9話
「ふぅ」
夜、光を出す魔道具により照らされた部屋で一人俺は最後の本を読み終えた。ルナリアはもう自分の部屋へ帰った。
ちなみに、ルナリアの部屋は隣だ。何かあったときにすぐ来れるようにだと。
適正なしということが判明して数日俺はずっと本を読み続けた甲斐あり図書室にあった魔法に関する本をすべて読み終えた。
「結局適正なしで魔法を使うのは無理ってことしか書かれてなかったな」
読んだ本の中には適正なしで魔法を使えないかという実験について書かれていたものもあったが使えないということが書かれていた。だが、ここであきらめるわけにはいかない。
「ここからは自力で探すしかないか」
魔法に関する知識は本を読んで得ているのでその知識を活かしてどうにかしなければいけない。
「一番興味深かったのはこれかな」
手に取った本は『魔法を使用する際の魔力の変化』と書かれた本であった。この本には魔法を使用する際に魔力が各属性に合わせて変化していると書かれていた。
そして、これが一番重要なことだがどうやらその属性の適正がないものが魔法をしようした際には魔力が正しく変換されないために魔法が使用できないと書かれていた。
つまり、魔力が正しく変換できれば魔法が使用できるということだ。
さらに、どのように魔力が変化しているかも書かれていた。それは魔力が様々な色に変わっているのだと。例えば、火属性の魔法の場合魔力は赤色に水属性なら水色にといった感じに変化しているのだ。そして、どの属性がどの色なのかは適正を見る際の色、つまりあの水晶に映し出された色に変化している。
この本には各属性がどの色なのかまで書かれていた。
「つまり、魔力がその色になるようにできればいいんじゃないか」
俺のこの考えは当たっているような気がした。それはいつも俺が快楽を求めるときの勘がそういっている。
なので、目を閉じ自分の中にある魔力を意識する。
実はここ数日、本を読んでいる間に気になったことを試しているうちに魔力の扱いを取得していた。なので、自分の魔力を感じることなどたやすい。
そして、体に巡る魔力を感じ取った俺はその魔力が赤色、火属性の魔力になるように意識したのだが・・・
「・・・ぐがっ!」
魔力を変化しようとした際体中にかなりの痛みが発生した。その痛みのせいで集中が解けた。
「っく!これは・・・」
俺はこの痛みについて考える。なぜ、痛みが発生したのかそれは明白である。
「魔力を変化したから?」
いや、それなら魔法士は全員この痛みが発生するはずだ。
「なら、適正じゃないやつが魔力を変化させたから?」
それじゃあ、結局適正じゃない属性は使えないということになる。
「だけど、俺の勘がこれだって・・・」
俺はもう一度魔力の変化を試した。
「・・・・・・なるほど」
今度は痛みを覚悟していたおかげで声は出なかった。
そして、分かったことがある。それは魔力の変化が原因で痛みが発生しているのではないということだ。この痛みは変化した魔力がちゃんと体を巡らなかったために起こった痛みだ。
簡単に言うと通常の魔力は管の中をスムーズに通るが変化した魔力は所々で詰まりきれいに通らないということだ。
適正がある魔法士はこの変化した魔力がスムーズに通るため魔法を使用できるのだろう。適性がない魔法士の場合は魔力は変化するが無意識化で変化した魔力を流さないようにしているので魔法が使用できないのだろう。俺の場合は意識してやっているので痛みが発生したということだ。
「だったら、変化した魔力がスムーズに通るようになるまで魔力を流し続ければ・・・」
でも、それはこの痛みがずっと続くということで・・・
「・・・なめるなよ」
それがどうした。魔法が使えないことに比べたらこのくらい耐えられる。そして、俺は再び魔力を変換させる。
「ぐっ・・・」
大丈夫、いける。いける。いける。
先ほどまで一瞬しかやっていなかったので分からなかったが、この痛みは体の血管すべてに針をいくつも刺したような痛み、そして血管にマグマでも通っているかのように痛いし熱い。
ガタッゴトッ!
その痛みのせいで座っていた状態から床に倒れてしまった。
「っは、はぁ、はぁ」
痛みで声が出そうになる。痛みで意識が飛びそうになる。痛みで頭がおかしくなりそうになる。
だが、集中力は切らさない。切らしてしまったら魔力の変換ができなくなる。そうすれば、魔法が使えないままである。
「ラク様、大きな音がしましたがどうか・・・ラク様!」
どうやら先ほどの倒れた音でルナリアが部屋に来てしまったようだ。俺が倒れているのを見たルナリアはこちらに駆け寄ってきた。
「だ・・・いじょう・・・ぶだ」
痛みのせいで途切れ途切れになる。
「ですが顔が苦痛で歪んでいます。医務室に・・・」
「今・・・だいじな・・・ことをし・・・てるんだ。邪魔・・・するな」
俺が助けを強く否定するとルナリアは悲しそうな顔をした。ルナリアを悲しませることはしたくないがこれは俺にとってとても大切で重要なことなので何もさせない。
俺の意思が通じたのかルナリアは悲しそうな顔をしたまま俺の傍へ腰を下ろし俺の頭を膝に置いた。いわゆる膝枕である。
「これくらいはよろしいかと・・・」
「ああ・・・」
こんな状況ではなかったらルナリアの膝を堪能できたのだが今はその余裕がない。
そして、俺はルナリアに膝枕されたまま魔力の変換を行った。