百獣の王対草原の戦士
ほーのぼーの
モフモフモフ
「zzzzz」
「♪~♪~♪」
「くさい!!」
……!!
あれから数日、何度か羊親子に会い。
妙に懐かれて…
「おじさん!引いてるよ!」
「うわっありがと!」
ザパァ!
「わー」
「くさい!」
「zzzzzz」
モフモフモフ
…ウルフは羊の子供たちをおもりしていた。
(なんでこうなったんだろう)
頭に乗せた子はいつも寝ている。
涎が垂れてくる。
釣り竿をもってくれてる子は、好奇心旺盛な
「おじさんなんで草食べてるの?」発言の子
この二人は男の子で
最後の子は女の子だ
「くさい!」を連発している、
魚はうんくさいね
うん
おじさんはくさくないよ?うん…うん…はい、水浴びします…うん
モフモフモフ
日は高く上り、西からの風が優しく草原をなで
ちゃぷりちゃぷりと水面がゆれる
あー平和だなぁ…
……
…………
………………
…ッザ
グルルルルルル
「……!!」
変な声が聞こえた気がして、ウルフはそっと後ろを向いた
「グルルルル」
「ヒぃ!」
やばい
そこには百獣の王=ライオンが居た。
身の丈だけでもウルフの三倍だ
体重なんて少なくとも6倍だ!
盛り上がった腕の筋肉…
風になびく黄金のタテガミ!
鋭い目は餓えた獣の闇の光が奥に見える!
…ッザ
…ッザ
…ッザ
(ど…ど…どど…どうしよよよ…)
…ッザ
…ぽたり…
涎が地面に落ちた
「ひぃいい!」
「…匹」
…ザワ
「1匹くれないか…?」
餓えたライオンの低い声が
ウルフの心臓を震わせ
冷たい震えとなって背筋を凍らせた。
ハァハァ…
「…1匹?」
スヤスヤと眠る頭の子
尻尾に顔を突っ込んでくさいくさい言ってる子
釣り竿が動く瞬間を見逃さないと
真剣に水面を見ている子
(……頼んだよ?)
今朝方、母羊に頼まれた子達だ。
ハァハァ…
子羊を渡して羊に殺されるか
子羊を守ってライオンに殺されるか…
ハァハァ…
ウルフは全身が粉々に砕けたような心地になった。
関節がバラバラになったようだ。
今から…
ライオンの爪で腹を裂かれて
喉笛を噛みちぎられ殺されるか…
全身を蹄で砕かれて
頭蓋をメキメキと踏みつぶされて殺されるか…否!
ヒュォオオオ
心なしか…風が、強くなった。
頭の子をそっと地面に置き
ウルフは震える膝を抑え立ち上がった。
ライオンの前に向かおうとするが…足が重い…いくじなし!
ぐぅ…折られた牙は…また生やせばいい!
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
ウルフは吠え、一歩前に出た!
悩む事ではない!
自分は任され、そして受けた!
一切の疑いもなく!信じてくれる子供たちを!
大人が守らないでなんとする!
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「どうしたんだ?…一匹で、一匹で良いんだぞ?」
「やらん!」
全身の毛が逆立つ!
もう…後には戻れない!
一度折られた牙を!爪を!心を!
塗りつぶすのだ…新しい武器で!
毎日毎日の特訓を続けた!
幾度も死線を潜り抜けた!
いける!
俺はいける!
俺は……!
遥か西の山脈から、両親の遠吠えが聞こえた気がする!
「うぉうう!」
「いや待てえええええ!?」
百獣の王対草原の戦士ウルフ!
血で血を洗う野生の王国に
今日もまた戦いの火蓋が切って落とされ…
さぁ
最後に立ち、弱者を喰らう真の強者は果たして!?
「おじさーん!引いてるよーー!」
……
…………
………………パチパチ
「くさい」
今までに無いくらい大物が釣れた。
羊の子は大喜びだ!
女の子は相変わらずだ。
zzz…うん、一人は寝ている。
「………」
「ガブガブガブ」
ウルフは脱力した。
よかったと思いながら脱力した。
目の前に居るのはライオンなのだろうか
大きな猫なのだろうか
「さ…魚でよかったんですか」
「あぁ…コレステロールを気にしててな!」
こうしてウルフに
また一匹知人が出来た。
コレステロールを気にする百獣の王ライオン
彼は肉食を捨てたのはウルフより前の先輩らしい
魚以外や、食べれる貝
気の実、草の根に詳しく
魚のお礼に色々と教えてもらった。
ライオン先輩と呼ぶことになった。
「俺が料理で弟が魚釣りしてたんだがなぁ~、海に行ったきり帰ってこんのだ」
「心配ですね~」
「くさい!」
「ふさふさだ~」
「zzz」
夕方子供の迎えに来た白い悪魔とライオン先輩の対面にはキモを冷やしたが
流血沙汰にはならなくてよかった。
「うーん畑の肉かぁ~」
ライオン先輩に教わったお肉について考えながら
ウルフはそのよるゆっくりと眠った。
ぼーのぼーの