氷銀の刀
氷竜を倒してから一週間が過ぎた。
アフィは相変わらず変わらない自由気ままな暮らしをしている。
今日は休日という事でエルメナは街に降りてきている。
エロイドの頼んだ刀の方も気になっているので様子を見に行ってみる事に。
「お邪魔しまーす」
「お、アフィの嬢ちゃんじゃねぇか」
「あなたも気になってたのかしら」
そこには白銀に輝き冷気を放つ一振りの刀があった。
どうやらこれが頼まれた刀のようだ。
「ほぉ~、大層な刀だねぇ」
「エルメナの嬢ちゃんは鍛冶屋としても優秀なんだよな、特に魔力を込めるのが上手い」
「でもおじさんの作る武具はとても優秀よ、簡単には壊れないし軽量だもの」
「俺もアフィの嬢ちゃんから金属譲ってもらっていろいろ試してはいるんだがよ」
「それね、試作品を冒険者に無償提供して強度とかのテストしてもらってるよね」
どうやら鍛冶屋の主人は試作品を無償提供する代わりにテストを依頼しているという。
冒険者からしたらありがたい限りだし、もっといい武具を買う顧客にも繋がる。
信頼と実績があるからこそ出来る事でもあるといえる。
「失礼する、エルメナ、頼んだものは出来ているか」
「来たわね、これがその約束の刀、仕事はしたから」
「ふむ、素晴らしい限りだな、これが噂に聞くエルメナが打ったという刀か」
「そんでその刀に名前をつけなきゃな、無名の刀じゃ寂しいだろ?」
「名前か、何かいい名前とかあるの?」
名前について少し考える。
そして何やら閃いたようだ。
「粋銀、粋な銀と書いて粋銀だ、氷刀・粋銀、どうだ?」
「ほー、なかなかセンスある名前をつけるじゃねーの」
「かっこいいねぇ、粋銀、あたしそういう男の子が好きそうなの大好きだよ」
「粋銀、ならその刀は粋銀よ、あなただけの刀、いいわね?」
「うむ、では早速試し斬りをしてくる、では失礼する」
そうしてエロイドは試し斬りをすべく近所の森に向かっていった。
ちなみに代金は完全な前払いなので、すでに支払い済みだ。
エルメナは残りの仕事を片付けるからと仕事に戻る。
アフィもいいものが見られたと思いつつ鍛冶屋をあとにする。
「さてっと、仕事も消化しなきゃいけないんだけどね」
「あれ?カイトだ、何してるんだろ」
そこには子供と話すカイトがいた。
アフィも気になったのか話しかけてみる事に。
「カイト、その子は?」
「あっ、アフィお姉ちゃん」
「街の外に行くのはいいけど遠くに行っては駄目だって言ってただけですよ」
「でも凄く綺麗な場所を見つけたんだよ、だからリナにも見せてあげたくて」
「だけど危ないよ、ホルスお兄ちゃんはやんちゃだから」
どうやら兄妹らしい。
そして兄のホルスがいいスポットを見つけたという事のようだが。
「それでその綺麗な場所ってどこなのかな?」
「うーん、アフィ姉ちゃんになら教えてもいいかな、近くの森にある海岸の洞窟だよ」
「そういえばあの森は海岸に隣接してたっけ、そんな場所あったっけなぁ?」
「でも万が一何かあったらお父さんもお母さんも心配しますよ」
「そうだよ、大目玉なんだから」
とはいえそこは男の子、探検や冒険が好きなのは揺らがない様子。
行ってもいいけど海岸なので満潮になる前には必ず戻るようにとだけは念を押す。
「分かってるよ、流石に夜には行かないよ」
「ならいいんですけど」
「にしてもカイトがこういう事してるのも珍しいね、あれだけ評判最悪なのに」
「はぁ、人を冷血人間か何かだと思ってません?俺はこれでも優しいんですよ」
「うん、カイトお兄ちゃんはチョコレートをよくくれるんだよ」
カイトの評判は相当に悪い。
それこそ冒険者達の間ではいい噂はほとんど聞かない程度には悪い評判が立っている。
相手を見下すような戦いをする事がその理由だとは聞いているのだが。
「うーん、カイトって実際は評判よりもずっといい人?」
「俺にあまり構ってるとアフィにも悪い噂が立ちますよ」
「あたしはカイトを信じてるからいいんだよ」
「そうだよ、カイト兄ちゃんは悪い人じゃないよ」
「うん、私もそう思う」
なんにしてもそんな意外な一面を見たアフィ。
人の評判など所詮は噂でしかないという事なのか。
それでも噂よりはいい人というのは感じ取れる。
誤解を解くのは苦労しそうだが、本人に解く気はなさそうにも感じたアフィだった。