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兄弟の溝

今日も仕事を終えて外でのんびりしようとするアフィ。

そんな中カイトの姿を見かける。

どこか悩んでいる様子のカイト。

彼が今に至るまでの苦労はその環境を知らずして語れない。


「ん、んー…最近は涼しくなってきたね」


「そうですね、ただ上着はまだ早いですが」


「だね、おや?カイトだ、どうしたんだろ」


広場のベンチに座ってどこか考えているような感じのするカイト。


一応声をかけてみる事に。


「おーい、カイトー」


「ん?ああ、アフィさんとメルクさんですか」


「どうかしましたか?」


「いや、家から手紙が届いたんですよ、黙って出てきたのにどうやって知ったのか」


「カイトの実家からって事?」


どうやって知ったかはともかくとして、カイトの家から届いたという手紙。

そこにはカイトを心配する様子が綴られていた。


だがカイトはどこか苦虫を噛み潰すような顔をする。


「今さら何を言うんだって感じですよ、僕を追い詰めた張本人のくせに」


「カイトは家族とは険悪なの?」


「険悪ってわけじゃないです、僕が一方的に嫌悪してるだけです」


「何かあったという事ですか?」


「僕を天才の弟してしか見てこなかった、だから僕は逃げたんです」


カイトがこの国に来た理由、それは兄と比較される事が嫌になって逃げたからと言う。

カイトは常に天才と呼ばれる兄と比較され続けてきた。


誰もカイトを一人の人間として見てくれない事が嫌になったのだ。


「僕はずっと天才と呼ばれた兄と比べられてきた、僕にも才能はあったのは確かです」


「比べられる事が嫌になって、それはいつしか溝を作ってしまった、ですか」


「そうです、剣術の大会でも僕は天才の弟としか見てもらえない、僕個人はどこにもいない」


「兄が優秀すぎた事が弟にも期待をしてしまう、それが辛かったんだ」


「僕は兄じゃない、兄のようにはなれない、でも周りはみんな天才の弟ともてはやすんです」


そうする事でいつしかカイトの心は歪んでいった。

今の相手を煽るような性格になったのもその頃からだという。


剣術の大会でも相手を煽っては叩きのめす、道場などでもいさかいは当たり前だったそうだ。


「結局僕は嫌で嫌で仕方ないんですよ、兄の弟としてしか見てもらえないのが」


「今の性格になったのもそれが理由ですか」


「そうですよ、僕は天才の弟じゃない、僕は僕だと認めさせたかった」


「でも天才と呼ばれる兄を持ってしまった宿命には抗えなかった、だね」


「故郷での剣術大会で徹底的に相手を叩きのめして優勝して、あとは逃げたんです」


その抱えていたものが爆発した瞬間だったのだろう。

だがカイトは相手を怪我させるような事だけは決してしなかったという。


怪我をさせない程度に徹底的に叩きのめしていたのだと。


「この国に来て誰も僕を知らない事に解放感を感じました、気持ちいいのだと」


「誰もカイトさんを知らないこの国なら、比較される事はないのだという事ですか」


「そうです、流という友人も出来ましたしね」


「比べられ続けたから、カイトは歪んだって事なんだ」


「頑張れなんて言葉は強い人にしか効果はないんです、弱い人に言っても、潰れるだけで」


比較されてきた事で歪んでしまったカイトの心。

それは兄へのコンプレックスが歪な形となって形成されたものでもある。


それからカイトは変わったと当時の周囲は言っていたらしい。


「でも僕は剣の道を諦めろなんて言われたら断りますよ、そんなの死んでもごめんです」


「お兄さんとは異なる剣の道を進む、そう決意したんですね」


「そうです、同じ道を進むから比較される、なら異なる道を進めばいいだけです」


「カイトの強さの原動力って憎しみだったんだね、でもそれも立派な動機だよ」


「剣の道というのにも様々です、剣にも種類はありますからね」


憎しみがカイトを突き動かす。

それは誰も見てくれなかった人達への復讐なのだろうか。


「さて、では弟子に剣でも教えてきます、人に教えるのも楽しいですから、それでは」


「カイトも辛い人生だったのかな」


「比べられるというのはそれだけ重圧になるものですよ」


弟子が出来たカイトはどこか晴れやかでもある。

誰もカイトを知らないこの国で見つけた幸せ。


流という友人がカイトを理解してくれる。


歪なその心にも光明は差しているのだろう。

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