先生は変わらず
仕事をこなしつつ自由な時間も確保しているアフィ。
そんな彼女も以前は学生だったわけで。
その時の恩師とは今も交流はあるので、やはり人はいいらしい。
メルクはそんなアフィの恩師をあの荒くれを手懐けた人として尊敬しているらしい。
「ん、んー…はぁ」
「家にいるとそうやってダラダラしてますよね」
「別にいいじゃん、家でぐらいさ」
すると家の扉のベルが鳴る。
メルクが出るとそこにはアフィの以前の担任だったレーメルが来ていた。
「あなた、本当に変わってないわね」
「ありゃ、先生、何か用?」
「個人的な用事よ、いつもの頼んでいい」
「またですか、まあ仕事をくれるだけいいのですが」
「別にいいよ、数は?」
レーメルは卒業後も私的な仕事を依頼してきたりする。
それは心配しているからの様子見なのか、それともなのかは分からないが。
「そうね、20ぐらい頼むわ」
「分かりました、期日までには届けますので」
「それより先生、相変わらず休みの日は干物なんだね」
「うるさい、結婚したら自由がなくなるからしないだけよ」
「夫婦の前で言うセリフですかそれ」
なんにしてもレーメルはそんなオフの日は干物と化す。
基本的に外には出ずに家で読み溜めていた本を一気に読破したりしている。
こうも見事な切り替えの上手さはアフィも見習うところはあるとすら感じる程度には。
今回は以前作ったお茶が切れそうなので追加分を頼みに来たらしい。
「先生、相変わらずお酒が飲めないんだね」
「あなたも飲めないじゃない、人の事言えないわよ」
「レーメルさんも妻もお酒は全く駄目ですからね、体質なんでしょうか」
「あんなもの美味しくないわよ、美味しいっていう人の気持ちが分からないわ」
「それに飲むと気持ち悪くなるしさ、好きな人には悪いけどどこがいいのさ」
アフィもレーメルも酒はからっきしである。
その一方でメルクは飲み比べで酒瓶を軽く5本は空にする酒豪である。
とはいえ聖職者という立場なのか、普段はそんなに飲まない。
祝いの席などでは勧められれば飲む程度である。
だが意外と負けず嫌いなのか、飲み比べを挑まれれば水のように酒を飲むのである。
今まで飲み比べでメルクに勝った人はいないと酒場でも語り継がれる酒豪なのだ。
「なんにしても例のお茶、追加で頼むわね」
「うん、それにしても先生はコーヒーとかは飲まないの?」
「私はお茶派なの、無糖の紅茶にミルクだけ入れて飲むのが好きなのよ」
「しかしレーメルさんは紅茶は無糖派なんですね」
「コーヒーでも紅茶でも私は無糖にミルクだけよ、それが一番飲みやすいの」
一応コーヒーも飲むには飲むらしい。
ただレーメルはやはり紅茶派なのだろう。
アフィに頼むものは大抵はお茶菓子か紅茶だ。
錬金術で作ったものは独特の味があり、それがリフレッシュになるそうで。
「そういえばメルク、あなたまた飲み比べで大男を叩き潰したそうね」
「お恥ずかしい、基本的に祝いの席でしか飲まないようにしているつもりなんですが」
「旦那様の体ってどうなってんのかな、あれだけお酒飲んでも健康体そのものだし」
「別に飲ん兵衛ではないですからね、ただ酒場に行くとよく絡まれるんですよ」
「それだけ知られてるみたいね、聖職者なのに酒豪っていうのも奇妙な話よ」
アフィとレーメルは酒が全く飲めないので、メルクが超人に見えてしまう。
実際メルクが酒を飲んで酔った所を一度も見た事がないそうだ。
とはいえ食の方は大食いというわけでもない。
普通の人より少し多く食べるものの、それでも腹八分目なのだ。
普通より多く食べるという点はやはり妻との生活でカロリーを使っているからなのか。
「なんにしても、頼んだわよ」
「はーい、きちんと届けるからね」
「それじゃ、明日は仕事だから、お邪魔したわね」
「変わらないなぁ、でも先生はそれでこそかもね」
そんなレーメルも今日はオフなので帰ったら衣服をパージするのだろう。
だらしない格好でダラダラしながら本を一気に読破する。
食事はズボラ飯だが、一応自炊しているらしい。
それなのに仕事ではシャッキリポンな姿でやってくるオンオフの切り替えの上手さである。




