大きな魚釣り
天止め山脈に降り注いだ雨と雪解けの水を受け続けた広大な湿地地帯
南西から北東にのびる山脈にそい細長く続くじめじめとした巨大な沼地だ。
山脈にかかる雲のせいでほとんど日は届かず、非常に寒い
そこからさらに山脈に離れるように水は海へと下りながら、幾百幾千のちいさな流れが産まれ
少しづつ合流し最後には三つの大きな大河になるのだ。
「よーし、今日は釣るぞー」
「カエルとるぞー」
ウルフとコンタは釣り竿とタモをもって湿地に向かう。
二人にとって湿地は庭だ。
沼にハマらないように、木の根をピョンピョンわたって湖を目指す。
釣り場は山脈からは大分離れているので日が届き、暖かい。
ビルのように巨大なマングローブが何本か生えていて、その根の間に、これま巨大な丸い葉がドロに浮かぶ
端の厚さ30センチ、中央部厚さ1メートル…葉の面積がテニスコートぐらいの丸い葉だ。
ピョンピョン
ピョンピョン
「先輩落ちないでくださいね」
「だ…大丈夫うん…よっほっ!」
いつもはもっと入り口で釣るのだが、今日は冒険だ!
大者を狙うならば、やはりちょっとは深い所でやらねばならぬ!
ザッパァ…
体長10メートルほどの沼蟹が葉の横を通った。
「ここならば大物がつれそうですね」
「フフフ…腕がなるぜ!」
ピョンピョン
ピョンピョン
くんくん
くんくん
「よしここにしよう」
「はい先輩せっとしますよ!」
二人は力が無いので頭を使う。よくしなる木を探して、その近くの葉の上を釣り場に定めた。
木を限界までしならせてセット×5個ほどを用意し
その先を一本のツタロープでまとめて釣りをするのだ。
足場の葉っぱの芯の周りを噛みちぎりそこと釣りロープを細いロープで縛って抑えとする。
獲物がかかったらこのつなぎのロープを切れば木のしなりで獲物を引っ張り上げてくれる寸法だ。
「うまくいきますかねぇ」
「大丈夫だ、この方法は昔親父から聞いた方法なんだ。」
ウルフの父は昔あちこち旅をしていて色々な事を知っている狼だった。
釣りという物も遥か南西の猫の国で教わったとか。
「フィッシング界の貴公子猫三郎さんというのが父の師匠らしい」
「凄いですね、よくわからない単語がいっぱいで判らないです!」
…父が釣りを語る時は猫三郎さんとの思い出がセットで語れる。
なんでもクラーケンを釣り上げたとか、水龍を釣り上げたとか、小柄な父より尚小柄な猫でありながら
ありとあらゆる大物を釣り続けた伝説の釣り猫だとか。
「そんな大きい魚食いついたらどうやって引き上げるの?ムキムキなの?」
「ハハハ、ぺリコよ、釣りは頭さ…力でなく、頭でつるんだよ」
ザバアアア!
「やりました先輩巨大メダカが釣れましたよ!」
「すごい!40センチ!」
ザバアアア!
「やりましたよ先輩!巨大魚の稚魚です!」
「すごい3メートル!」
……
…………
………………
「いやぁ大量ですね、メダカ、稚魚、カエル、蟹、エビ!カエル、カエル」
「すごいよコンタ。俺ゼロだよ」
巨大な木で太陽は見えなかったが
空の色が少し黄色味がかった気がするので
二人は罠を撤去して帰る事になった
ザパァアアアアアアア!
二人が巨大樹の根に移り振り返ると…さっきまで二人がいた釣り場は
巨大な巨大な巨大な魚の前歯の先にぷつりと刺さって沼に沈んだ。
パラララララ
びちゃ びちゃ びちゃ
泥の雨が降り注ぐ
「帰るか」
「先輩!今日はごちそうしますよ!」
ピョンピョン
ピョンピョン
ピョンピョン
ピョンピョン
コンタの家に付くと辺りはすっかり暗くなっていた。
「料理は任せてくれよ、フフフ、草原で見つけた香草があるんだ!」
「わーい!」
パチパチと火を起こし
裁いた魚やカエルの腹に香草を詰めて更に大きな葉っぱにくるんで
焼けた石の上に置いた。
その上にも焼けた石を置いていく。
ジュゥウウ
モワモワ
ジュウウウ
モワモワ
……
…
「うまひ!」
「おひしいです先輩!フフフ、妹は悔しがりますね」
「ああイモットちゃんか、今日は居ないの?」
「お年頃ですからね、山脈の向こうに男漁りに行きましたよ」
二人が北西の方をみやると…遥か彼方に天に届く壁がある…頂上は霞んで見えず
雪でも振っているのだろう、真っ白だ。
「あれって越えられるんだねぇ…」
「まぁ、妹は沼地でも普通に巨大魚仕留めますからねぇ」
「しゅごい」
「多分狐じゃないとおもいますよ、はい」
ウオオオオオオオオオン
うおおおおおおん
「あ、おじさんとおばさん寝るみたいですね」
「だな、俺たちも寝るか…げぷぅ」
ウオオオオオオオオオオオオオオン!
コォオオオオン…あーあー…コホン
「…!?」
♪
鳥は空飛び
魚は泳ぎ
僕は歌って
あの子は踊り
土を耕す人がいて
魚を取られる人がいて
火おこし料理する人がいる
あの人すごね
この人さすがさ
君もやるじゃん
僕もすごいよ
コン夜もお月様まんまるで
あんなに丸くはなれないけどさ
コン夜もお月様ピカピカで
あんなに優しくなれないけどさ
僕は三角狐のコンタ
僕は歌うよ優しい歌を
「しゅごい!」
「てへへ~」
ウルフの平和な日常




