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エロイドが見たもの

今日も今日とて変わらずの暮らしを送るアフィ。

そんな今日は家でメルクに頼まれて教会のイベントで使う道具を作っていた。

そこにエロイドが周囲を警戒するように訪ねてくる。

何やら話があるとの事だが。


「アフィ、そこは花の形ですよ」


「あ、うん、分かった」


「まもなく教会の夏の祝祭、気合いを入れないといけませんね」


どうやら教会で行われる祝祭の道具を作っているらしい。


これは錬金術では作れないので、アフィも不器用ながらも手作業である。


「失礼する」


「あれ?エロイドじゃん、仕事でも頼みに来たの?」


「…家の周囲に人の気配はないな、少し相談がある」


「家の周囲を警戒しているという事は何か危険な事ですか?」


「なるべく他には訊かれたくないのでな」


それで何かを察した様子のメルク。

そこで家の中に防音の魔法を使う。


これで家の中の話が外に漏れる事はないという。


そして改めて話を聞く事に。


「それで、何があったか話してもらえますか」


「先日山に強い魔物に挑みに行って、帰りに迷ってしまってな、山小屋を見つけたんだ」


「山小屋?いや、肝心なのはその先か」


「ああ、そこには女性型の獣人の魔物がいた」


山小屋にいたのは女性型の獣人の魔物だとエロイドは言う。

アフィとメルクはそれがただの魔物ではないと感じ取る。


「近年は魔物の数は減っている、少ないですが根絶された国もある、ですよね」


「ああ、それでその山小屋の魔物は穏やかに私を家に招き入れてくれた」


「まさかその魔物は人を襲うどころか世話をしてくれたっていうの?」


「私は簡単なもてなしを受けた、そこで出されたものは人間の食事だった」


魔物が人間の食事を出してもてなす、この時点で何かがおかしいと二人は感じる。

話からして襲う事はないようだし、人間への敵対心もないと感じたらしい。


それについて国より先にアフィ達に相談すべきと考えたのだろう。


「でもそんな魔物がいるなんて信じられない、本当なの?」


「ああ、休息を取った私はその魔物に下山ルートを教えてもらった、それと秘密にしてと」


「まさか…つまりその魔物は人に対して友好的だというのですか」


「そのまま下山したのだが、あれはなんだったのかと考えてな、相談に来たというわけだ」


エロイドの言う話が本当ならその魔物は人と変わらない生活を送っているという事に。

だが魔物が独りで人間と同じ暮らしを送るとは考えにくい。


つまり誰かがその魔物と暮らしている、または匿っている人がいる可能性がある。


「引っかかりますね、そうだ、家の中に何か不自然な点とかはありましたか?」


「不自然な点…そういえば食器などが三人分あった、あと大きな剣があったぐらいか」


「三人分の食器…つまり暮らしている数は三人…大きな剣はそういう職業の人…?」


「目に留まったのはそれぐらいだ、あとはもの凄く質素だったからな」


その話から察するのは一人で暮らしている可能性は低いという事。

何者かがその魔物と同居しているか匿っているという事。


そこでアフィは一つの話を思い出す。


「そういえばエルメナって山の中で暮らしてるって言ってたよね?」


「エルメナか、あいつは素性がさっぱり掴めない、それ以上の情報もない」


「可能性はあるかもしれませんね」


「まさかその魔物と一緒に暮らしているのはエルメナだと言いたいのか?」


だが今ある情報から考えられるのはそれが有力と言える。

素性がほとんど謎のエルメナ、彼女の素性にその魔物が関係しているかもしれないと。


「エロイドさん、近いうちに僕とアフィをそこに連れて行ってもらえませんか」


「それは構わないが…まさか討伐とか言わないだろうな」


「それは全部を確認してから決める、それまでは絶対に手は出さない」


「…分かった、では三日後に…この地図に印をつけた山の入口で待っている」


地図に印をつけた山の入り口。

真実を確かめに行く、メルクも今回は独断で動く事を約束する。


「話はそれだけだ、私はそろそろ失礼する、ではな」


「人の生活痕のある山小屋と不思議な魔物…」


「調べてみる必要はある案件ですね」


そうしてエロイドは工房をあとにする。

三日後にその山へと登る事に。


エロイドが見たもの、その真実を確かめに行く。


真実は本や教えの中にはないのかもしれない。

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