豚の国と畑の肉
ふむふむ
ピョピョピョピョ
チュチュチュン
ピー
ピー
第一印象は鳥の多さだ
草原と違い
木々が茂っているので
至る所から声が聞こえる
ウルフは草で編んだカバンを背負い
草原の北東へ来ていた。
家を出て三日も歩くと小高い丘があり
そこを上り切ると草原は終わり…眼下には地平線まで森が続いている。
ライオン先輩に教わった通りの光景だ。
くんくん
「ここに畑の肉があるんだな」
“畑の肉”その名前を聞いてから涎が止まらない
あぁ、肉ぅう肉ぅう!
ウルフはスキップをしながら丘を下る
♪
お肉にくにく お肉にく~
下りると小川があり、探すと下流に石の橋があった。
♪
お肉にくにく お肉にく~
「はいはい、止まって…あなたの目的は?」
「はいお肉です!」
橋を渡ろうとしたら大きな牙豚さんがいた。
「肉…うーん、あッなんか背負ってるけど?」
「はい!交換用に魚の干物もってきました!」
牙豚さんはちょっと川向こうに引っ込んで、仲間の角ウサギと話している
「はいいいよ、市場までだらかね。森には入らないでね」
「はーい!」
草原の北東の森は豚達の国だ
小さい時に父さんから聞いた気もする。
自分が林のおサルさんと魚や木の実を交換した感じの事をよくしているらしく
交換したい人たちの集まりを「市場」と言うらしい。
…さすがライオン先輩は物知りだ。
とりあえず、魚の干物と畑の肉を交換しないと…
「畑の肉は乾いた土の色で、小さな木の実みたいな見た目って言ってたけど」
くんくん
それっぽいのを持ってる豚のおっさんが居た。
「お肉ください!」
「ブチ殺すぞ?あぁん?」
…うーん、なんか怒らせた。
「あっ…畑のお肉下さい!」
「あ…なんだなんだ、お客か…狼かと思った」
店主のおじさんはそういうと、石のついた木の棒を地面に下ろした。
なんなんだろう。
「んで…何と交換だ?」
「えーっと…はい!」
「うぉお前歯魚の干物か!わかったわかった!ほい」
「わーい!」
「いやぁ、獅子王の兄弟がこなくて困ってたんだ。
いきつけの居酒屋のメニューからも消えちまってな」
「獅子王?」
「あぁ、ライオンの兄弟よ」
「あーライオン先輩!」
共通の知人が居たのでちょっと話が盛り上がり
打ち解ける事が出来た。
どうやらライオン先輩の弟が釣った魚は
先輩が干物にしてここで色々交換していたらしい。
弟さんが居なくなって先輩も困っていたけども
ここの人達も心配していたようだった。
「海に行って行方不明か~、海はおっかねぇからなぁ~」
「うーんなんでそんな所いったんだろう」
リュックいっぱいの干物と畑の肉を交換して
ウルフは岐路についた。
リュックはずっしりと重くなって、丘を登る時心が折れかけた。
「フフフ…でもお肉も手に入ったし!ウフフ」
草原の白い悪魔、母羊と出会ってから3カ月ほど
身体は肉を欲している!
ッホッホッホ!
重い荷物も何のその
ウルフは草原の家へとかけた。
……
…………
………………ポリポリ
牙と牙の間で砕け
口の中の水分を奪いながら溜まっていくそれは
ほのかな甘みを残しながら腹に堪る
ポリポリポリ
…あれから草原中のありとあらゆる草葉根を齧り続けたウルフの舌は
もはや草食獣並の繊細な味覚でももってそれを堪能する。
畑の肉と称されるそれ…「大豆」を。
……
………うん
「けっして肉じゃない。」
草原の家にリュックを下ろし
ライオン先輩に頼まれた分だけ袋につめてライオン先輩の家を訪ねる。
先輩の家は林よりも西
川の上流だ。
林を抜けると土で出来た岩みたいな家があった。
「ガハハ、そのままじゃ駄目だな」
「え~」
「あぁ、まずグルテンを分離させるんだ」
ライオン先輩はそういうと
豚の国で買ったという鉄の鍋を川の水でみたし火にかけた。
なんかスゴイ。
「その昔…精進料理というものがあったらしい」
「料理?」
その日はまた、色々な事を教わった。
料理というのは知らなかったけど
火で魚をやくのも料理らしい。
ライオン先輩の土の家の中には
包丁やらまな板
フライパンやかまど
煙突
机に椅子
なんだかすごい物が一式そろっていた。
あと黒い泥水みたいなのが入った固い土のツボとか
なんか解らないけど色々あった。
正直わからなかった。
ライオン先輩すごい。
「若い時は二人であっちこっち旅したもんさ…」
そういいながら先輩は壁にかけらた石の棒を見て目を細めた
どやら剣という物らしい。
「それがあったら強くなります?」
「うーん…でもなぁ」
俺は狼だ、常に強さを求める草原の戦士
ライオン先輩の昔話は物凄くカッコよく胸が躍った。
だから剣という物に興味が出てきた。
「お前には剣より、これが似合ってるな」
渡されたのは包丁という物だった。
「魚とか手で切るとまたくさいっていわれるぞ?やるよ」
「うーん!ありがとう!」
ライオン先輩は話ながら
鍋をかき混ぜたり、湯を切ってしぼったり
なんか黒いドロッとしたの混ぜたり色々して作ってくれた。
「そうだな…目をつぶって食べてみてくれ。期待はしすぎるなよ」
「……ぱくり」
ライオン先輩は凄い!
口の中には懐かしい味が広がった!
山でお父さんが作っていたごはんの味だ!
「ライオン先輩すごい!」
「ガハハ、また魚頼むぞ!」
こうしてウルフは
毎日魚を釣ってはライオン先輩の家に来て料理を習うようになった。
ある草と魚を同時に似ると生臭がなくなる組み合わせを見つけたり
ある実をつぶして魚にかけるとピリリとおいしくなったり
この料理という概念により、ウルフの食生活は一気に改善し
生きるメリハリがついてきた。
「もっと料理うまくなりたい!」
「いつか南の国に行くといいぞ、あっちは野菜料理のメッカだ!」
ウルフが南の国“蹄帝国”に向かうのは
まだもう少し先のお話。
ほむほむ