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カイトの闇

適度に仕事をしつついつもと変わらない生活を送るアフィ。

そんな中弟子に稽古をつけ終えて休んでいたカイトを見つける。

以前聞いたカイトの家との関係。

比較され続けた事で歪んでしまったその闇は深いようで。


「まさかカイトから誘ってくれるなんてね」


「いえ、少し暇だったものですから」


「でも珍しいですね」


カイトもこのままではいけない事は理解している。


とはいえ家に帰るつもりもないようで。


「あの、誰かと比較されるってどう思いますか」


「それってお兄さんの話?」


「僕はずっと兄と比較され続けて、兄の弟としてしか見られなかった、それが悔しくて」


「カイトさんはそれでこの国まで飛び出してきたと」


「はい、国にいても僕はずっと弟だった、優れた兄がいるからこそなんですが」


カイトの兄は優れた剣術の使い手だという。

それと常に比較されどんなにカイトが結果を出しても聞かれるのは兄の事。


それに耐えられなくなったのだという。


「誰かと比較されるのが嫌なんです、僕個人として見て欲しい、ずっとそう思ってて」


「カイトさんは常にお兄さんと比べられてきた、それは優れた人の宿命だと思います」


「宿命、ですか」


「確かに兄弟とかがいる家って何かしらと比較したがるよね、あたしも何度か見てるし」


「この国でもそういうのはあるんですね」


アフィも仕事においてそういったものは見ている様子。

だからこそカイトの感情についても分からなくはないのだろう。


順位や記録といったものは人が優劣をつける上の基準でもあるからだ。


「誰かと比較して駄目だのいいだの、それに疲れたから僕は飛び出したのに」


「でもここでのカイトは活き活きしてる気がするよ、弟子も出来たんでしょ」


「それはまあ…」


「比較される事はあるかもしれませんが、闇を感じさせるような見え方はしませんね」


「そう言われると嬉しいです」


カイトは家とは確執も出来てしまった事で、帰りにくいとも言う。

それに帰ったらまた弟に戻るだけ。


だから本当に強くなるその日まで帰らないと誓っているという。


「今思えば飛び出してきてよかったと思ってます、気は楽になりましたし」


「とはいえ闇は深いよね、お兄さんがそれだけの人だったって事なんだろうけど」


「教育というのは一つ間違えただけでおかしくなるんだと思います」


「ですが教育とは自由でも束縛しても駄目なんですよ」


「メルクさんはそういうのは詳しいんですか」


メルクは教会で寂しそうに時間を潰している子供なども見ているという。

話も聞いてあげたりして、家に帰りたくないという事を言われたりもしたらしい。


教会は悩みを聞いたりする仕事もあるので、相談に乗ったりはしているようだが。


「家に帰りたくない、そう思ったりするのは子供なんでしょうか」


「僕からしたら人には様々な事情があるのを知っています、家が嫌な人も当然います」


「やっぱりそういう人を見てるんですね」


「教会って悩みを聞いたりする仕事もあるし懺悔室とかあるよね」


「なるほど、それも仕事だと」


メルクがそういった事情について知っているのも仕事柄である。

そしてその仕事で様々な悩みを聞いてきた。


当然カイトのような悩みを持つ人とも話した事もある。


「なんか少し楽になりました、似たような悩みを持つ知らない人もたくさんいるって」


「カイトさんの悩みを解決してあげる事は出来ません、ですが力にはなれます」


「そういうところは聖職者なんですね」


「旦那様曰くその人の悩みはその人にしか解決出来ない、らしいからね」


「その人の悩みはその人にしか解決出来ない…」


なんにしてもカイトが抱えているものはそういうものなのだ。

兄との関係はこじれ、家との関係までもがこじれている。


この国まで飛び出してきた理由がそれなのだから。


「話に付き合ってもらってすみません、僕はそろそろ行きますね」


「カイトもあれで抱えてるものが深いよね」


「家庭の話ともなると力にはなれても解決はしてあげられませんから」


メルクも職業柄の経験ではある。

その人の悩みはその人にしか解決出来ない。


それは正しいのだとアフィも思う。


カイトがいつか光を見る日が来ると願いつつ。

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