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ベジタリアンウルフ  作者: 前歯隼三
草原の生活編
3/10

牙が折れても爪がある!!

まったり

血で血を洗う野生の大地

弱肉強食の力の世界


北海道がすっぽり収まるほどのこの広大な草原の真ん中で

一匹の牙の民が…いや

牙を折られても、尚も心折れず、戦い続ける戦士=ウルフが居た。


「わーい!釣れたー!」


連日の釣りで分かってきた!

木の葉を“浮き”として取り付け

魚の骨で針を新調し

餌も色々と試した。


あと魚は日陰を好むというのも段々と理解してきた。


初日は半日かかった魚釣りも

今ではこ一時間で釣れるようになった!


「ウフフ…これ美味しいやつだ!」


…さっそく火をおこす

草原で薪は少ないので、あらかじめ林から持ってきた薪を

釣り場の横に堀った穴に入れてある。

そのまま使うには湿気があるので

翌日使う分は出しておき…

着火には草原の草をむしって乾かした物を使う。


スススス

ギュギュギュギュギュ

………

…………フワァ(煙)


「フーフーフー!」


…ボゥ…メラメラ…


気付けば日暮れになっていた。

オレンジ色の空を見ながら

ウルフは今日の一日を思う。


火の勢いが安定したので

魚をガシガシ川で洗い

腹を裂いて内臓をとった。


先をとがらせた枝を尻にさし

エラから抜けるようにセットして

焚火にかける。



パチパチパチ


グルルルル…


「釣りは上手くなったから…火をなんとかしたいなぁ…」


薪の保管場所もそうだが

地面に堀った穴では心もとない…

火も毎日起こすのではなく…ずっともやし続ける事は出来ないのだろうか…

小さな火でいい…


「河原と林の間ぐらいに…そうだなぁ…石積み上げて巣を作れないかなぁ…」


林で出会った猿達はしなる枝やツタで、安全な寝床…巣を作っている

雨の日などは枝を編んで「屋根」を作ったりしていたのだが…

そこに何かのヒントがありそうだ。


その昔

両親と共に山に住んでいた頃は洞窟を見つけて

そこに落ち葉や草をしきつめていた。


ジュゥウ

魚の脂が火に溶けて

枝を伝って地に落ちる


「焼けたかな…うまひ!」


ウルフは今日一番のご馳走に貪りついた!


美味しい物を食べる

明日の事を考える

両親と共に過ごした山の日々を思い出す

ほろり…


とうちゃんがとってくれたトカゲ…おいしかった。

かあちゃんがとってくれたドラゴン…固かったなぁ…


むしゃむしゃ…ごくり


「…………」


…ッカ!


ウルフは覚醒した!ウルフは立ち上がり、空に浮かぶ月を睨み

遠吠えを開始する!


(見ていてくれ!とうちゃん…かぁちゃん!)


「リベンジ…するしかない!」


思い立ったら行動する

それがウルフの良い所(父談


ウルフは唐突に思い出した牙の民の誇りを胸に

ランニングを開始した!

見つけた岩に齧りついて顎を痛めた!


「ぬぉおおおおおおお!」


どれだけ倒れてもめげない頑張り屋さん(母談


ウルフは折れた心の牙を取り戻すため

両腕を振るう!

牙が折れても爪があるさ!


トレーニングついでに林と河原の中腹の丘の上の土を掘り

河原から石を担いで運ぶ

林から枝をひきずりかけて


「まだだ…まだ…こんな事では…悪魔には勝てない!」


そこからは地獄の日々だった。


魚を釣って食べてはトレーニング(建築)

体力使って腹減れば魚釣り

繰り返し…繰り返し…あっと言うまに3日が立った。



「…よし!行ける!」


ウルフは鍛え上げた自身の体に

辛い特訓を超えた精神力に自信を取り戻し

白い悪魔に復讐を誓う!


奴の居場所は解っている!

朝のランニングが何度も被り

今では挨拶ぐらいはする仲だ…!

ククク…

東の空が白んできた…来るぞ…来たぁああああああああ!



「たのもぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」



バッキャァ

ボッガァア

ズッドォオオ

ドドドゴベェキィイ!


………トサァ…


(…………)


「あ…あ…ありがとうございました…カッハ」



うええええええん

うぉおおおおん


…その夜、狼は泣いた。

まだ屋根の作られていない丘の上の小さな家で

痛かったのは体じゃない

心だ…心の牙が…ぽっきりと折れてしまった。


「うぉおおおおおん!」


草原に響く狼の遠吠え


(壁だけでもできていてよかった…こんな泣き顔…誰にも…見られたくない…)




サァアア

新しい朝が来る…草原に…


ザッザッザ


(………)

「あ…おはようございまーす!」


羊はランニングの途中でウルフとあった。

泣きはらした目とクマが心の傷を現している。

…それに

他の動物達は怯えていたが

昨晩の遠吠えの悲しみを、羊だけは感じていた。


「き…昨日はありがとうございました!…これ…林で猿さんにもらったもので」


昨日と手合わせのお礼と赤い果実を渡された。


「ま…またいつかお願いします!では…!」


ウルフは釣り竿を片手に河原へと向かう


(………)



あなたの良い所は

ちゃんとお礼が言えるところよ(母談)


お前の良い所は

一晩泣いたら頑張れる所だ!えらいぞ!(父談)



「ウルフは今日も魚を釣る

今日は多めにつって、林の猿さんと交換するんだ!」




こうして…草原に物々交換の概念が広まっていった。

もったり

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