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当たり前だと思う事

いつものように仕事をこなしつつ変わらぬ日々を送るアフィ。

そんな今日も出来る仕事を片付けてのんびりしていた。

この当たり前にある平和がいつまでも続けばいい。

それは荒くれていた過去を思う事でもあった。


「ん、んー…あー、気持ちいいねぇ」


「アフィ、そんなだと太りますよ」


「いいじゃん、美味しいものは自分へのご褒美だよ」


公園のベンチに座りチーズドッグを食べながら空を見る。


すると仕事を終えたっぽいヘインがやってくる。


「あら、アフィ、あなたは相変わらずね」


「ヘインは仕事?」


「ええ、少し採取のお手伝いね」


「ヘインは人がいいですね」


そんなヘインはこの街での暮らしを楽しんでいる様子。

とはいえ彼女には何か影がある。


シエスタはそんな風に感じていた。


「この国ではこういう平和が当たり前なのよね、不思議なものだわ」


「ヘインの当たり前は違うの?」


「少なくとも私の生きてきた世界に平和なんてなかったわ、荒んでいた世界よ」


「ヘインにどこか影を感じる理由でしょうか」


そんなヘインも今はとても楽しそうにしている。

まるで過去から解放されたかのような感じだ。


「ねえ、アフィは当たり前って考えた事はあるかしら」


「当たり前?うーん…でもあたしもいろんな環境で育ったからあまりないかも」


「当たり前というのは傲慢な考えですよ、その人にとっての当たり前はその人だけのものです」


「あら、シエスタは意外と言うのね」


当たり前という考えは傲慢、だがそれは間違っていない気もする。

ヘインの生きてきた世界とアフィの生きてきた世界での当たり前は別のものだ。


その人や国、地域の当たり前は外から見たらおかしく見えたりもする。


この国の常識は外の国の非常識、そんな事は至極当然にある話でもある。


当たり前というのは同じ世界に生きている存在にしか通じない考えでもある。


「例えばよ、この国では人助けが当たり前、でも隣の国では人助けは恨まれる、とかね」


「そんなの嫌だなぁ、いい事とは限らないけど人助けが悪いイメージなんて」


「世の中はそういうものなのよ、当たり前っていうのは身内だから通じる考えなの」


「ヘインの言う事は正しくもないですが間違ってもいません、私はそう思います」


ヘインは流れ者だと本人は言っている。

それは過去に何かあったというのは確かなのだろう。


だからこそ過去に生きていた世界の当たり前がこの国では別のものになる。


価値観が全く違うという事を感じたのかもしれない。


「当たり前っていうのは外国から見たら変な感じに見えたりもするのよね、不思議なもので」


「ヘインがそういう世界で生きてきたからこそ感じてる事なんだね」


「結局当たり前なんていうのは傲慢の押し売りなのよ、相手も知ってて当然、みたいなね」


「不良的な考えとも違いますね、世界を見た事がある人の言葉ですよ、それは」


だがヘインの言う当たり前はそんな箱の中の考えなのだろう。


箱から出たらその当たり前は通じない。


それは世界を見たからこそ出る言葉だ。


この国での当たり前は別の国では非常識になる。

それこそ国という価値観の違いを言い表すのに最適な言葉が当たり前なのだ。


「だから国、学校、地域、そういった箱の中でだけ通じるのが当たり前っていう価値観よね」


「でも世界的な当たり前って何かあるのかな?買い物ではお金を払うのが当然とか?」


「しいて言うならお金の話はそうかも知れないわね、お金は古来よりのルールだもの」


「そしてお金とは相手に責任を背負わせる事でもある、これはどうでしょう」


「人が責任から逃げるためにあるのが組織なのよ、組織のせいにすれば自分は安全ってね」


「つまり自分は悪くない、組織が悪いんだ、みたいな?」


「責任は他人に押し付けて好き勝手する、それが出来る人は出世するものよ」


「えぇ~、流石にそれは引くよ」


だがヘインの言う事もまんざらではないと思える。


お金の話でも組織のせいにすればちょろまかせる、そんな考えを持つ人もいるという事だ。


当たり前とはそんなみんなやってるから俺もやった、そんな空気でもある。


「なんにしても当たり前を当たり前と思っちゃ駄目よ、それじゃね」


「あ、あたしのチーズドッグ返してよ!」


「ヘインもずいぶんとひねた考えなのですね、でも不思議と分かります」


そんな当たり前という話。

世界的な当たり前とは意外と浮かばないものなのかもしれない。


世界を見たからこその言葉。


当たり前を当たり前と思うのは責任逃れなのだろうか。

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