ガネクトの人気
今日も今日とて変わらぬ生活を送るアフィ。
仕事を定期的にこなしつつ外にもよく出ている。
そんな中ガネクトが囲まれている場面に遭遇する。
アフィは知っているが、ガネクトは女性からの人気が高いそうだ。
「すみません、助けてもらって」
「別にいいよ、相変わらず女の人にモテるよね」
「本当に、なぜなのか…」
ガネクトが女の人に囲まれていたところをアフィが引っ張って連れたきた様子。
ガネクトの工房にはよく女性客が仕事を頼みに来るらしく、その人気が窺える。
「でもガネクトって意外とハンサムだよね、女の人なのに」
「巻物に宿っていた時から女だって分かってましたよね、あなたは」
「まさか男っぽい名前だけど本当に女の人とはね」
「世の中には男のような名前の女の人も多いですよ、逆も然りです」
なんにしてもガネクトが女性人気があるのはその顔立ちからなのか。
本人も困ってはいるものの、仕事なら断るわけにもいかないそうだ。
今の生活に満足はしているものの、街に出るとよく追い回されるのが悩みらしい。
ちなみにガネクトは動物が苦手と本人は言い、犬や猫に近寄れないらしい。
それもあってかペットを飼っている人を相手にすると顔が真っ青になるという。
触るなど以ての外で、近寄るのさえも怖がる程度には重度の動物恐怖症なのだ。
「そういえばこの前動物用の薬頼まれて、顔面蒼白だったでしょ」
「ああ、それはもう怖かったです、調合が手が震えてまともに出来ませんでしたよ」
「でもあたしも分かるかも、あたしは犬が苦手だし旦那様は猫が苦手だからねぇ」
「私はどっちも苦手なので、それはもう動物なんて相手にしたくもないですよ」
アフィがついこの前顔面蒼白のガネクトの介抱をしたそうで、冷や汗だらけだったとか。
その理由は依頼人のペットの犬に使う薬を頼まれたかららしい。
ガネクトの動物恐怖症はかなりの重症で、近寄る事さえも怖がるのだ。
向こうから近寄ってくれば条件反射で回避行動を取ってしまうと本人は言う。
本人曰くペットを飼うなんて理解に苦しむし理解すらしたくないとすら言う。
ガネクトが心の底からの動物恐怖症な事が窺える言葉だとアフィは思っていた。
「でもなんでそんな動物が怖いの?」
「話すと長くなりますが、それでもいいなら」
「ならいいや」
「はぁ、女性の人に人気なのはまだしも、ペットを飼っている人が多いんですよ」
ガネクトは女性人気が高い一方で、ペットを連れてくる女性が多いのが悩みらしい。
動物恐怖症のガネクトからすれば工房にペットが踏み入るなど死活問題だ。
それこそ毛の一本でも入れたくないとすら本人は言う。
しかもガネクトの動物恐怖症は犬や猫に留まらず、うさぎやハムスターも無理なのだ。
ペットとして飼える動物はほぼ全てがアウトなのだという。
過去に何かがあったのは確かだとアフィは思うが、長い話になるそうで聞かないでいる。
「でも最初に聞いた時は意外だなぁって思ったけどね」
「それこそ世の中のペット用の動物が絶滅しないかなと考えた事もありますし」
「それは流石に過激すぎ…になるぐらい重症なんだね」
「身の毛がよだつんですよ、もう恐ろしくて恐ろしくて」
「本当に何があったんだろう…」
過激な思想になる程度の動物恐怖症、それがガネクトなのだとアフィは理解している。
アフィも犬が苦手なので気持ちは分からなくもないのがあれなのだが。
メルクは猫が苦手という事もあり、夫婦揃って動物を飼えない条件が揃っている。
ガネクトがアフィ達夫妻と親しくなれた理由はそこなのかもしれない。
やはりシンパシーは大切なのだろう。
「さて、では私は仕事に戻ります、あなたも仕事をしなさい」
「はーい、それにしても仲良くなれた理由って分かる気がする」
そんな事もありガネクトは仕事に戻っていった。
なおガネクトの工房の扉には動物禁止の札がかけられている。
それだけ怖いのだろうとアフィは思っていた。
女性人気と動物恐怖症に挟まれる苦労があるのは大変なのだと改めて思う。




