カイトの望みと流の過去~中編~
カイトの過去と望みはただ認められたいという事、それだけ。
そんな中流もカイトに自分の過去を語り始める。
それは想像を絶する壮絶な過去。
因果応報と報いからは逃げられないという事。
「それで、流の話ってなんだ」
「俺さ、中学時代に酷いイジメを受けてたんだ、その時の傷も残ってる」
「イジメって、今は確か大学だからそこそこ前か」
流の過去、それは中学時代の壮絶なイジメ。
そしてイジメていた奴らに大切な人を殺された話。
「中学時代だな、その時男四人と女三人、そいつらにいじめられてた」
「七人って、またえげつないな」
「最初は無視してたんだ、でも次第にそれがエスカレートしてさ」
「反撃をしないのをいい事に調子に乗ったか」
流も最初は無視していた、だがそれによりそのイジメはエスカレートした。
そして何より厄介なのがそのいじめっ子の事だ。
「そいつらはイジメの他にも軽犯罪とかもやってたらしい、でもお咎めなしだ」
「なんでだよ、それこそ警察沙汰じゃないのか?」
「そいつらは親が国の偉い奴らでな、特に主犯格は警察の警視総監の息子だぞ」
「つまり親の権力で全部もみ消してやがったのか、胸糞悪すぎるな」
流をイジメていた奴らは親が地位や権力を持つ存在。
それにより騒ぎになる事すらなく、教師などですら手を出せなかったらしい。
そしてそれはどんどんエスカレートしていったという。
「それでついにブチ切れちまってさ、反撃したんだよ」
「それでどうなったんだ?」
「最初はビビってた、でもそれで俺を庇った友達も一緒にターゲットにされるようになった」
「マジで悪質だな…しかも陰湿そのものじゃねぇか」
流の親友が流を庇った事によりターゲットに加えられた。
それでもそれから手を出す事はしなかったという。
それ以降はそれに耐え続けて中学は卒業したという。
「中学は卒業したんだけどな、それでもそいつらの一人だけがずっと追いかけてきた」
「うわ、下手したら主犯格よりも陰湿じゃないかよ」
「それこそ指を詰めろと言われた事もある、ついでにそいつらは高校でも変わらなかった」
「マジか…権力を傘にやりたい放題なんだな」
だが本当の悲劇はここからだという。
当時流には好意を寄せていた子がいた。
その子は流の事も気づいていたし、知っていた。
だがその恐ろしさに手を出せなかったという、そして悲劇は起こったのだと。
「ある日だな、現場をその子の姉さんが目撃したんだ」
「姉さんなんだな、それで…何があったんだ?」
「そいつらは口封じにその姉さんを強姦した挙げ句口封じで殺した、もちろん闇に葬られてな」
「ひでぇ…もうそれは人間じゃねぇ、ただの獣じゃねぇか…」
流が医者を目指すきっかけでもあったその事件。
その好意を寄せていた子はそれから不登校になり塞ぎ込んだという。
流は密かにその子の家を訪れて様子を聞いていた。
自分のせいでその子の姉さんは殺された、それからは気持ちを胸に仕舞っていた。
この国に行く事もその子には告げずに来たという。
その子の家族は訴えを起こしたが、権力の前に勝てるわけもなかったらしい。
「それで、それからはそいつらはどうなったんだ?」
「順風満帆に大企業に就職だ、あとその警視総監は祖父がヤクザで繋がってた」
「マジかよ…どんだけ腐ってやがんだ…」
「だが神様は見てるんだな、因果応報ってのからは逃げられないらしい」
流の言う因果応報、それはそこからのそのいじめっ子の末路らしい。
そいつらが就職して一年ぐらい過ぎた日の話。
そいつらの過去にやっていた事が一斉にバレたという。
警視総監の話も瞬く間に広がり、大きく燃え上がる。
権力ではどうにもならないぐらいに燃え盛ったという。
「過去の悪行が今はまだ発展途上のインターネットってやつに全部ばらまかれたらしい」
「それでそれが一気に拡散して大炎上、そいつらを庇えなくなったか」
「それでそいつらは全員会社をクビ、親も全員職を追放されたって聞いた」
「まさに因果応報、カルマってやつからは逃げられない、か」
「それからはどこも雇ってくれない、家庭は崩壊、死んではいないが悲惨な事になってるらしい」
「誰がやったんだろうな、でもなんかスカッとする話ではあるけど」
流もその話を機に少し胸をなで下ろしたと同時に、今は医者になるために努力している。
好きだった子の姉さんのような悲劇を起こしたくないという気持ちで。
「インターネットってすげぇな、今はまだ発展途上の技術なのに」
「だからこそ俺達も油断は出来ないけどな」
「未来はもっと凄くなりそうだ、辛いのに話してくれてありがとな」
「カイトもな、お互い人生これからだ」
そんなカイトと流の過去の話。
それはお互いに暗闇の中で生きていたという過去。
それでも二人は生きている。
認められる日は遠いかもしれないが、それでも前を向いている。
後編に続きます。




