旦那様の料理
今日も適度に仕事を終えて自由にしているアフィ。
そんな中やはりメルクの料理がお気に入りの様子。
だがメルクは家事全般をどこで覚えたのか。
それも少し気になっているようで。
「ねえ、旦那様ってどこで料理とか覚えたの」
「これですか?一部は母から教わりましたが、大体は自分で覚えましたよ」
「そういえば旦那様の母親って料理教室の先生なんだっけ」
メルクは料理に関しては母親譲りの様子。
他の家事は独学で覚えたというが。
「でもさ、そこまでのレベルになるのはなかなかだと思うよ」
「そうですか?僕は家庭的な料理が得意なだけだと思っていますが」
「その割にはたまにシャレたもの作るよね」
「そこは母譲りだと思います」
「でも旦那様がいてくれるからあたしも元気にやっていけるんだよね」
結婚の際に管理するとまで言われたアフィ。
元々家事などが苦手だった事もあり、メルクとの結婚はウィンウィンだった。
教会の仕事もあるとはいえ、メルクには助けられている。
「そういえばさ、あたしの好きなソーセージのクリームスープって最初から作れたよね」
「あれは僕の家の家庭の味なんです、それを母から教わったんですよ」
「マジか、旦那様の家庭の味って意外とシンプルなんだね」
「小さくカットするのはあなたの好みですけどね、僕の家だと二つにカットするので」
「ふーん、そこはあたしの好みに合わせてくれてたんだ」
とはいえメルクの家庭の味はアフィも気に入っている様子。
メルクの家庭だけの秘伝があるとメルクは言う。
それについては家庭の秘密なので教えてくれない。
「アフィ、いるか」
「あれ、流じゃん、どうしたの」
「緊急なんだが、軟膏を用意してくれないか、少し必要になってな」
「軟膏ですか、それなら余分に作ったもののストックがあったはずですよ」
「うん、少し待ってて」
突然やってきた流にも丁寧に対応する。
余分に作った軟膏を流に手渡す。
報酬はあとで必ず渡すという事なので、それを信じる事に。
「すまないな」
「そうだ、流さ、お腹空いてない?」
「そういえば仕事で忙しくて昼を食べそびれてたな」
「スープがまだあるのですが、よければいかがですか」
「ならもらっておく、腹が減ったままだと危ないしな」
そんなわけで流に食事をごちそうする事に。
メルクの家庭の味のソーセージのクリームスープ。
流の反応はというと。
「ん、これ美味しいな」
「だってさ、よかったね」
「ソーセージの肉のエキスが染みたクリームスープはいいな」
「それはありがとうございます」
「それに肉が結構入ってて、食べごたえもあるし」
流も美味しそうにソーセージのクリームスープを完食してくれた。
やはり男の子は肉という感じなのか。
なんにしても突然の来訪にも関わらず丁寧に対応したアフィ達も見事なものだ。
「それじゃ俺は仕事に戻るよ、また何かあったら頼むな」
「嵐みたいだったね」
「彼も医者を目指す身として忙しいんでしょうね」
「そうだね、夢って応援したくなっちゃうし」
「おや、アフィからそんな言葉が出るとは」
夢というわけではないが、今のアフィがあるのは拾ってくれた人のおかげだ。
そんな人達には感謝している。
昔は荒れていたアフィだが、今ではすっかり丸くなったようで。
「そういえばアカデミーで免許の更新があるのではなかったですか」
「あ、そうだった、更新に行かなきゃ」
「最近は冷え始めていますから、一枚羽織った方がいいですよ」
「はーい」
「この慌ただしさもうちの妻の魅力ですかね」
錬金術士の資格は免許制なので、定期的に更新に行かないといけない。
更新は基本的にアカデミーで行われる。
上着を一枚羽織ってアカデミーに向かう事に。
「更新する免許証は持ちましたね」
「うん、ここにきちんとあるよ」
「ならよろしい」
「それじゃ行ってきまーす」
「忙しないのは変わっていませんね、昔のままだ」
そうしてアフィはアカデミーに免許の更新に向かった。
更新自体は無事に終わり、これからも働ける事に。
筆記は苦手だが実技は得意なのがアフィだ。
最初の試験も実技で大量に得点を稼いだのは有名な話である。




