計画を立てる
イナを迎え入れてからしばらく、すっかり馴染んだ様子のイナ。
そんな中アフィは少し考え事をしていた。
イナにもっといろいろ見せてあげたいと。
そのためにはどうすればいいのかと。
「うーん、どうしたものかな」
「どうしましたか?アフィ」
「何か悩み事?」
アフィが珍しく考え事をしている様子。
メルクはそれについて聞いてみる。
「珍しく考えていましたが、何を考えていたんですか」
「うん、少し旅に出ようかなって思って」
「旅に出る?お姉ちゃん、どこか行くの?」
「イナにもっといろんなものを見せてあげたくてさ」
「なるほど、計画とかは立てているんですか」
アフィは元々考えたりするのは苦手なタイプだ。
直感で行動するようなところはあり、メルクもそこには少し手を焼いている。
ちなみにアカデミーの時のテストも筆記は弱いのに実技にはやたらと強かった。
「行くというなら私は止めませんよ、あなたのことですからね」
「見抜かれてるなぁ、でも長く留守にはしないよ」
「私を外の世界に連れ出してくれるのは嬉しいけど…」
「定期的に帰ってくるよ、そうしないと収入がきつくなるだろうからね」
「それはそうですね、私は聖職者なので大きな収入は期待出来ませんし」
旅には出るが定期的に帰ってくるというアフィ。
つまり世界一周というようなものではないという事。
そしてこの街で知り合った人達の事も考えての事だ。
「長期的な旅行という事でいいのですよね?」
「そんなところかな、東西南北のいろんな国に行ってみようっていうだけ」
「なら行きたい、もっと外の世界を見てみたい」
「お、イナも乗り気だね」
「お金はなんとか工面してあげますよ、長く留守にするという事でもないですからね」
そこはよき理解者であるメルクらしい。
一年間家を空けるというような話ではない事もある。
大体は東西南北の様々な国を巡る二ヶ月程度の旅行といった感じになるからだ。
「ただし帰ってきている間にはたんまり稼いでもらいますからね」
「うぐっ、そこは厳しいなぁ」
「でもお姉ちゃんの気持ちは嬉しいよ」
「いい子に育ったねぇ」
「それでいつ旅立つんですか」
いつ行くかという事にもなってくる。
とりあえずすぐに行くという事にはならない様子。
準備などもしっかりしてからになるだろう。
「なら一ヶ月後ぐらいに行くよ、それなら季節的にもいい感じだしね」
「分かりました、ではそれに合わせてこちらも用意しておきます」
「ありがとね、旦那様」
「いろんな国に行くのも楽しみ」
「トラブルとかは回避出来るようにしなきゃね」
季節の問題などからも出発は春頃に予定を定める。
あとは知り合いの人達にも伝えておく事に。
外国に行くのは実ははじめてという事もある。
「それにしても海外に行った事のないあなたがよくそれを考えましたね」
「なんとかなる!と思ってる」
「お姉ちゃん、本当に頭を使うのが苦手なんだね」
「アカデミーでも筆記の弱さを実技で一気に巻き返して合格してるから」
「あなたは本当に野生の勘というか、そういったものが働きますよね」
アフィは本当に野生の勘や直感といったものは鋭い。
その一方で考えたりする事はそこまで得意でもない。
筆記の弱さを実技で巻き返して合格しただけの事はある。
「それで、海外に行った際に現地のマナーとかはしっかり守ってくださいよ」
「分かってるよ、そこまでは流石にしないって」
「何かあったら私がお姉ちゃんを助けるね」
「あたしってそんなに頼りないのか…」
「僕としても今まで散々それを見ているんですが」
メルクの言葉に反論は出来ない様子。
アフィも分かっているからこそではある。
やはりそこは夫婦なのだと実感する。
「なんにしても準備とかいろいろとね」
「最低限必要なものは僕が用意してあげますから」
「はぁ、旦那様には頭が上がらないよ」
「お姉ちゃんって何気にメルクお兄ちゃんには勝てないよね」
「本当に結婚した時から勝てた試しがないんだよねぇ」
そんなこんなで旅行の計画が立ち上がる。
東西南北の様々な国に二ヶ月程度の旅行になる。
一度国に帰ってきて、少し休んだら再度旅行に出る。
そんな計画が始まるのだった。




