにその優良物件」

家に帰って話すと妹食いついてきた。

うーん


「多分性格あわないよ、先輩のんびり優しいから」

「むしろ好感度あがるんだけど」


コンタの手には先輩の作った釣り竿が握られていた。

おじさんの作った釣り竿を届けたら

先輩が作った釣り竿を頂いた形だ。


「明日から釣りを趣味にしてみようかなー」

「わー美味しい魚とってね!美味しくて大きいの!」


うーん、どうにもこの妹は食いつきが良すぎる

お兄ちゃん心配。


「…さて、寝るかな」


…コンタには一つの習慣がある

寝る前に森の木に登って月に吠えるのだ。

先輩を真似して始めたのだが、なかなかどうして続いている。



コオオオオオオオオオン

コーーーーーーーーーーーーン

コンコン…あ- あああ♪



 ♪

  お月様ころころ夜空を転がり

  東から飛び上がって西に落ちる

  毎日休まず光ってくれる


  ありがとうね

  って言っても多分解らないけど

  ありがとうね

  おやすみなさい



「…よし!今日はなかなかいい詩が出来た!」


「むにゃむにゃむにゃ…魚うまひむにゃ」



…コンタは先輩に憧れていたので

よく先輩の真似をした。

けれどもそれじゃ悔しいので、ちょっと工夫を加えるのだ。



「フフフ…いつか先輩に凄いって言わせてやる!」



こうしてコンタの一日は終わった。

日帰りで行って来れてビックリだった。

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