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ガネクトの工房

盗賊団の事を調べつつもいつものように過ごすアフィ。

そんな中ガネクトの工房の前を通りかかる。

その中では相変わらずの様子のガネクトがいた。

動物嫌いなのに動物の薬をよく頼まれる苦労人なのは変わらない様子。


「やっほー、遊びに来たよ」


「ああ、アフィですか」


「その様子だと相変わらずっぽいね」


ついうっかり動物用の薬を渡した事から評判が広まったガネクト。


本人は過去のトラウマもあってか、動物が関わる仕事は一切したくないとも言っている。


「相変わらずペット用の薬とか頼まれてるみたいだね」


「あれは私が迂闊でした、まさかここまで評判になるとは」


「ガネクトって本当に動物が苦手なんだね」


「想像しただけで背筋が寒くなりますよ」


「それだけって事なのか」


ガネクトは過去のトラウマのせいで動物に触れる事すら怖がるほどだ。

近くを通りかかろうものなら条件反射で回避行動を取ってしまう。


押し付けこそしないが、動物のよさが分からないというのは本人の弁。


「そんなに嫌なら断ればいいのに」


「一応信頼に関わってくるので」


「律儀だねぇ、生真面目と言うか堅物と言うか」


「そもそもあなただって無茶して私の作った義肢をよく壊すでしょうに」


「あれは体が勝手に動くっていうか」


アフィもガネクトには世話になっている。

結婚前に大怪我で失った手足はガネクトの作った義肢で補っている。


錬金術で作ったものだからこそ無茶も出来るが、壊しては怒られている。


「でもガネクトには感謝してるんだよ」


「私の今のこの体もあなたが用意してくれたものですしね」


「なんかお互いにお互いの体を作ってるって凄い話だよね」


「それでも人間に戻るのはまだ先になりそうですが」


「それに関してはあたしも古い文献とか読み漁ってるんだけどねぇ」


今のガネクトの体は錬金術で作った人工的なもの。

本当の人間に戻すには別の何かが必要なのだとガネクトは言う。


アフィもそれを実現させるべく文献などを読み漁っているのだが。


「とはいえあたしって活字が苦手なんだよね、文献とか読んでると眠くなるんだよ」


「あなたは昔から考えるより行動というタイプでしたからね」


「本当だよ、本を読むとか苦手で」


「私は寧ろ本を読んでいると落ち着きますけどね」


「ガネクトって本の虫って感じだよね」


そういうところも正反対なアフィとガネクト。

それでもアフィはガネクトのためにも苦手なものに挑んでいるのだ。


その気持ちはガネクトも嬉しいのだという。


「でもあたしもお人好しだよね、ガネクトには恩があるからなんだけどさ」


「あなたは元々困っている人を見過ごせないタイプでは?」


「そうかなぁ、昔は生きるのに精一杯だったからそういう考えはなかったよ」


「そもそもあなたを矯正させたのはレーメルですからね」


「まさかあれだけ荒れてたあたしがこんなに矯正されるとは思わなかったよ」


昔は荒れていたアフィ。

レーメルに見出され、アカデミーで錬金術を学ぶ中で人格も矯正されたのだろう。


ガネクトとの出会いは卒業後になるのだが。


「でも人格を矯正するって流石に厳しかったなって思うよ」


「それを言ってしまうと、軍事学校なんかは最初にするのが人格の矯正ですよ?」


「あー、確かに敬語も使えないような悪ガキを矯正したりする話はあるもんね」


「あなたがされたのもそれですよ、昔は荒れていたわけですから」


「納得、人格を矯正されてなかったら仕事なんてせずに生きてたよ」


悪ガキが軍隊に入る事で人格を矯正される話は珍しくない。

実際軍隊というのは上官の命令は絶対な世界だ。


だからこそ人格を矯正する事から始まるのだとガネクトは言う。


「だとしたらやっぱりあたしは人格を矯正されて正解だったのかなぁ」


「当時は知りませんけど、今のアフィはとてもいい人ですよ」


「いい経験だった、そう思えば安いものかもしれないね」


そんな昔話に花を咲かせる二人。

とはいえまだまだ若輩者だ。


年齢はともかく、人は学ぶ事で知見を広げる生き物なのだから。


ガネクトもそんなアフィを手助けしているのである。

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