夫婦の時間
いつものように仕事をこなしつつ変わらぬ生活を送るアフィ。
そんな今日はメルクに言われ家の掃除をしていた。
アフィは片付けが苦手なため、結構散らかってしまう。
一方のメルクは几帳面な性格なので、普段から整理整頓しているようだ。
「見事にあたしの側だけ荒れてるねぇ」
「あなたががさつな性格のせいですよ」
「言い返す言葉もない、とりあえず掃除しちゃいますか」
だがそこは錬金術士、ただでは転ばない。
錬金術で作った生きてるゴミ箱とほうきを持ち出してくる。
「アフィ、あなたそういうところは抜かりがないですよね」
「道具は使ってこそだよ、そうしなきゃただのガラクタでしょ」
「サボりたい言い訳にしか聞こえませんよ」
「シエスタも手伝う」
そんな事も話しながらゴミ箱とほうきがテキパキと掃除をしていく。
その一方で大切なものなどはきちんと確保していく。
すると懐かしいものなども出てきたりするのがお約束だ。
やはり掃除はそうして脱線するものなのだろう。
「これ昔旅行に行った時のお土産だ、こんなところにあったのか」
「あなた、本当にそういうの好きですよね」
「童心を忘れていませんね」
「なんだろう、褒められてる気がしない」
とりあえずそんな事も話しながら掃除はきちんとこなしていく。
すると他にも何か出てきたようで。
「あー、これ、アカデミーの卒業で書いた論文だ、また懐かしい」
「字が汚いのは今もなんですね、読めるだけいいんですけど」
「それ言ったら旦那様なんてめっちゃ達筆じゃん、達筆すぎて読めないんだけど」
「字は綺麗でも汚くても困るという事ですか、難しいですね」
アフィは字は汚いが一応読める、メルクは達筆すぎて逆に読めない。
結局字を書くというのは綺麗さよりも相手に伝わるかどうかが大切なのか。
達筆なのは確かに凄い事ではあるが、達筆すぎると読めない人は確かにいる。
実際あまりに達筆すぎて読めないという話はなくはない。
字を書く上での大切なポイントはやはり伝わるという事なのだろうか。
「それにしても、論文をそんな雑に扱う辺りあなたらしいですよね」
「卒論だからねぇ、今は学会で発表してるけど、相変わらず字が汚いって言われるよ」
「そこは昔から変わっていないという事なんでしょうか」
「そうですね、少なくとも僕が知る限りはマシになった程度ですよ」
駄弁りつつも掃除はきちんとしているのが凄いのか、一応綺麗にはなっていく。
シエスタも汚れなどを検知してくれるので助かる。
アフィの雑な性格は昔からだし、メルクの几帳面な性格も昔からだ。
そんな正反対の二人が街でも評判の夫婦なのだから分からないものである。
「大体は終わったかな、こんなものだよね?」
「ええ、それだけ出来ていれば問題ないでしょう」
「生きてるゴミ箱とほうきは役目を終えたようですね」
「掃除の時はまた作らなきゃね」
そういうちゃっかりしているところは知恵が働くらしい。
掃除も終わったので休憩という事でメルクがお茶とお菓子を用意してくれた。
「ハイビスカスティーとサンドクッキーですよ」
「流石旦那様、愛してる!」
「メルクのお菓子は美味しいですからね」
「ではいただきますか」
メルクのお菓子はアフィも大好きなものだ。
聖騎士団のアクルスもメルクのクッキーが好きだし、それだけの味なのか。
教会で開くイベントなどでも振る舞われたりする。
メルクは元々家事全般が得意なので、当然料理も得意だ。
アフィの胃袋はガッチリ握っているという事なのだろう。
「それにしてもたまはいいものですね」
「だね、お互い仕事もあるし、一緒の時間は大切にしなきゃ」
「正反対なのに幸せそうなのは、それだけの気持ちなんでしょうね」
「こういう何も起こらないのが幸せなんだろうな、きっと」
たまの夫婦の時間も水入らずで過ごしている。
正反対の二人が幸せそうに暮らしているのは、そこに相手を想う気持ちがあるからこそ。
それでもアフィの周りでは何かと起こるのも人生なのかもしれない。




