エルメナのあれから
仕事を適度に片付けいつものように暮らしているアフィ。
そんな中以前の事もあり、エルメナの事を気にかけていた。
それもあり少し話をしに行く事に。
今日は鍛冶屋の仕事で来ているので少し時間を見て出てきてもらった。
「呼び出したりしてごめんね」
「気にしないで、アフィには世話になっているから」
「うん、それでお母さんはどう?」
エルメナの正体についてはとりあえずは黙っている。
とはいえ本人はそれについては特に気にしていない様子。
「お母さんはすっかりよくなったわ、アフィの薬のおかげね」
「ならよかった」
「それに私の事も黙ってくれてるしね」
「本当は受け入れてくれるか不安なんだよ、それなら黙っててもいいかなって」
「あえて知らせないという事かしら」
今までと変わらないように振る舞う。
それはエルメナの正体についてはあえて自分の中だけの秘密としておく。
知らない方が幸せな事もある、そういう考えなのだろう。
「ねえ、知らない方が幸せな事も世の中にはあるのかしら」
「そうだなぁ、本当の事を知るのが必ずしも幸せとは限らないんじゃない?」
「アフィは本当の事を知りたいとかってある」
「本当の事か…しいて言うなら親の事、かな」
「アフィの両親って今はもういないのよね」
アフィの両親はアフィが幼い頃に何者かに殺されている。
本人は物心付く前の事なので、覚えている事も少ない。
ただ国の騎士団の間で話されている盗賊団については気にしているようだが。
「あたしも昔は荒れてたからなぁ、先生に拾われるまでは酷かったもんだよ」
「でも今のアフィは立派よ、あたしなんかよりずっと」
「そんな事はないと思うけど、今でも自由気ままに生きてるしね」
「でもいい旦那様に恵まれたじゃない、あたしはそうはいかないから」
「あ、そっか」
エルメナはアフィのような幸せを手にするのは難しいと知っている。
だからアフィが羨ましく見えるのだろう。
そこは種族の問題というものが出てくるのだから。
「でもあたしはエルメナも幸せになる権利はあると思うよ」
「幸せ…あたしも幸せになっていいのかしら」
「旦那様が言ってたんだけどさ、幸せってその人の価値観なんだって」
「幸せは価値観?」
「そう、人によって何を幸せと感じるかは違う、大きい幸せも小さい幸せもね」
アフィが言う幸せは価値観というメルクの受け売り。
それは聖職者のメルクだからこそ言える事なのだろう。
何を幸せと感じるかはその人次第という事なのだ。
「あたしの幸せ、それについても考えてみようかしら」
「そうするといいんじゃない?美味しいものを食べるのが幸せとかさ」
「幸せの定義、意外と単純なのかしら」
「自分の好きなものを食べるのが幸せとか寝るのが幸せとかね」
「幸せ、あたしの幸せってなんなのかしら」
なんにしてもエルメナは今は以前と変わらない生活に戻っている様子。
アフィもそれを見て一安心のようだ。
そんな中エルメナがアフィに渡すものがあるという。
「アフィ、これ、この前手に入れた高級な新巻鮭なんだけど」
「これくれるの?」
「ええ、メルクは料理も得意だから好きに食べて」
「うん、ありがとう」
「あたしは料理は得意だから、機会があれば何か作ってあげるね」
エルメナからもらった高級な新巻鮭。
とりあえずメルクに何か使えないか相談してみる事に。
エルメナの料理についても期待が膨らむ。
「でもエルメナって料理が得意だったんだね」
「豪華なものは作れないけど、家庭的なものなら大体は作れるわよ」
「この新巻鮭ってどこで手に入れたの」
「お世話になってる魚屋に割安で譲ってもらったの」
「そういう人脈はちゃっかり確保してるのがエルメナらしいというか」
なんにしてもエルメナは変わっていないようで安心した。
アフィも新巻鮭をどうしようか考える。
これならエルメナも大丈夫だろうと。
「それじゃそろそろ仕事に戻るわね、機会があったら行くから」
「変わりないようでよかった、あたしも少しは役に立ててるんだね」
そんなエルメナの日常。
思わぬ贈り物をされてしまった事。
その新巻鮭はメルクに相談する事に。
新巻鮭はメルクの手によってご馳走に変わったそうな。




