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カイトの望みと流の過去~後編~

お互いの過去について語ったカイトと流。

そこにはどちらも辛い過去があった。

常に比べられ続けたカイトと凄惨なイジメを受けていた流。

それでも今ここにこうしているのは強くなるという決意があったからこそだ。


「それにしても流も結構な過去を持ってるんだな」


「お前に言われたくないけどな」


「違いない、でも結局は因果応報、カルマからは逃げられないんだろうな」


流をイジメていた連中は揃って人生が崩壊している。


カイトも色眼鏡で見ていた連中は今でも兄を追っているのだという。


「どんなに辛くても、生きてるだけ幸せなんだろうな、俺も流も弱い人間だよ」


「俺はこうも思うんだ、自分から死を選べる人間は強いな、って」


「なんでまた?」


「死ぬのが怖くない奴なんて珍しいだろ?自殺出来るのはそれだけ勇気がある、って」


それは流なりの考えなのだろう。

医者になって人を救いたいと願うからこそ、その死を選ぶ事を勇気と呼ぶ。


辛くても生きているぐらいなら死んだ方がいい、それは恐れる事なく命を絶てる事。


死を恐れない人間の方が普通は珍しいと。


だからこそ恐れずに死を選ぶ事は勇気なのだ、と。


「でも人の命を救いたいって考える流がそんな事を言うなんて驚いたな」


「俺が目指してるのはあくまでも病気や怪我を治す医者だ、精神科医じゃない」


「だから、か」


「死を選ぶ人間の気持ちなんて分からないさ、でもそれは勇気なんだろうなと思う」


流が考えるのは追い詰められた人間がどう行動するか。

復讐に走るか無差別殺人を起こすか自殺するか。


どれもとても勇気が必要だと流は言う。


カイトも流もそんな勇気はなかったのだろう。

だからこそ反撃もほとんどしなかったし、再起不能にするとか出来るわけがない。


結局は煽っても大怪我をさせるような反撃はしない。

相手が向かってきてもその反撃は強さを分からせる程度にしかしないのだ。


「戦争では臆病者だけが生き残れる、俺もカイトも臆病なんだろうな」


「勇敢な奴から死んでいくのは戦いにおける常、そんなもんなんだろ」


「俺が反撃もせずに耐えてたのもカイトが比べられても耐えてたのも、な」


「変に反論したりしたらある事ない事言われるのは分かってるもんな」


流もカイトも自分が強くなんかないという事はよく理解している。

ただ今回の無茶は感心しないと流は釘を刺すが。


「でも流も辛かったんだな」


「お前もな、カイト」


「死を選ぶ事は勇気、それは間違ってないのかもな」


「ただ長生きは幸せか、と言われればそれも考えちまうけどな」


長生きは幸せなのか、それは流が医者として考えている人の人生。

長く生きるというのは周囲の人間が自分より先に逝去する事。


よく創作である不老不死は幸せなんかじゃない、それは流の考え。


不老不死が幸せでないのは孤独に勝てるのか、という事のようだ。


そういう問題があるからこそ永遠の命というのが医者として理解出来ないらしい。


「早死も長生きも幸せじゃないと思うんだよな、適度に死ねるなら60ぐらいがいいよ」


「カイトはそれぐらいで死にたいのか?」


「死にたいというか、長生きはしたくないけど早死もしたくないだけだ」


「医者として延命させ続けるのは見てる方も辛いからな、分からなくはないさ」


カイトも流も人生は楽しみたいという考えは共通らしい。

ただ満足出来る人生さえ送れればそれでいい、という事か。


「さて、一週間は絶対安静だから無理はするなよ」


「分かったよ、流石に悪化させたくはないからな」


「ならいい、あとでもう少し詳しく検査するからな」


「はいはい、頼むよ」


カイトと流の過去をお互いに知った二人。

その過去があるからこそ今がある。


強く生きるとはそういう事なのか。


性格が違うのにどこか似ている二人の昔の話。

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