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ベジタリアンウルフ  作者: 前歯隼三
草原の生活編
4/10

草の味知る狼と遠吠えを知る羊

(………!)

モシャモシャ…


「うーん、この葉はすっぱいなぁ…」


くんくん

モシャモシャ…


「苦!ペッペ!」


くんくん

もちゃもちゃ…


「ん~?ん~?」



…今日は更なる美食を求めて草原の草を食べ歩いている。

草は草だと思っていたが

結構色々な味の草がある、苦い酸っぱい甘い辛い


噛むとドロッと白い液が出る草があり…妙な味なので試しにいっぱい食べてみたら

めまいがしてきた。


「ほっわほっわウフフ~」


…そんな事をしながら

普段は行かない、草原の東側を探索していると

目の端に見慣れた白い塊が入ってきた。

…それも一個、二個、三個、四個…


モシャモシャモシャモシャ

(………)


「……ほわ~、羊さんだ…モシャモシャ」


どうやらあの羊さん

白い悪魔さんはお母さんだったようで

三匹の子羊をつれて草を食べている。


長年の朝の挨拶が築いた信頼関係でもって

狼である自分が目に入っても警戒はしていない。


(……!)

ッあ

子羊一匹が自分に気付いたようだ。

トコトコと母を離れ自分の方にやってくる。


なんだろーなー

無防備だなぁ~

モシャモシャ


「お…おじさん!」

(おじさん!?)


ウルフはちょっと考えた。

モシャモシャ

うん…まぁおじさんか。


「うん、こんにちわ」

「こ…こんにちわ!え~っと」


白い悪魔は無口なので、声を聴いたことは無いのだけど

なかなか子供は元気にしゃべる

うんうん、いい子みたいだな~…もしゃもしゃ


「おじさんはどうして草を食べてるの?」

「…ッえ?」


「狼なのに?」

「…ふぇ…っえ」


子羊の向こうの母羊=白い悪魔を見やった

もしゃもしゃ…

何も警戒していない。…いや、あれは“自信”の現れた。


知っている。あのモコモコの下の鍛え抜かれた肉体を

あの土を踏む、蹄の痛さを…


…ごくん

唾と一緒に草を飲み込んだ。


「おじさん?」

「か…か…」


目の前にいる子供は無垢だ。

小さな瞳の中、好奇心をキラキラさせて答えを待っている。

何も答えないわけにはいかない…うん

ちゃんと言うぞ



「か…体に…良いからね!!」




その後の事はよく覚えていない

なんだか子羊達に懐かれて

おいしい草を教えてもらったりした。


白いドロっとした草は食べ過ぎると毒になると教えてくれたり

なかなかに…うん

なかなかに収穫のあった一日であった。…うん



「うぉおおおおおん!!」


今日も寝る前に

狼は屋根に上って月に吠えた!



「うぉおおおおん!」



「あー、ママ、あの声おじさんかな~?」

(………)



その遠吠えに秘めた悲しみを

知っているのは草原の白い悪魔一匹だ。

「うぉおおおおん!」

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