興味は尽きない
騎士団に内緒で盗賊団の一件を片付けてしまったアフィ達。
国の方では盗賊団が突然自首してきた事に騒然となっていた。
盗賊団の処遇は今後決まるそうだが、今は拘留に留まっているとか。
一方のアフィはそんな事は知らんとばかりにイナにいろいろ教えていた。
「すっかり元気になったね」
「はい、でも今は勉強が先です」
「ずっと寝てたって事は何も知らないんだもんね」
イナはずっと眠っていたからこそ現代についての勉強をしている。
アフィ夫妻だけでなく、知り合いの人達もそれに協力してくれているようで。
「お、すっかり元気になったんだな」
「あ、流、うん、おかげさまで」
「アフィもついにお母さんになったか?」
「そんな風に見える?」
「まあいいさ、少し付き合わせろよ」
流は先日の事がバレたのか、二週間の謹慎を言い渡されていた。
とはいえ医者としての責務を果たそうとした事は評価されたのか、それ以上は特にない。
病院の方も流の医者としての本気を感じていたのか。
「あれ食べたい」
「ジェラートか、いいよ、買ってきてあげる」
「ありがとう」
「甘いのか優しいのか、どっちなんだろうな」
「どういう意味?」
流もそういう事には敏感なところはある。
優しさと甘さは違うという事はよく知っている。
医者としてもその考え方は持っておかなければならない事も。
「お待たせ、流の分も買ってきたよ、はい」
「すまないな」
「はい、イナ」
「うん、美味しそう」
「それにしても平和だねぇ、何も起こらないってわけじゃないけどさ」
騒動はちょくちょくあるものの、この平和は国に騎士団を始めとする軍隊あってこそ。
そんな平和の意味はアフィも流も理解している。
やはり国を守る存在は大切だとも。
「そういえば流は医者になったら国に帰るの?」
「そうだな、それもいいけど国際医師団に入ろうかなとも考えてるよ」
「国際医師団っていろんな国に行くやつか」
「流は立派なんだね、なんか大きく見えるよ」
「一皮剥けたんじゃないの?こっちに来てからさ」
流も何かと経験したからこそ少しは大人になったのかもしれない。
昔はまだまだ子供っぽかった気はする。
アフィと知り合ってから少し変わったと流は言っているが。
「俺もまだまだ子供だったって事だよ、少しは現実も見られるようになったしさ」
「ふーん、でも現実を見られるようになるっていうのは成長の証かもね」
「変わらない現実に何もせずに文句を言うのはただの卑怯者だ、だからかな」
「若いのに凄いね、なんか年齢より大人っぽく見えるよ」
「医者は神じゃない、全ての命を救えるなどというのは傲慢だが救える命は全て救う、だよな」
それはかつて流がこっちに来る前に講演会で聞いた医者の言葉。
その言葉を流はずっと大切にして医者として働いている。
まだ卵ではあるが、流にも出来る事は全てやるのだという確固たる信念がある。
「それにしてもイナはずいぶんと可愛い服を着てるんだな」
「アフィの知り合いの人にもらったんだよ」
「お下がりか、カイトが聞いたら文句を垂れそうだな」
「カイトはお兄さんに対するコンプレッコスがあるからねぇ、お下がりとか嫌いそう」
「でも似合ってるからいいんじゃないか」
イナの服は仕事などで知り合った人から譲ってもらったもの。
なんせこういった事ははじめての経験なので、何を選べばいいか分からなかった。
そこでイナと同じぐらいの子供のいる家の人に相談して、お古を譲ってもらったのだ。
「でもお下がりか、俺は兄弟はいないけど、知り合いにもらったりはしたっけな」
「流もお下がりとか着てたの?」
「子持ちの家とかだと古くなったおもちゃとかあげたりする事もあったからな」
「流の国ってそういうのも普通にしてるんだ」
「ただそうなると一回り古いおもちゃとかなんだけどな」
流の昔の話も少し聞けた。
国は違っても古いものをあげたりするのはどこにでもあるのだろうか。
子持ちの家庭ならではの話でもある。
「さて、俺はそろそろ行くよ、カイトでもからかってやるさ」
「流も背中が大きくなったねぇ」
「他の人にも会わせてよ」
「うん、行こうか」
流なりの医者としての心構え。
こっちに来る前に聞いた言葉は今でも流の中で生きている。
イナは知り合いからもらったお下がりの服でもそこそこ似合っている。
人脈は無駄にはならないという事である。




