弟子との関係
今日も変わらずの日々を送るアフィ。
そんな中最近見ていなかったカイトに出会う。
今日は一人でいるようだが、そういえばと以前弟子になったロイドを思い出す。
それについてもカイトに聞いてみる事に。
「ん、んー…すっかり夏だねぇ」
「そんな格好だと日に焼けて痕になりますよ」
「別にいいじゃん」
すると広場のベンチで飲み物を飲んでいるカイトを見つける。
最近見ていなかった事もあって、声をかけてみる。
「おーい、カイトー」
「ん?ああ、アフィさんじゃないですか」
「久しぶりですね、最近見ていなかったですが」
「少しドジやって入院してたんですよ」
入院していたとはいうものの、今はすっかりよくなった様子。
アフィに言えた事ではないものの、心配はしていた様子。
「ならよかったんだけど、今日は一人なの?」
「ええ、弟子にも心配をかけたので退院してからはしばらく付き合ってました」
「意外と弟子思いなんですね」
「それで今日はお互いにオフという事です」
退院してからは心配させた償いとしてロイドによく構っていたらしい。
そして今日はお互いにオフという事にして、休んでいたとか。
それはそうとロイドは強くなったのか聞いてみる。
「あのロイドっていう新米は強くなったの?」
「ええ、僕の教えをよく理解してますし、飲み込みも早いですよ」
「カイトは意外と教えるのが上手いんでしょうか」
「兄の影響はあるんでしょうね、兄も教えるのは上手かったですから」
カイトの兄、それはカイトが憧れ続けた末に歪んでしまった存在。
ずっと兄と比較され続けた末に今のカイトの人格は形成された。
よくも悪くもカイトの人格形成に一番大きく影響したのだろう。
「お兄さんの事が好きなの?」
「好き、だと思いたいですね、僕は兄がいたからこんな性格になったんですし」
「兄弟がいるというのは常に比較されます、そうだったのですよね?」
「ええ、だから僕が教えるという立場になったのも嬉しいんだと思いますよ」
教える立場になったのが嬉しい。
それは紛れもないカイトの本音であり本心だろう。
常に兄と比較され、兄の背中を追いかけ、その結果関係は険悪になった。
誰かと比べられるという事がカイトにとってのトラウマなのだ。
自分を一人の人間として見て欲しかった。
自分はその兄の弟でしかないと思い知った過去。
だから兄とは違う道を選び、逃げるように飛び出した事も。
「僕はロイドに教えるのが凄く楽しいんです、でも僕のようになって欲しくない」
「カイトはカイトじゃないの?お兄さんにはなれないんだからさ」
「そうですね、どんなに努力しても兄にはなれない、だから逃げたんですよ」
「ですがあなたの教えはきっと彼に伝わますよ」
シエスタもカイトの本気は分かっているのだろう。
人に教えるというのは自分と同じにする事ではない。
自分の適性を知る事が教わるという事のゴールなのだ。
様々な事をやってみて、簡単に出来てしまった事がその人の才能。
そんな風にも言ったりするものなのだから。
「カイトはロイドの事が好きなんだね」
「そうでしょうね、まさか僕に弟子が出来るなんて思いませんでしたよ」
「だからこそいろいろ思うところはあるんですね」
「はい、僕のようになって欲しくない、そう思いますし」
カイトも教える立場になって何かと気づいた事はある。
だからこそロイドに自分の適性を気づかせてやりたい。
カイトが今の道を選んだのも兄とは違うと証明したいからの結果だ。
そうしてカイトも適正を知り、今のような強さになったのだから。
「あたしはカイトを応援してるよ」
「ありがとうございます」
「ロイドもいい先生を持ちましたね、ふふ」
「さて、また明日からいろいろ教えないと、では僕はもう行きますね」
そんなカイトはどこか晴れやかだ。
それは今がそれだけ充実しているからだろう。
逃げた先で思わぬ出会いをしたからこそなのかもしれない。




