エルメナからの仕事
仕事を適度にこなしつつ変わらぬ日々を送るアフィ。
そんな今日はエルメナから仕事に付き合って欲しいと言われる。
それはある依頼でドラゴニウムという金属が必要との事。
アフィに作ってもらう代わりに材料を取りに行くのた。
「ごめんなさいね、手伝ってもらって」
「別にいいよ、どうせ仕事は一段落してたしさ」
「ですがエルメナさんが自分から素材を取りに行くのも珍しいですね」
今回はシエスタも一緒に来ている。
エルメナは本来相手に材料を用意させるのだが、今回はどういう風の吹き回しなのか。
「でもドラゴニウムね、あれ材料が竜素材ばかりだから作るの大変なんだよ」
「それは分かってるわ、あたしも強いとはいえドラゴンに単独で挑むのはしないし」
「エルメナさんほどの剣士でもドラゴンは強いものなんですね」
「勝てないわけじゃないわよ?ただ相手ぐらい弁えてるって事」
若くして剣聖の称号を持つエルメナ。
その剣は本物である事はアフィも理解している。
それと同時に噂についても気になっている。
かつての騎士団の隊長。
それの娘ではないかという噂も。
「着いたわ、竜の巣よ」
「ここは流石に油断してられないか」
「ええ、気を引き締めましょう」
気を引き締めて竜の巣へと足を踏み入れる。
そこは幼竜から巨大な竜まで、あらゆる竜が住む魔境。
下手に足を踏み入れれば餌になってしまう場所だ。
「鱗とかは受け取ってるんだけど、肝心のものが必要なのよね」
「竜の体液か、あれはそれこそ倒さないと手に入らないしね」
「厄介なものを要求されるものですね」
「あたしもついてるから、援護があればなんとでもなるわ」
「頼もしい限りです」
そんな竜の体液を求めドラゴンを探す。
その体液は大人のドラゴンのものでないといけない。
そのため強敵に挑む事になるのは必然である。
「来るわよ、武器を取って」
「相変わらず大きいねぇ、まあドラゴンなんて慣れたものだよ」
「慢心してはいけませんよ」
「行くわよ!」
相手は大型の翼竜。
空を飛ぶ相手でもなんとでもなるのが今のアフィ達だ。
「凍り付け!」
「錬成!蜂の巣です!」
「紫電よ、我が腕を伝い天翔ける翼を貫け!」
綺麗な連携がドラゴンに決まる。
とはいえこの程度で倒れてくれないのはお約束。
エルメナの剣はよく効くし、シエスタの対空攻撃も効果は大きい。
そこにアフィの特製爆弾が炸裂する。
「ビリビリだよ!」
「撃ち抜け!」
「死兆星よ、その脈動を断ち切れ!」
そんな攻撃も相手が大型という事もあり当たりやすい。
その後も休まずに攻撃を浴びせ、ドラゴンを地に落とす。
「やったかな」
「…はい、意識は失っています」
「ならさっさと体液を採取しなきゃ」
「ドラゴンはこの程度じゃ死なないわ、早くして」
とりあえずは気絶しているうちに体液を確保する。
あとはなるべく刺激しないように巣を離れる。
そのまま街に戻り、エルメナは仕事に戻っていく。
「ねえ、エルメナの刀鍛冶って街の鍛冶屋じゃないと駄目なの?」
「設備が一番整ってるのがここなのよ」
「なるほど、それでなのですね」
「それじゃあたしは仕事があるから」
そう言ってエルメナは鍛冶屋に戻っていった。
アフィもエルメナが悪い人でないのは理解している。
とはいえやはり噂は気になるもの。
エルメナの正体、その親について。
なぜ普段は山にこもっているのか。
出生に何か秘密があるのか、亜人ではないのか、など。
エルメナは自分の事は多くは語ろうとしない。
だが噂が本当なら、とも考えてしまう。
下手な詮索は余計なお世話、それを胸に秘めアフィも仕事に励む。
「エルメナ、やっぱり何かあるのかな」
「下手な詮索は余計なお世話ですよ」
「うん、分かってる」
そうしてエルメナの剣を改めて凄いと思ったアフィ。
謎多き剣聖の詮索はしない方がいいのだろう。
そう思いつつ甘いものをいただいていた。




