たまの一人
昨日からメルクが数日留守にしているアフィの家。
そんな事もあってかたまの解放感を楽しんでいる様子。
とはいえアフィは掃除などの家事が苦手なので、帰ってくる頃が心配でもある。
そんな話を聞いてか思わぬ助っ人が来たようで。
「先生本当によかったの?」
「構わないわよ、仕事頼みに来たら旦那様が留守っていうし」
「それにしても先生って掃除とか料理出来たんだ」
レーメルはオフの日は干物生活の独身貴族だ。
とはいえ家に人を呼ばないだけで、決まった時期にまとめて掃除などをするらしい。
「でもまさか先生にこの歳になってお世話になるなんてなぁ」
「いつまで経っても生徒は生徒なのよ」
「それでもありがとね」
「ほら、作ってあげたんだから感謝して食べるのよ」
「先生、何気に料理上手いね、とりあえずいただきまーす」
レーメルの料理は凝ったものは作れないが、味は美味しいし量も多い。
その理由としては元々そこそこ食べる方だという事もあるようで。
なので乾麺のスパゲティが500グラムが標準な事に納得がいかないという。
「それにしてもスパゲティのソースまで手作りとは」
「出来合いのものを混ぜただけよ、一から作るとか面倒だもの」
「それでもそれで作っちゃうのは素直に凄いかなぁ」
「私は乾麺のスパゲティが500グラムが標準なのがとにかく納得いかないのよ」
「なんで?」
レーメル曰く乾麺を茹でる時は必ず二束茹でるらしい。
そのため奇数のグラムの束で入っているものは必ず余るという事らしいのだ。
それは東の国からの輸入食品のインスタントの袋ラーメンにも言いたいそうで。
「先生って奇数が嫌いなの?」
「別に奇数が嫌いじゃないわ、でも食べ物の量が奇数のものは大嫌いかしら」
「あー、それってつまり二つ食べるから」
「そうなのよ、袋のラーメンもスパゲティも5なのが本当に腹が立つというか」
「先生って二つ茹でるんだ、意外と食べる人?」
レーメルが言うには奇数は綺麗に消費出来ないだけが問題ではないという。
複数人で分けて食べるお菓子なども奇数だと必ず余分が出る。
なのでそういう食品は偶数で売る事を義務化しろとすら思っているようで。
「奇数っていうのは割り切れないの、だから分けられないし、綺麗に消費出来ないのよ」
「それは分からなくはないかも、偶数なら綺麗に消費出来るもんね」
「数字とは関係ないけど、ほんの少しだけ残す人は今すぐ絶滅してくれとも思うわね」
「それってボトルとか紙とか?」
「そう、残り少ないのに使い切らずに残す人には殺意すら覚えるわよ」
レーメルは几帳面というわけではない。
だが綺麗に使い切れないという事に対しては異様に嫌悪感を覚えるという。
ほんの少しだけ残して使い切らない人は刺してやろうかと思いそうになるという。
「先生って別に几帳面ってわけではないよね?」
「掃除とかは決まった時期にまとめてやるわよ、頻繁にやるとか面倒だもの」
「なるほど、確かにそっちの方が楽そうだね」
「私は別に綺麗好きでもないし几帳面でもないんだけど」
「その割に使い切れない事には怒るんだ」
レーメルが言うには使い切れない、または使い切らないという事がとにかく嫌いらしい。
なので奇数の乾麺などは許せないし、少しだけ残す人を嫌悪するという。
アフィも気持ちは分からなくはないようで。
「でも分からなくはないよね、そういうのを見るとあたしもイラッとするし」
「本当に奇数の食品は考えた人を疑うし、使い切らない人は人間性を疑うわよ」
「先生の考え方は分かった、確かに奇数は悪い文化だね」
「それより食べたら食器洗うの手伝いなさい」
「はーい」
そんな話をしながら先生の茹でたスパゲティを平らげる。
レーメルの生活が少し垣間見えた気がしたのもある。
レーメルは奇数の食品と使い切らない人は殺意を覚えるほど嫌悪している事も。
奇数の食品は悪い文化、綺麗に使い切れない人は人間性を疑う、まさにレーメル節だった。




