魚を捌く
今日も変わらぬ日々を過ごすアフィ。
そんな中メルクが知り合いから魚を譲ってもらったらしい。
メルクは料理こそ得意だが、魚を捌くのは苦手らしい。
普段家で食事に出る魚は最初から捌かれているものだというので。
「これどうしましょうか」
「美味しそうなお魚だよね、でも旦那様は魚は捌けないんだっけ」
「ええ、どうにもこのグロッキーな目が苦手でして」
とはいえ生魚なので早くに食べないと腐ってしまう。
そうなったら流石に食べられないので、どうしたものか考える。
「でも美味しそう、じゅるり」
「捌こうにも僕にはこればかりは無理ですよ」
「むぅ、あたしも魚なんて捌いた事もないし…」
「おい、返事がないから勝手に入るぞ」
後ろから声がしたと思ったらそこには流が来ていた。
どうやら仕事の依頼のようだが。
「ん?なんだその魚、美味しそうな鯉だな」
「鯉って食べられたっけ?」
「たぶんそいつは食用の鯉だろ、観賞用とは違うやつだよ」
「なるほど、でも我々は魚は捌けないんですよ」
「仕事を頼みに来たんだが、ついでだ、そいつを調理してやるよ」
流は魚を捌けるらしい。
ちなみにこの魚は食用の鯉であり、観賞用とは別の目的として育てられたもの。
鯉は煮魚にすると美味しいと流は言う。
そもそも鯉は淡水魚なので、海水魚とは向いている調理法も違うという。
「捌いてやるから仕事の完成品一個増やしてくれ」
「それぐらいならまあ、それじゃ頼もうかな」
「ちょうどお昼時ですからね」
「了解、キッチン借りるぞ」
そんなわけで流のお料理教室の始まりである。
だが流が料理が出来たというのはなんか意外に思うアフィ。
そもそも流は単身この国に留学しているので、お金の工面などから自炊をしている。
料理はそんなに上手い方ではないものの、魚を捌ける程度の腕は持っている。
高度な技術を使う料理なんかは流石に無理だが、自分で食べるものぐらいは作れる。
よく魚屋で一匹を買って捌いていたりするという。
そもそも流の国は魚は主食なので、本人も魚が恋しくなるのでたまに買うのだとか。
それもあってか流は鯉を手早く捌いていく。
「まずは鱗を綺麗に取って、こっちに取ってっと」
「鱗も使うの?」
「鱗はから揚げにする、身の方は甘露煮にするからな」
「なんか手慣れてるね」
ちなみに鯉はきちんと火を通さないと寄生虫病になる事もあるので、必ず火を通す事。
東の国では生魚も食べるのだが、それは衛生管理が徹底されているからこそ出来るのだ。
なお鯉は海から離れた内陸の国では貴重な魚の食材でもある。
今でこそ肉によるタンパク質の摂取も当然だが、昔は内陸では貴重なタンパク源だった。
そうしているうちにどんどん調理は進み鯉の甘露煮と鱗のから揚げが出来上がる。
いい匂いが立ち込めてきたようだ。
「ほら、出来たぞ」
「おぉ~、こいつは美味しそうだ」
「鯉ってこんな風に調理するものなんですね」
「淡水魚は海水魚とは向いてる料理も違うからな」
とりあえずその鯉をいただく事に。
その味はというと。
「ん、これ美味しい、流って料理上手なんだね」
「別にそんな得意でもないぞ、自炊してるうちにこれぐらいは出来るようになっただけだ」
「それだけでも大したものだと思いますが」
「こっちの鱗のから揚げも美味しいね、止まらないよ」
それはそうと本来の目的である。
流は今度必要になるからとの事で、仕事を頼みに来たのだ。
「それと仕事、これを頼めるか」
「ふむ、分かった、やっておくよ」
「期限までにはやらせますので」
「食べ終わって食器は洗ってやるから、仕事頼むぞ」
そうして思わぬ助っ人の手で美味しく魚をいただいた。
流は自炊で料理は上手くなっているらしい。
何事もやってみるのが大切である。




